ダークエルフの里 その1
「「「‥‥‥‥‥‥」」」
「なんじゃお主ら、随分と静かだな」
「「「‥‥‥‥‥」」」
現在、上空五百メートルを飛行中。端的に言おう。
めっちゃ怖い!! ジェットコースターどころの怖さではない。
「ララウ、もう少しゆっくり飛んでくれ」
「ぬ? これでも、かなりゆっくり飛んでおるぞ?」
景色が、凄い速さで流れていく。車で高速走るレベルじゃない。
飛行機クラス? ララウが念の為にと、結界を張っている。
結界内なので、これといって問題はない。俺達が乗っているのは、吹きさらしの背中だ。普通なら、風圧で吹っ飛ぶ事になる。
だから、念の為の結界は必要だ。
「ララウ。後、どのくらいで着く?」
「うむ。そろそろ着くぞ。ほれ、あの山を越えた先に‥‥」
「おぉ! ‥‥‥森が広がってるだけだな」
山を越えた先、ダークエルフの里が! と思ったたら。ただ、森が広がっているだけで、特に里らしき物は見えない。
「なんも無い‥‥」
「え、エル。さ、さ里は隠れ里だ。か、簡単に見つかっては、だ、だだダメだからな」
「お二人共、大丈夫ですか?」
「だだだ。大丈夫だ」「だだだ、大丈夫よ」
ナヴィアナさん、ナターリアさん。震えてますよ?
「所で‥‥どの辺に降りれば?」
「む?」
「どうかしたかララウ?」
ララウが突然、進むのを止める。空中でホバーリングして、森を見下ろしてした。
「この下‥‥だな」
「分かるのか?」
「たくさんの気配と魔力を感じる。ここで間違いない」
「そうか。ナヴィアナさん、ナターリアさん。ここであってますか?」
「「‥‥‥ほえっ?」」
二人は、体育座りで静かに座っていた。高い所が駄目なのか、それとも、飛んでいるのが怖いのか。‥‥多分、両方だろうな。
「そやつらは大丈夫なのか?」
「あー、うん。地面におりれば元に戻るだろ。それより、降りられそうな所はあるか?」
「うむ‥‥‥あの辺なら開けておるな。あそこに降りるぞ」
「ララウ、頼む」
ヒュィーーと降下していくララウ。少し降下すると、深い森の一角に、僅かだが草だけが生い茂った場所が見えてくる。
「あそこか。うん? 真ん中に何か‥‥」
「何かの石碑みたいだな。兎に角、あそこに降りる」
『バッサバッサ』と翼を羽ばたき、フワッと地面に着地した。
その瞬間に、ナヴィアナさんとナターリアさんの二人は、我先にと地面に降りた。
「懐かしの大地! 私はもう、決してお前と離れない!」
「生きてる。生きてますわ! うっ、うわーーーん!
おぉーーーかぁーーさまぁぁーーーー!!!」
よっぽど怖かったようだ。地面にペタンとへたり込み、泣くナターリアさん。ナヴィアナさんにいたっては、地面に頬ずりしている。
「よっと‥‥‥ここがダークエルフの里?」
「ぬう‥‥‥『ボン』ふう、着いた着いた。ふむ、久々に元の姿に戻ったからか、少し疲れた」
「ただの運動不足だろ。ほら、とっとと服着ろ」
「むっ、運動はしている。エルが作った運動器具で!」と言いながら、ララウは服を受け取り、服を着始める。
「人の姿で運動しても、竜の姿だと、使う筋肉が違うからじゃないか? つまり、元の姿の竜だと運動不足なんだよ」
「‥‥‥な、なんだってぇー」
ララウはショックを受けた。なんのショックかは知らんが。
と言うか、どうでもいい。
「さて‥‥‥ここ、本当にダークエルフの‥おわっ!」
『ヒュン』と何かが飛んで来た。避けたので、まあ大丈夫だったが。それにしても、死角から飛んで来たぞこの矢。地面には、俺を狙って放たれた矢が刺さっていた。
エルフと言えば弓矢だよな。にしても、何で俺は射られた?
飛び道具、武器の攻撃を感知するスキルが無かったら。普通に当たってたぞアレ。俺達、本当に招待されたんだよな?
「待って! 私達は招待されて来た! 攻撃を止めろ!」
ナヴィアナさんは、飛んで来た矢を見て。顔色を変え、止めに入った。側でへたっていたナターリアさんも。
「どう言うつもり! 私達は、客人を連れて来たのよ!」とお怒りの様子。
因みにララウは‥‥「エル、お主よくあの死角から来た矢を避けたな」と笑っていた。笑い事じゃないっての!
「まさか、トトリの矢を躱すとは‥‥」そう言いながら、森の影から人影が現れる。ダークエルフだ。それもたくさん。
数十人のダークエルフが、森から一斉に出て来た。
誰も彼も、美男美女ばかりで、何とも見応えがある。
「どう言うつもりだ! 客人に向かって矢を放つなんて!」
ナヴィアナさんが、ダークエルフの一人に食ってかかる。
そのダークエルフは‥‥うん? 女性? いや男性?
女性か? でも胸は平たいし‥‥男性‥‥いやいや。
銀髪のショートヘアをした、超美男子の‥‥いや、ボーイッシュな女性? ‥‥分からん。
「トトリ! どう言うつもりですの!」
ナターリアさんも、トトリ? と言う人に詰め寄る。トトリと呼ばれるダークエルフは「ふん」と顔を晒して、何やら聞く耳を持たない様子。他のダークエルフ達も、特に咎める様子もない。
先程の攻撃は、ダークエルフの総意? だったら、俺キレても?
「すまんすまん。少し遊びが過ぎたな。ナヴィアナ、ナターリア、お帰り、よく帰って来た」
「「長老」」
ダークエルフの人集りが割れ。数人の、年老いたダークエルフの爺さん婆さんが現れた。
「良くおいで下さった。古竜殿。そして、其方がエル殿か。
ようこそ、グルド森のダークエルフの里へ」
長老の婆さんは、ニカッと笑った。いや、ようこそなんて言う前に、謝れや! と思ったが、取り敢えず顔には出さず「どうもです」と会釈した。




