ダークエルフからの依頼 その1
「えぇーー!! って事は俺と同じ・・・」
「同じ? 同じとはどう言う意味だエル?」
ナヴィアナさんが首を傾げ「よく分からんぞ」といった顔で見てきた。
「えーと・・・・」どうしよう。言うべきか、言わざるべきか。
正直、悩むな。
「此奴も、世界樹の杖を作った者と同じ、迷い人だ。・・・・ムシャ」
ララウが、バラしてしまう。
「お、おい! ララウ!」
「別にバレたとてよいだろう? それとも何か問題があるのか?」
「いや、まあ。うーーん。特には無い・・・・のか?」
確かに隠す意味はあるのか無いのか。うーーん。とは言え、何故ララウがバラしてんだ。言う時は、自分のタイミングが良かったのに!
「エルは迷い人とやらなのか?」
「えーと、その・・・・そうらしいですナヴィアナさん」
「迷い人ってなんなの? お姉様方は知ってます?」
「いや、初めて聞いた。オルターニャは?」
「私は聞いた事あります。確か・・・・別の世界から迷いこんだ人と聞きましたが。本当に存在してるなんて・・・・」
「うっ」
ダークエルフ四人の視線が、俺一点に注がれる。
ちょっと、そんなに見ないで! 恥ずかしいから!
「あの、ゴホン! えーと、ララウは世界樹の杖の製作者とは知り合いなのか?」
視線にいたたまれず、ララウに話しを振る。
「いや、我は知らん。杖について知ってるだけだ。お主等、何処の森出身と言うたかの?」
「私達は、グルドの森のダークエルフです」
ララウに聞かれて、オルターニャさんが答えた。
グルドの森? へー、そこの森出身なのか。何処なのかは分からんけど。
「うむ。ならやはり。その世界樹の杖は、我の知っている杖だ。
かなり前で、ハッキリとは覚えておらんが。グルドの森に住む、グリーンドラゴンに聞いた事がある。ムシャ」
「「「「「ドラゴンに?」」」」」
「うむ」
ドラゴンが知り合いのドラゴンから聞いた話し・・・・なんかスケールがデカイ。
「グリーンドラゴンて・・・・おい! オルターニャ!」
「えぇ。グルドの森の主で、ダークエルフの守護竜ね」
オルターニャさんとナターシャさんは、何故か二人だけで納得していた。
「姉様! ご存じなのですか? そのグリーンドラゴンを!」
「あぁ。族長から聞いた事がある。森を守る竜が居たと」
「そのような話し、聞いた事がありませんが」
「ナヴィちゃんと、ナタリーちゃんが知らないのも無理ないわ。
知ってるのは、里の上層部と年寄りぐらいよ」
森を守る竜か。グリーンドラゴンて事は・・・・ツリードラゴン系かな?
「ふむ。そのグリーンドラゴンは、ダークエルフに友人がいたらしく。その者から聞いたらしい。さすがにもう、だいぶ前じゃから・・・・内容は殆ど覚えておらん。ムシャムシャ」
うーーん。俺と同じ、迷い人に関しての情報は無しか。
ただ、杖を製作したとなると。俺と同じ生産職かも?
どちらにせよ、かなり昔のようだし。会うのは不可能。
・・・・いや。俺のように、ゲームからここに迷いこんでいたら?
そいつのキャラの種族が、エルフや長命種のキャラなら・・・。
或いは・・・会える可能性もあるのか?
「ムシャ・・・・ムシャムシャ・・・・ムシャ」
兎に角、今後は迷い人に関して、色々情報を集めてみるかな。
なんか、気になる。気にると言えば、もう一つある。さっきから横で、ララウがちょっと気になる。
「ララウ? お前、さっきから何食べてる?」
「ん? 大福と? リィーサは言っていたな。中々美味だぞ!
特に、このイチゴが中に入った物など」
「そうか。美味か・・・・。って! このアホーー!!
それ、店頭に並んでた売り物だろうが!!!」
そう。ララウが、先程からムシャムシャと食べいたのは、最近開発した大福だ。数日前から店頭に並べている。それを・・・・ララウはムシャムシャムシャムシャと食べていた。それも・・・・。
「これ、店に並べていた大福全部じゃ?」
机の上には、既に食われた大福の包み紙が山となっていた。
「うむ。あっ、言っておくがリィーサにはちゃんと許しをもらったからな」
「り、リィーサが?」
「うぬ。食っていいか? と聞いたら。いいよと。だから食べておる」
「・・・・・・・・このおバカーー!!」
「バカとはなんじゃバカとは! バカと先に言った方が、バカなのだ!!」
「リィーサの言ったいいよは、数個ならと言う意味だ!!
全部いいと言う意味じゃなーーーーーい!!」
「ん? そうなのか? しかし、もう食ってしまったからどうしようもない。うむ」
あぁぁぁぁ。やはりコイツは何処かに捨ててこよう。
しかし、飛んで戻られてもなぁ。方向感覚を麻痺させるアイテムを作って、ララウに使うのはどうだろう? いけるか?
いや、やるんだ。このままでは、この惰竜に店の物全て食われてしまう! うん。よし! やってやる!
俺は硬く決意した。惰竜をダンボールに詰めて捨てよう作戦を!
・・・・ちょっと長いか?
「えーと、エル。声が漏れてるぞ」
「えっ?」
「「「「うん」」」」
えっ、声、漏れてた?
「ふん。言っておくがエル。我はもう絶対にここを離れん!
ずーーーーっと! ここに住む! 生きる限り、ここで食って寝て過ごす! 覚悟せよ!」
ララウの宣言を聞き、俺の中で、古竜が惰竜にそして、寄生虫へと降格した日だった。
「こんのぉーー! アホバカ古竜ーーー!!」