お茶とクッキー
「鍵は閉めたから、後は・・今日の売り上げを帳簿に書いて、明日の在庫を準備と・・・・あの、リィーサ?」
「ひゃ、ひゃい・・・・」
あっ、噛んだ・・・・。
「あのさ・・・・ちょっと落ち着いたら?」
「しゅ、しゅみましぇん・・・・あうーー」
・・・こりゃダメだ。ふむ、お茶でも淹れて、落ち着かせるか。
「リィーサは座ってな。今、お茶淹れるから」
「あの、その、お構いなく」
「そんな状態で、構うなって言う方が無理でしょ。兎に角、座って落ち着け!」
「は、はい」
台所に行き、お湯を沸かす。ヤカンに水を入れ、火魔法で加熱する。薪で沸かすのが面倒なので、いつも魔法で沸かしている。グツグツとお湯が沸いたら、お湯を紅茶の茶葉を入れたティーポットに注ぐ。そして、蓋をして蒸らす。
・・・・・・・・・・・・そろそろかな?
ティーポットを手に取り、ティーカップにお茶を注ぐ。注ぐ時に、茶こしで茶葉をこしてと。
んーー、良い香りだ。砂糖を用意して・・おっと、忘れてた。お菓子は・・・・クッキーで良いかな?
「お待たせ。お茶が入ったよ」
「ひゃい!」
まだ硬いなぁー。飲めば落ち着くかな?
「はい、どうぞ」
リィーサの前に、カップとお茶菓子のクッキーを乗せた皿を、一緒に置く。
「はわあぁぁ、良い香り・・・・えっと、飲んでも?」
「うん・・・・どうぞ。あぁ、砂糖はお好みで入れてね」
「さ、砂糖! おの、お砂糖何て入れて大丈夫ですか? 凄くお高いのに・・・・」
「別に大丈夫だけど?」
「それじゃあ・・・・」
リィーサは砂糖を、恐る恐るティーカップにスプーンで入れる。
スプーンを持つ手は、震えていた。何と言うか、とても大袈裟な気もするが、砂糖が貴重なこの世界では、当たり前の事なのだ。
「ゴクリ・・・・コクコク」
「どう? 紅茶は気に入った?」
「・・・・美味しいです! 香りも良くて! それに砂糖が甘い!」
「あはは、気に入ったのなら良かった。クッキーも食べて見て・・・・」
「はい!」
少し、元気が戻ったな。それに、緊張もほぐれたみたいだし。
「んーーー、美味しい! 甘ーーい!」
クッキーも気に入ってくれたみたいだ。
「もう大丈夫そうだな」
「あっ、その、すいません」
「元気が出たなら結構」
「あの、このお茶も販売してるんですか?」
「ん、あぁ。してるよ、紅茶も砂糖も。ただ、売れ行きは良くないけど」
「そうですよね、お高いですし」
うちは、そこまで高く設定して無いけどなぁー。砂糖より、砂糖を使ったお菓子の方が売れるからなぁー。
「あの」
「うん? どうかした?」
「えっと・・・・」
「ん?」
「お茶のおかわり貰えますか?」
「・・・・ぷっ、ぷははは」
「あうー」
おかわりを求めた事に、思わず笑っでしまった。かなり気に入ったみたいだ。緊張も、だいぶほぐれたみたいで、良かった良かった。
「ははは、いいよ。ちょっと待ってて」
「しゅみましぇん」
恥ずかしそうに俯くリィーサ。俺を、詐欺師扱いした時とは打って変わった姿に、ギャップだろうか? ちょっと可愛いと思ってしまった。
「あっ、そうだった。リィーサ」
「は、はい」
「部屋の事何だけど・・」
「はい」
「二階奥の、左側の部屋を使ってくれ。他は使用してて空いてなくて・・・・」
「は、はい。ありがとうございます」
「後で、ドアに鍵つけるから。使ってないベットが置いてあるけど、シーツやらは変えた方がいいから、それも持って行くよ」
「あの、そこまでしなくても大丈夫ですよ。そのままでも・・・・」
「お客様にそんな扱い出来ないよ。それに、きちんとしないと、キサロさんに悪いからね。恩を感じてるのは、どちらかと言うと、俺の方だからね」
リィーサは、「ありがとうございます」と深く頭を下げた。
「あっ!」
「えっと・・・・どうかしましたか?」
「いやさ、ちゃんと挨拶してなかったなと思って・・・・。俺の名前はエルだ」
「・・・・ふふふ。私、リィーサって言います」
「うん。よろしくリィーサ」
「こちらこそ、エルさん」
取り敢えず、仲良くやれそうだ。