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剣 その3


「あのーー、それ非売品なんですけど」


「そこをなんとかならんのか? なんでも屋の店主よ」


「無理なものは無理です」


「むむぅーー!」


 今、問題を抱えています。システィーナの姉、ティファリーゼさんが、店に飾っていた剣に目をつけてしまった。当初、飾るのは辞めた方がいいかな? そう思っていたのだが・・・・少しの間だけと思って飾っていたのだ。


「そこをなんとか!」


「ですから無理ですって! システィーナ、なんとかしてくれよ」


 チラッと横に視線を送ると、ソフトクリームをぺろぺろと食べるシスティーナがいた。


「無理じゃ、姉上は生粋の剣コレクターだからな。いい剣を見つけたら、金にいとめなどつけぬし。なんとしてでも手に入れようとするのじゃ」


「ほほう、つまり高く買ってくれると・・・・エル店長!」


「いや、ダメだからリィーサ」


「何故ダメなのだ?! 金は出すぞ!」


「お金の問題じゃないんです。兎に角・・・・ダメな物はダメです!」


「むう、良いではないか! だったら何故、店に飾っておるのだ!」


「それは・・・・なんとなくと言いますか」


「剣は飾る物では無いだろう!」


 くっ、確かにそうではあるのだが・・・・。「ティファリーゼさんだって、コレクションにして飾るのでしょう?」


「うっ、それは・・・・」


 口籠もるティファリーゼさん。


「どうせ、ティファリーゼさんの部屋は、剣とか盾とか、槍とか鎧とか飾ってあるんでしょ? お母さんからは、もっと女子らしくなさいとか、お父さんからは、育て方を間違えてかとか、言われてるんでしょ?」


「ぐっ、何故それを! 店長よ、一体何処からその情報を!」


「えっ、想像で言ってみたんですが、当たってました?

 兎に角、売れませんから。この剣はダメ!」


 強く断っておく。しかし、ティファリーゼさんも諦めない。


「しかし、私は使いもする! 飾るだけでは無いのだ! ここに、飾っておくより有意義に使うぞ!」


 いや、だったら尚更売れないし。この剣の威力は、確かめた訳ではないが。恐らくダメであろう。これが使用された結果は、間違いなく大問題になる。

 

「ふあーーあ、うるさいぞエル。何の騒ぎだ?」


「ララウ‥‥お前、痩せたからって油断してると。また、太るぞ」


「太るかっ! 今はちゃんと運動しておる! エルの作ったマシンとやらでな! ふん!」


 ララウはダイエットに成功した途端、また自堕落な生活に戻りつつある。しかし、前よりは動いてはいる。俺の作った、運動器具を使って。‥‥ジムとか作ってみようかな? 


「ほう、お主が報告に受けた古竜か」


 ララウを見て、ティファリーゼさんがふむふむと勝手に納得している。あれ? ララウ事って報告したっけ? したのか?

 ‥‥まあいいや。


「ん? 何だお主は? 人族のメスにしては、中々の力を持っているな。しかし、まだまだ、だな」


「ふむ。古竜には、私の力がどの程度が分かるのか?」


「あぁ、分かるの。我には遠く及ばんし、エルにも及ばん。

 身の程をわきまえよ人間」


 何やら、一触即発に。おい、頼むから店で暴れるなよ。


「ちょっと、ララウちゃんダメ」


「むう。しかしリィーサよ。此奴が喧嘩をだな」


「ダメったらダメ!」


「ぬう、仕方ないのぉー。命拾いしたな人間。リィーサに感謝せよ」


「出来れば、古竜と手合わせしたかったが。・・・そうだな、店に迷惑をかける訳にはいかんな。それより、店主の方が妾より上だと?」


 何でそこに引っかかる?! 面倒な事になるじゃん!

 ララウのアホ、余計な事をペラペラと。


「ふん、そんな事も分からぬとは。やはりその程度・・・・」


「むっ」


「なんじゃ」


 睨み合う二人。頼むから、店で暴れるなよ。にしても、ティファリーゼさんて、結構な武闘派? 

 それに・・・・ティファリーゼさんは強いのか? まだ、鑑定スキルで見た事無かったな。ちょっと見てみるか。


「鑑定」ボソ


 ティファリーゼ・フォン・グラトナス 

 職業は・・・・姫騎士? あれ? 姫騎士って職業なの? 

 レベルは・・・・29か。この街の、冒険者の平均より上か。

 ナヴィアナさん達には、さすがに及ばないけど。


「店長! 二人を止めて下さい!」


「んあ?」


「「ぬぬうーー!!」」


 一瞬、目を離した隙に、何で今にもおっぱじまりそうになってるんだ?!


「ハァーーー。いい加減にしろぉぉぉ!!! お店の迷惑だぁーー!!!!」


「「・・・・・・・・すまん」」

 

「ふう、まったく。兎に角、これは売れませんから。非売品です。

 剣を買いたいなら、そこにある売り物から買ってください!」


 俺はビシッと、店内に売り物として置かれた剣を指差した。


「むう。仕方ないか。ここにある剣も悪くはないのだが・・・・。

 やはり、そちらの・・・」


「ダメったらダメ」


「むう」


「おぉ! 姉上が折れた。やるではないか、なんでも屋の店主よ」


「褒められても嬉しくない。ララウも店で喧嘩しないでくれ」


「むっ! 向こうが売ってきたのだぞ! ぬう」


 まだ治らない様子のララウ。なので、スウッと一振りの剣を見せる。


「頼むから、大人しくしろ。じゃないと、コレでララウの尻尾切るからな」


「ふがぁっ!」と、ララウはお尻を両手で押さえた。


「ぬう! 我の尻尾はそうそうに切れんからな!」


「この剣でもか?」


「むっ! その剣は!」


 ララウに、先程までティファリーゼさんが欲しがっていた剣とは別の剣を見せる。ララウは見て直ぐに理解したのか。

 ララウは「何ちゅう物を」と驚いていた。


 コレで驚くのか。この剣。悪くはないが、そこまで良い剣という訳でもないんだがな。剣の力は、中の上くらいだ。コレでララウが驚くとなると、最上級の物は・・・・どうなるんだろう?


 一振りで街が壊滅とか・・・・ないよな? 無い! 絶対無い!

 そう思いたい。


「ぬっ! 店主! その剣は!」


「あっ、やばっ」居る時に出すとか、馬鹿か俺は!


「店主よ! 是非それを妾に!」


「絶対ダメ! ダメったらダメ!」


 閉店間際まで、ティファリーゼさんに粘られた。勿論、剣は売却してない。危険極まりないし、何かあったら責任はとれない。

 

 ・・・・ただなぁ。剣の力がどれほどなのか、一度も試してないんだよなぁ。一度、試した方がいいかな?

 

 次の日の定休日にでも、試してみようかな? そう思っていた矢先の事だった。まさか、剣を試す機会が、そんなに早くやってくるとは、俺は思ってもいなかった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魅力よりもストレスの方が多いキャラが多すぎる… いてよかった。いると違うっていうキャラが1人もいない [一言] 流され系無能主人公と愉快な強請り達
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