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参 寿限無 他

今日もお祖父ちゃんとお祖母ちゃんとで美味しい羊羹を食べていたら店子の熊さんがやって来た


「大家さん 子供が生まれやした」

「そりゃあ よかったねエ おめでとうございます!」

「子供に 縁起がいい名前を付けてやりてえんですけど どんな言葉がありますかねえ?」

「うーん そうだねえ 例えば 寿限無 目出たい事が無限にある という意味の言葉がある それから五劫の擦り 切れ というのも終わりがないという意味だ」

「大家さん 物知りですねエ 他には何がありやすか?」


私はおばあちゃんとその話を一緒に聞いていたけれど おじいちゃんって本当に物知りだと思う もしかしたら 手習いの先生よりも偉いかもしれないと思ってニコニコしてしまう


「大家さん 覚えきれねえから紙に書いてください」

「しょうがないねえ どれ」


と おじいちゃんが書き出したのを 読んでみる


「じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょ すいぎょうまつ うんらいまつ ふうらいまつ くうねるところ すむところ やぶらこうじの ぶらこうじ ぱいぽ ぱいぽ ぱいぽのしゅーりんがん しゅーりんがんのぐうりんだい ぐうりんだいのぽんぽこぴい ぽんぽこぴいのぽんぽこな ちょうきゅうめい ちょうすけ」

 

 長い 長い 長いよ!!! 長すぎるよ!!!


「ねえ くまさんこんなに長いの 覚えられる?」

「あ!」

「私 こんなに長い名前 自分の名前でも覚えられない」

「い?」

「寺子屋で自分の名前書くときに大変そうだし」

「うーん」

「長すぎるから 私 名前を呼んであげられないかもしれない」

「ええ?」

「もう 読んだだけで喉渇いちゃったわ」


「おーい お茶 のお代わりをおマツにだしてやっておくれ」


最後はおじいちゃんがおばあちゃんに言ってくれた


「私は マツって名前 短いけど 気に入っているよ」

熊さんはお祖父ちゃんが書いてくれた紙をじーっと見ながらお茶を飲んでいたけれど 


「大家さん お手数おかけしましたけど 俺とカカアで呼びやすい名前つけやす」


と言って せっかくおじいちゃんが書いた紙を置いて帰って行った

手習い所へ持って行ったら 誰かが 呪文のようだと面白がり しまいには皆で

「じゅげむ じゅげむ ごこうの擦り切れ かいじゃりすいぎょの…」

とお経の様に唱えだして とても面白かった

でも 名前には向かないと思うわ




季節が冬に向かいだした。


 ここよりもずっと寒い所にいた私だけれど 今の両親はそんなことは知らないし、ここでは生まれてからずっと病弱だったから 両親はとても心配している。


今日も 歩きにくいくらいに着物を着せられてやっとおじいちゃんの家に行くことを許された 


おじいちゃんの家に着く前に 与太さんに会った ニコニコしている与太さんが 内緒だよ と言って 夜泣きそばを1文安く食べる方法を教えてくれた


「それでね おマツちゃん 勘定の時にさ 今なんどきだいってアタイが蕎麦屋に聞くだろ そしたら 蕎麦屋が 九つで って言うから とお十一(十一)って数えるんだよ そしたら一文出さないでいいんだ すごいだろ?」


「与太さん 今から行ったら 早すぎわよ 今なんどきだい 六つで って言われて 七つ八つって多く払いう事になっちゃう。 それより 一緒におじいちゃんの所でお茶でも飲まない?」


一文安く食べる方法を私に教えてくれるような与太さんは 優しい人なんだけど

子供の私から見ても 頼りなくて心配になる 



おじいちゃんの所で与太さんとお茶を飲んでいたら 八五郎さんが駆け込んできた


「大家さん 大変だ 熊の野郎知りませんか?」

「熊さんかい 熊さんならーー」

「こんにちわー 大家さん あ おマツちゃんも!」

「おい 熊公 お前こんな所でのんびりしている場合じゃないぞ」

「え?」

「お前 今 妙臨寺の境内で行き倒れになって死んでたぞ!」

「え? おれ 妙臨時に---?」


「熊さんが死んでる?!」


私は大声をあげて 熊さんを見るけれど どう見ても熊さんは生きている


「熊さん 足みせて?」

「ほい 俺 足あるよな? 死んでないよな?」


「まったく 八五郎も 熊さんも落ち着いて 今 お茶をいれるから 婆さん お茶を入れておくれ」


八五郎さんが駆け込んできた時はびっくりしたけれど 流石 大家さんをやっているおじいちゃんは動じない


私も 最後に残っていたお饅頭を二つに割って 熊さんと八五郎さんに渡す


「死んでる人が 昼間からここでお茶飲んでるわけないだろ そんなだから 

うちは粗忽長屋なんていわれるんだよ 落ち着いとくれ 」

「すいません 大家さん」


お饅頭を食べて おばあちゃんが入れてくれたお茶を飲んだ八五郎さんはおじいちゃんに叱られて

頭をかきかき 帰って行った。


おじいちゃんの長屋 

面白い人が多いとは思っていたけれど粗忽長屋って言われているんだね


ちょっと納得してしまった。



明日の投稿で完結です

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