世界樹の種その3 世界樹の杖編
「ここ、コレ、どうしたら‥‥‥うわっ!!」
カタカタと動く杖二つを、手に取ろうと手を伸ばした瞬間、今度は空中に浮き上がった。異世界らしい光景だが、俺は驚きのあまり言葉を失ってしまう。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
二つの杖は空中でゆっくりと回転し、光りはどんどん強くなっていた。何がなんだか分からず、ただ呆然とそれを見ているしかなかった。
コレ‥‥‥‥絶対やばいよな? 一体、何がどうなってんだ?
世界樹の杖どうしで、反応してるのか? でも、同じ世界樹の枝で作られた訳でもないし‥‥‥。どうなってんだろ?
「何をやっとるのじゃ?」
「うわっ! って、ララウ。起きたのか」
ララウ「そりゃあ、起きるじゃろ。直ぐ近くで、こんな事態になっとったら‥‥‥」
そう言うと、ララウは空中に浮かぶ杖を見つめる。「どうなっておる? 何をした?」とララウは俺に尋ねるが「まだ、何もしてない」としか言えなかった。事実そうだから、それ以外答えようがない。
ララウ「それにしても、なんと不可思議な光景じゃ。一体、何が起きておるのだ?」
「数千年生きた古竜に分からない事が、俺に分かる訳ないだろ?
‥‥‥‥‥大丈夫‥‥だよな?」
ララウ「分からん。しかし‥‥‥」
「しかし?」
ララウ「この光り、世界樹の木漏れ日のような暖かさを感じる。
‥‥‥‥悪いものでは無いと思う」
ララウは懐かしそうに目を細め、杖から発する光りを浴びていた。世界樹の木漏れ日? この光りから、悪いものは感じないというララウの勘は‥‥‥‥多分、信じていいと思う。俺にも、邪悪な力とか。そうゆうものは感じない。ただ、きっと面倒な事になる、それは確かというのだけは分かる。
『カタカタ‥‥‥‥ガタガタガタガタ!』
「うわっ!」「なんじゃ!」
杖どころか、部屋全体が揺れ始める。地震? いや、杖によるものなのか? 兎に角、光りまで強くなり。木漏れ日どころか、太陽の様に、ドンドン輝きを増していった。あまりの眩しさに、思わず手で目を覆ってしまう程に。
これから一体、何が起きるか! そんな風思っていると。ピタリと揺れが収まり、光りも眩しくはあるが見れる程度にまでなる。
二つの杖は、空中でゆっくりと回転していた。
「‥‥‥‥収まったのか?」
ララウ「‥‥‥‥どうかの? 分からぬ。ぬっ?! エルよ、杖が!!」
「へっ?!」
ララウが思わず叫ぶ。一瞬、目を離した隙に何が? 慌てて杖に視線を向けると、二つの杖が、グニャリと曲がっていた。いや、どちらかと言えば、まるで生きているかの様に、うねる蛇の様に動いていた。
「ななな、何?! なんなの?!」
ララウ「おぉ、なんと?!」
更に、二本の杖は絡み合う蛇のように絡まり。まるで、一本の杖となろうとしてるかの様だった。俺とララウは、その光景に言葉を失い。只々、杖を呆然と見ていた。さすがに、これだけの事になっていれば、ダークエルフのみんなにもバレる訳で‥‥‥‥。
ナヴィアナ「エル! 無事か?! 一体、何が‥‥‥‥は?」
『バキバキッ』と、壁をぶち破って駆けつけたナヴィアナさん。部屋に入って、起きている光景を見て、思わず固まってしまう。
オルターニャ「エルちゃん?! 凄い力を感じたわ! ‥‥‥‥へっ?」
ナターシャ「どうしたオルターニャ! ‥‥‥‥なっ?!」
ナターリア「な、何事ですの?! ‥‥‥‥はい?」
オリガ「え、エルさん?! とても懐かしいような力を感じたのですが?! ‥‥‥‥‥‥‥‥」
トトリ「おい貴様! 一体、何をしでかし‥‥‥‥た? ‥‥‥嘘だろマジか?!」
続々とやって来たダークエルフの面々は、とんでもない光景に言葉を失い、目を点にしていた。こういうのを、鳩が豆鉄砲を食らったみたいな? 的なやつなのだろうか? 皆、只々立ち尽くし、何が起きているのかを必死に考えているが、その答えが出ないようで、二度見三度見しては、何か言おうとするが、言葉も出ないようだ。
俺はそんなみんなと杖を見つつ、この状況をどう説明したもかと必死に考えていたが、特に何も思いつかなった。そんなこんなで、頭を抱えていると。二つの杖が合体し、一つの杖となり。その杖が、俺の手元に落ちてきたで思わず受けとめる。新たな世界樹の杖を手にした俺を、ダークエルフの面々は‥‥‥‥ジーーーーーーーーーーーーーっと、見つめていた。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥どうしよ、この状況」