世界樹の種その2 世界樹の杖編
『チュンチュン‥‥チュンチュンチュン』
朝方近くまで盛り上がった宴により。宴会場は、それはもう大変な状態であった。ダークエルフの多くが、その場にイビキをかいて寝転がり。飲み食いした皿やコップも転がっていた。
そして俺は‥‥‥酔っ払い共に抱きつかれながら眠っていた。
「‥‥‥‥く、苦しい」
ナヴィアナさん、ナターリアさん。さらに、オルターニャさんにナターシャさん。後、オリガさんに何故かトトリさんも‥‥‥。
‥‥‥‥なして、ハーレム状態?
ナヴィアナさんが右腕にしがみつき。左腕にオルターニャさん。
そして、右足にナターリアさん。左足にナターシャさん。それだけではなく、オリガさんに至っては、何故か俺に膝枕をしながら寝ていた。特に問題なのはトトリさんだ。トトリさんが、お、俺の股間を枕にして、俺の足の間で寝ている。というか、何をやってんだあんたは?!
「う、動けない。ど、どうすれば‥‥‥‥」
「ぬ? 起きたのかエル」
「ん? おっ、ララウ?! なんとかしてくれ!!」そう言うと、ララウは俺の状態を一瞥すると。まだ眠いのか、目を擦ってあくびをし。そまま横に‥‥。
「おいこら!! 寝るな!! 寝るんじゃない!! というか、俺の腹の上で寝るな!!!」
ララウ「ぐががががーー」
‥‥‥‥‥‥‥‥。
俺は、どうすればいいんだ?
それから約2時間後に、俺は解放された。
酷い目にあった。いや、男としては眼福かつ、楽園のような出来事かもしれないが‥‥‥‥。正直に言えば天国だった。その後地獄だったけど。みんな寝相が悪く、両手両足を、引きちぎられそうな程に引っ張られて、さすがに痛かった。
「はあーー。酒はダメだな。酒は‥‥‥‥」
朝食を摂りつつ、項垂れる。俺の横では、ララウが朝からドカ食い中だ。
「ガフッ、ガブッ、モグモグモグ‥‥‥‥ゴックン! ん! まあまあだな! おかわり!!」
「まだ食うのかよ」
既に、三杯もおかわりして食っただろ。
「また、飛べなくなっても知らんぞ」
「ふん! この程度なら平気じゃ!」
「はあー。それにしても、あっちは大丈夫だろうか?」
そう言って、俺は端の方へと目をやった。長いテーブルの端で、複数のダークエルフ達が頭を抱えながらテーブルに突っ伏しているからだ。
「「「「「「き、気持ち‥‥‥‥悪い」」」」」」
「「「「「あ、頭‥‥‥‥痛い」」」」」」
二日酔いにより、ダウンした面々だ。そのメンバーには、ナヴィアナさんやナターリアさん。オルターニャさんにナターシャさんといった面々がいる。
まさに死屍累々‥‥‥‥。
トトリ「うぐぁぁぁーーーーーーーー」
ナヴィアナ「と、トトリ。変な声出すな。気分が余計に悪くなる」
ナターリア「あなたもうるさいですわよ。あーーダメですわ」
オルターニャ「いあぁ、さすがに飲み過ぎたわ」
ナターシャ「そう、だな。だ、誰か、水を‥‥」
「「「「「「ぐあぁぁぁぁぁぁ」」」」」」
全員、魂が抜けかけてる。ん、あれ? オリガさんがいない?
どこ行っ‥‥‥‥。
オリガ「ゆ、床が冷たくて気持ちいいわ」
オリガさんは床に寝そべっていた。床に頬ずりしていた姿は、さすがに見てはいけない気がしたので、俺は目を逸らした。
朝食を済ませ、俺はある事に取りかかった。気になる事があったのだ。それは、世界樹の杖についてだ。昔に、おそらく転生者によって作られたかもしれない杖。その杖について、調べて見たかったのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ダークエルフの長老達から、杖を調べる許可を貰って、用意された部屋にて、杖について色々調べてみる。しかし、特にに変わった様子はなかった。力を失い、ただの棒きれと化した杖、それ以上でもそれ以下でもなかった。
「うーーーん、特に変わった感じはないか。何か分かるかもと思ったんだけどなぁ〜」
間違いなく、ただの棒切れだ。使い道は‥‥‥‥まあ、魔法の杖としてではなく。歩く時の補助としての杖かな?
「鑑定しても‥‥‥‥」
-世界樹の杖ー *製作者不明*
世界樹の枝から作られた魔法の杖。ただし、力を失っている為、魔法具としての使い道はない。
「うーーーん、製作者も分からないか」
せめて、作った人の名前だけでもと思っだが、どうやら駄目そうだ。結局、能力も使い道も分からず‥‥‥か。
『バン!!』
「うわっ! なんだ?」
突然、部屋のドアが勢いよく開けられ、思わず声を上げてしまう。
「こんな所におったのか! エル!!」
「なんだ、ララウか。ちゃんとノックしろ」
「古竜である我に、そんなものなど不要! で、何しておるのだ?」
胸を張りつつ、首を傾げるララウ。そんなララウに、ハアーーと長めのため息が出てしまう。しかし、ララウはそんな事に気にする様子もなく、ピョンと跳ねながら俺の背中に乗ってくる。
「おい、邪魔するな」
「なんじゃ、我に隠し事か? あぁん? ん? なーーんじゃ、棒切れを調べおったのか」
俺の手元にある世界樹の杖を見て、ララウは何やらガッカリした。そして、興味を無くしたのかベッドの上に飛び移った。
「そんなも調べた所で、どうしようもないじゃろ?」
ベッドの上でゴロゴロしながら、ララウは言う。まあ、ララウの言う通り、どうしようもない訳だが、何か分かればと思っての調査だ。空振りでも別にいい。‥‥別にいい。別にいいのだが‥‥‥結局、世界樹の苗木と杖の関係性が分からなかったなぁー。
「なあ、ララウ。種から芽を出せないかな?」
「んーー、そんなの知らん。種なら取り敢えず、土に植えてみる他あるまい」
「まあ、そうなんだが‥‥‥」
うーーん、と唸りつつ、アイテムボックスから俺作の世界樹の杖を取り出した。それと、力を失った杖を机の上に並べて見比べる。
俺作の杖と、もう一本の杖はデザインが全く違う。ただ、世界樹独特なのか、変わって木目模様は似ていた。
「なあ、ララウ‥‥‥「くかーーー」いつのまにか寝てやがる」
あれか、古竜ってのは横になれば直ぐ寝てしまうくらいに、寝付きが良いのか? だらしない古竜の姿に、ハァーーーと大きなため息が出てしまう。
『カタカタ』
「ん? なんだ今の?」
『カタカタカタ』
「‥‥‥‥地震? いや、建物全体が揺れてる訳じゃないみたいだな」
『カタカタカタカタ』
「‥‥‥‥‥‥‥まじか」
俺の目の前で、異世界であっても、不可思議な事態が起きていた。なんと、二つの世界樹の杖が、机の上でカタカタと揺れて、ほのかに光りを放っていたのだ。その光景は、まさに異世界、そして魔法と言った光景だった。ただ‥‥‥‥「コレって、まずい状況なのでは?」
カタカタからガタガタと揺れは激しくなり、光りがどんどん強くなる。これはまさに、多分、いや絶対‥‥‥「やばい」