世界樹の種 その四 世界樹の杖編
「あのーー、えーーーと、そのですね‥‥‥‥」
みんなの視線が集まる中、なんとか説明せねばと頑張るが。
状況は芳しく無い。絶望的と言っても過言ではない。みんなから集まる視線に、たじたじになりなるが。なんとか、なんとか説明せねばと振り絞って出た言葉は‥‥‥‥。
「えーと、なんか杖がおかしな事になりました」だった。
それを聞いたみんなは、手に持つ杖と俺とを交互に、何度も目をやり。そして‥‥‥‥「一体何が?」と声を合わせた。
この状況、どうしたらいいのだろうか?
ララウ「ふむ、ふむふむ」
おい、ララウ。何がふむふむだ。
トコトコと俺の側まで駆けてきたラウラが、合体した世界樹の杖を熱心に見て、ふむふむと声をもらしていた。
ララウ「ほう、これは凄いな。世界樹の力を感じる。エルよ、お主は一体、何をしたのだ? 何故、ただの棒切れがこんな風に‥‥」
おい、こら! ララウ! 余計な事を言うんじゃ‥‥‥‥。
はっ! ま、まずい! みんな目が、ランランと輝いている!
特にナヴィアナさん。さすがエルだ! と目が言っている!
やめて! そんな目で俺をみんといてぇーーー!!
オリガ「えーーと、エルさん? 兎に角、何が起きたのか教えてもらえますか?」
「えーーと。その、なんと言えばいいのか。‥‥‥簡単に説明しますと、俺が作った杖と世界樹の杖が‥‥‥」
ダークエルフ一同「「「「「杖が?」」」」
「‥‥‥合体しまいた」
ダークエルフ一同「「「「はい?」」」」
「いや、ですから。合体を‥‥‥」
ナヴィアナ「いやいや‥‥‥。エルよ、それは聞いた。しかし、どういう‥‥‥事?」
ナターリア「合体? それって、どういう事なのよ? と言うかあなた何したの!」
オルターニャ「えぇーと? 合体? 合体て何? あの、エ、エルちゃん? えっ?」
トトリ「貴様!! ダークエルフの宝になんて事を?!
覚悟し‥ぐほっ!」
ナヴィアナ「うるさいトトリ!!」
飛びかかってきたトトリさんの脇腹を、ナヴィアナさんの回し蹴りで、蹴り飛ばした。因みに、蹴られた際に『メキッ』といやな音が聞こえた。取り敢えず、悶絶して動けなくなっていたトトリさんに、そっと回復魔法をかけておいた。
大丈夫ですかトトリさん?
そんな中、突然ナターシャさんが「ふむ、成る程」と意味深に呟いた。
オルターニャ「ナターシャ?! 何か分かったのですか?!」
ナターリア「ナターシャ姉様は、何が分かったのですか?!」
ナターシャ「ふふふ‥‥‥‥‥‥うむ。まったく分からないと言う事が分かった!!」
オルターニャ「‥‥‥‥‥‥ナターシャ」
ナターリア「‥‥‥姉様に期待したわたくしが馬鹿でした」
ナターシャ「むっ」
オリガ「そんな事より!! エルさん、もっと詳しく説明をお願いします」
混乱する一同に、俺は出来る限り懇切丁寧に説明した。とは言っても、俺にもララウにすら分からない事も多く。かなり難航した。
オリガ「な、成る程? 何が起きたのかは、だいたい分かりました。それにしても、一体何が?」
「さあ、分かりません。ララウはどうだ?」
ララウ「あんな摩訶不思議な光景は、我とて始めてじゃ。我より年配の爺様、婆様方なら分かるかもさそれんが‥‥‥」
それって‥‥‥「ララウの言う爺様婆様って‥‥‥」
ララウ「我と同じく古竜に決まっておる。長生きじゃから、物知り
なのだ。ただ‥‥‥‥‥‥」
「ただ?」
ララウ「ボケもきとるし、長生きなぶん昔過ぎる事は‥‥‥大抵、忘れておる」
「あーー、まあ、そうだろうな。でも、何か分かるかも」
ララウ「うーーーん。分かるかもしれんが、聞きに行きとうない」
「なんで?」と俺が聞くと。ララウは「うーーん」と唸り、少し間を開けて答えた。
ララウ「話しが長いからじゃ」
‥‥‥それだけ? えっ、理由それだけ? 確かに年寄りの話しは長い‥‥‥事が多いけど。でも‥‥‥。
「まあ‥‥‥そういうもんだろう?」
ララウ「人間の尺度で考えるな。前に話しを聞きにいった時など、本題の話しになるまでの世間話しで、三月程かかった!! もう、ごめん被りたい!!」
世間話しで、三ヶ月‥‥‥。いやいや、古竜の感覚ってどうなってる? 長い生きな分、時間の感覚が遅いのかな?
ララウは二度と行くものかと。顔を顰め、腕をバツの字にして拒否の構えをみせた。前の事が、相当こたえたらしい。
ララウ「そもそも、エルが作った杖と合体したのだし。物作りに関しては、エルが専門家であろう。なんとかせい!」
「なんとかせいと言われてもな。こんな事始めてだし‥‥‥取り敢えず、杖を調べてみるよ」
俺は杖を机に置いて調べ始め‥‥‥‥‥‥。
背後から、たくさんの視線を感じる。ダークエルフのみんなからだ。更には、俺の脇腹の辺りからゴソゴソと。ララウが懐に入ってきて、膝の上にちょこんと座る。
「あの、そんなに見られたらやりにくいです。後、ララウ邪魔」
ララウ「‥‥‥気にするな」
気にするわ!! というか、なんでお前は膝の上に?!
オリガ「えぇ、気にしないで」
オルターニャ「私達の事は気にせずどうぞ」
ナヴィアナ「が、頑張れ! エル!」
ナターリア「ちょっと、もうちょい詰めて下さい。見えません」
ナターシャ「おい、ナターリア押すな」
トトリ「ふん! そんな奴に分かる訳が‥『ボコッ』ガハッ!」
ナヴィアナ「トトリ! お前はいちいちうるさい!!」
「‥‥‥‥‥‥‥あのーー」
一同「ど、どうした?! な、何か分かったのですか?!」
「‥‥‥いえ、そのー。そんなに見られたら、やりにくいです」
頼むから、集中させて! あっ、トトリさんがピクピクと痙攣してるんですが? さしずめ、船に上がった魚みたいなんですが。
‥‥‥‥‥‥あの、大丈夫ですか? 生きてます?
杖の事より、そっちの方が気になるんですが?