表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/68

リンスインシャンプーと護衛


 リィーサが泊まった次の日の朝。


「ふんふんふーーん♪ んーよし! うまい!」


 俺は、朝食を作っていた。いつもは一人前しか作らないが、今日は二人分だ。ちょっと、楽しい。


「おはよう・・・・ござい・・ます」


 上機嫌で料理をしていたら、寝ぼけた顔でリィーサが起きてきた。


「おはよう、リィーサ。良く眠れた?」


「はい・・・・ベットが・・・・フカフカで・・グッスリ眠れました」


「その割に眠そうだな? 顔でも洗ってきたら?」


「はぃ・・・・」


 顔は眠そう、髪は寝癖が。これ、絶対後で恥ずかしくて顔も見れないとかになる奴なんじゃ・・・・。


『ドタドタドタ・・ガタッ』


「す、すいません! えっと、あの、手伝います!」


「目がちゃんと覚めたな。もう直ぐ朝食は出来るから、座ってていいぞ」


「あうーー」


 リィーサは席に着き、顔を真っ赤にして俯いた。


「はいどうぞ」


「わぁーーー!」


 今日の朝食は、フレンチトーストとコーンスープ。うん、うまそうだ。


「では、いただきます。さて、まずはフレンチトーストから・・・・どうかした? リィーサ」


「いえ、いただきますとは?」


 そうか、いただきますは日本式だから、気になったのか。えーと、何ていえば・・・・。


「えっと、俺の出身地では、食事の前に手を合わせてそう言うんだ。お祈りみたいなものだよ」


「そうなんですね。うちの家でも、食事前にお祈りをしますが・・・・エルさんは、この辺りの出身では無いんですね」


「まあね。とても遠くから来たから」


「へぇーー」


「あの、リィーサの家のお祈りでやり直そうか?」


「いえ、大丈夫です。ここはエルさんの家なんですから、エルさんに合わせます。えっと、こうですか?」


 そう言うと、リィーサは手を合わせ「いただきます」と言って、食事を始めた。


「んーー! 美味しい!」


「そりゃあ良かった。所で・・・・リィーサは何時、街を立つ予定何だ?」


「えっ? 私、帰りませんよ?」


「えっ?」

 

 リィーサの帰らない発言に、スプーンを落としてしまった。


「えっ? リィーサ、帰らないってどう言う・・・・」


「あの・・・・勘違いして押し掛けた挙句、泊まらせてもらって・・・・その、だから恩返しさせて下さい!」


「えぇーー!」


 そうきたか。何でそうなる、血が成せる技なのか? あの爺さんあってこの子ありか。気持ちは嬉しいが、さすがになぁー。ちゃんと断ろう。


「えっと、リィーサ」


「はい!」


「さすがにそれはちょっと」


「あの、私じゃ役にたたないですか?」


「いや、そうじゃなくてさ。そもそも、リィーサは家を飛び出してきたんだろ? それに、若い娘が男と一つ屋根下ってのは・・・・」


「エルさんて、私と年変わらないと思うのですが・・・・何か年寄りくさいですね」


「うっ、そうかな?」


「はい」


 そりゃあ、中身は27才だからな。15才のリィーサからしたら、オッサンではあるな。言葉のいい回しを気をつけ・・・・って! そんな話じゃ無いだろう!


「あのなリィーサ。やっぱりその・・・ダメだと思う訳で・・・・」


「ダメですか?」


「気持ちは嬉しいけど。家をら飛び出して来てる訳だし」


「なら、両親の許可があればいいんですね!」


「いや、あの、えーと」


「なら、今日一旦戻って、許可を貰ってきます!」


 あぁーー。これ、もうダメな奴な気がする。正直、これ以上強い断り方だと。間違いなく、リィーサを傷つけちゃう気がするし。


 ・・・・諦めるか。そもそも、両親から許可が出るとは限らないし。


「分かった。そうしなさい。あっ、帰る時は冒険者に護衛を頼むから」


「い、いいです! 来る時は大丈夫でしたから」


「来る時大丈夫でも、帰る時は分からんだろう? 何かあったら、どうするんだ?」


「ですが・・・・」


「そうしなさい! お金はだすから」


「は、はい。すいません。また、迷惑かけてしまって」


「はあ、迷惑だなんて思ってないよ。さあ、ご飯を食べよう」


「はい」


 取り敢えずの話は終わり。さっさと朝食を終わらせる。台所に、皿などを片付けていると。『ドンドン』とドアを叩く音が。


「店の方か?」


「もしかして、お客さんでしょうか?」


「おかしいな? うちは、朝の二つ目の鐘で開店だって事は、お客は知ってる筈だしな。一体誰だ?」


 まあ、見に行って確かめる以外に無いけど。


『ドンドン』


「はいはい、今行きますよー」


 ドアの小窓のカーテンを開け、誰かを確認すると。それは・・・・マーサさんだった。


「って、マーサさんかい」


「私で悪かったねぇー」


「どうしたんですか? こんな朝早くに」


「そりゃあねぇ・・・・」


 チラッと、俺の後ろにいたリィーサを、マーサさんはニヤニヤしながら見ていた。


「一体、何を期待してるんですか。はあーー」

 

 マーサさんに呆れて、深い溜め息が出てしまう。


「なーんだ、何も無かったのかい? つまらない」


「「つまらなくないです!!」」


「息はピッタリじゃないか」


「「・・・・はあーー」」


 リィーサと二人して溜め息が・・。この人はほんと・・・・おばさんてどうしてこう・・・・「おや? 珍しいな。もう開店しているのか?」


 マーサさんの後ろから、突然声が。この声は・・・・。


「ナヴィアナさん?」


「うぬ」


「ナヴィアナさんこそ、こんな朝早くにどうしたんですか?」


「実はな・・・・友人に会うので、何かいい土産をと思ってな。店主なら、相談に乗ってもらえる時思って・・・・」


「成る程。でも、こんな朝早くに来なくても」


「友人の住む街の近くに、依頼で行くのだ。ついでに会いに行こうと思ったんだが・・・・迷惑だったなら詫びる」


「いえ、迷惑だ何でそんな事無いですよ。兎に角、店内にどうぞ」


「うむ」


「あらあら、こんな美人と知り合いかい。エル君もすみにおけないねぇー」


 マーサさんが何か言ってるが、無視する。それにつっこめば、また面倒になるからだ。


「えっと、いっらしゃいませ」


「うむ? 誰だ?」


「リィーサと言います」


「この店の、前の持ち主のお孫さんです」


「ほう・・・・ナヴィアナだ。よろしく」


「よろしくお願いします」


「それで・・・・どんな物がいいですか? あっ、まずご友人がどんな人かお聞きしても?」


「そうだな・・・・性別は女性、身長170セルチ「地球でのセンチ]体重53キリ[地球でのキロ]スリーサイズは・・・「ちょっとナヴィアナさん! それ個人情報ですよ」

 

「ん? 店主が聞くから」


「いや、体型とかそう言うのじゃなくて・・・・えっと、得意な事とか、好きな物とか」


「うむ、成る程。では、彼女は魔法使いだ。得意な魔法は風と土魔法、杖術も嗜んでいる。後・・・・」


 ナヴィアナさんが語りだしたのは、友人の能力についてだった?聞きたいのはそう言うのじゃ・・。


「後・・・・後そうだな。私はそこまででは無いが、美容に気にかけているな」


「美容ですか?」


「うむ」


「だったら・・・・これがいいかな?」


「これは?」


「リンスインシャンプーです」


「何だそれは?」


「髪を洗う物です」


「ほう、そんな物が」


「俺も使ってますよ。あっ・・・・リィーサ、ちょっと」


「はい?」


「昨日、使って見たでしょ?」


「は、はい」


 昨夜、リィーサがお風呂を使用するさいに、シャンプーについて教えた。使う前は、少しごわっとしていた髪が。今ではサラサラになり、艶がでていた。リィーサ自身、かなり驚き喜んでいた。やっぱり。女の子だなと思った出来事だった。


「どうだったか説明してあげて。使用した、女性の声の方が分かりやすいだろうし」


「は、はい! 頑張りましゅ」


「・・・・・・・・うん。頑張って」


「あうーー」


 リィーサは、身振り手振りでリンスインシャンプーの良さを語りだした。ナヴィアナさんは「ほう」とか「成る程」しか言わない。その横で聞いていた、マーサさんの方がリアクションが良かった。


「へぇーーー、こんないい物があったなんて! そう言えば、エル君の髪は綺麗だなぁーって、ずっと思ってたのよ」


「ふむ、これなら友人も喜ぶだろう。幾らだ?」


「あっ、お金はいいです。そのかわりにお願いが」


「何だ?」


「実は・・・・リィーサを隣り街まで、送ってもらいたいのですが?」


「えっ、エルさん?」


「何だそんな事か。隣り街ならちょうど通る、問題無い」


「良かった。リィーサ、ナヴィアナさんは実力のある冒険者だから、送ってもらいなさい」


「は、はい。・・・・あの」


「どうかした、リィーサ?」


「両親を説得して、必ず戻って来ます。だからここで働かせて下さい!」


「あらあら、エル君は本当に・・・・」


「それはいいからマーサさん」


 リィーサの目をジッと見つめる。その目は、本気そのものだった。


「はあーー」


 まあ最近、忙しくなって来たから。人を雇おうかなって思ってはいたしな。


「うん、分かった。いいよ。でも、ちゃんとご両親に了解を得る事、いいね」


「はい!」


「それじゃあ、ナヴィアナさん。頼んでも宜しいですか?」


「あぁ、勿論だ。必ず送り届ける。何だったら、帰る時にもう一度寄ろう。そうすれは、こちらに来る時も安心だろ?」


「いいんですか?」


「あぁ、構わない。店主には世話になっているからな」


「ありがとうございます。それじゃあお願いします」


「えっと、ナヴィアナさん。よろしくお願いします」


「任せろ」


 こうして、リィーサはナヴィアナさんに護衛され、隣り街に帰った。数日後、両親と祖父キサロさんの許しを得て、この店で働く事となる。ただ、問題がある。それは・・・・。


「エル君は、どっちが本命なんだい?」


 マーサさんがうるさい事・・・・。  


「マーサさん。仕事の邪魔だから、いい加減帰って下さいよ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ