ダークエルフと古竜と迷い人 その2
「作ってほしいと言われても? ・・・・作るって何を?」
「オルターニャ姉上。説明もなしにでは、エルも困惑しますよ」
「あら、ごめんなさい」
「そうだな。ナヴィアナが信頼する男だ。話しも問題なかろう」
「それじゃあ・・・・ナタリーちゃんお願いね」
「何で私なんですか?! まあいいですけど。
掻い摘んで話すと・・・・」
・・・・ナターリアさんから簡単に説明してもらった。
「えーと、つまり。ナヴィアナさんや、ナターリアさん、それと二人のお姉さんの故郷の[行方不明」宝が見つかったと。尚且つ、それが競売、オークションにかけられていて、手に入れようと奮闘したがまったく歯が立たなかったと。
「あぁ、まったく腹が立つ」
「まあまあ。落ち着いてナターシャ」
ご立腹のナターシャさんを、オルターニャさんが宥めた。
何かオークションであったのだろうか。
「ナターリア。オークションで何かあったのか?」
ナヴィアナさんが、ご立腹のナターシャさんを見て、思わずナターリアさんに訪ねた。
「はあーー。族長達に頼んで、金銭を多少用意したけど、全然足りなかったのよ」
話しによると、落札額の十分一にも届かなかったらしい。
「そもそも、競売の開始金額も高くなってたのよ! 事前の開始金額の三倍よ三倍! まったくふざけてるわ!」
「その事で、ナターシャ姉上は怒っているのか?」
「いーえ、本当に姉様を怒らせたのはその後よ」
「ん? どう言う事だ?」
「はあー」と息を吐き、ナターリアさんは嫌々な雰囲気で語り始めた。
「オークションが終わった後、落札者の元に交渉に行ったのよ」
********
「ほう、わたちが競り落とした。この杖をゆずってほちいと?」
「はい」
ふくよか・・・・いや、それを通り越した、肥え太った男。
オークションにて、世界樹の杖を落札した商人。その男に杖を譲って貰うべく。交渉のため、商人の部屋へとやって来た。
「貴方の競り落とした物は、我等ダークエルフの宝。なんとか譲ってもらえないだろうか?」
「お願いします。その杖を私達は、何百年と探していたんです。
どうにかできませんでしょうか?」
「ふうーーむ」
オルターニャ姉様と、ナターシャ姉様が交渉して、何とか譲ってもらおう頼み込みました。けど結果は・・・・。
「断る」
商人は髭を触りながら「何でわたちが手に入れて物を」と断わりました。まあ、そうなるのではと思っていましたが。
オルターニャ姉様もナターシャ姉様も諦めません。
「そこを何とか頼む! 金なら何とかしよう!」
「お金は沢山あるかいらない」
「なら! ダークエルフに伝わる別の物との交換ではどうですか?」
オルターニャ姉様の提案に、男は「うーーん」と悩みます。
それにしても、オルターニャ姉様。他の宝と交換って・・・・ちゃんと了承を得て言ってますよね? 勝手にじゃ・・・・あっ!
私が心配そうに、オルターニャ姉様を見つめると。姉様はウインクをして返しました。
姉様・・・・了承を得てませんね。これで上手くいったとしても、絶対怒られるでしょう! 私嫌ですよ、この年で怒られるとか!
そんな心配を他所に、商人の男はオルターニャ姉様の提案を長考した結果。「ふむ。断るのね」と右手をヒョイと動かしながら断わりました。
「何?!」「そんな?!」
「興味深くはあるげども。わたちはこの杖を気に入ってるのね」
「そ、そこを何とかなりませんか!」
オルターニャ姉様が食い下がります。すると商人の男は・・・・。
「ぐふふっ。じゃあ、君達がわたちのお嫁さんになってくれるならいいよ」と不気味な笑みを浮かべ、スケベ心丸出しで言い放ちます。
さすがの私も、それに姉様方も。男の笑みと要求に悪寒が走りました。と言うか、ナターシャ姉様にいたっては、今にもぶった斬ってやろうかと身構えかけていました。
「ちょっ、ナターシャ姉様!」
「ダメよナターシャ!」
「ぐぬ」と声を漏らし、ナターシャ姉様は手を止めます。男の護衛達も、その動きに戦闘態勢に。場が一瞬でピリつきます。
「まあ、今のは冗談とちて・・・・そうだね、わたちが交換してもいいと思う物を持って来たら、考えなくもないかな?」
「と言う訳で、その男が欲しいと思う物を、作ってほしいのよ」
「また、無茶な。と言うか、ナターシャさん。よく我慢しましたね。男の俺でもちょっと引いたし、ぶん殴りたくなりますよ」
「あぁ、まあな」と視線を逸らすナターシャさん。
「いやいや。ナターシャ姉様はその日の夜に、男の泊まってる宿に忍びこんで、杖を盗みだすついでに男を半殺しにするつもりだったから」
「えっ・・・・」
じーーっと視線をナターシャさんに視線をおくると。
ナターシャさんは「してないから問題ない」と答えた。
それにたいして、妹のナターリアさんが「本気の目でした」とバラす。
そこから「本気ならその場でやってる」だの。
「そう言う問題じゃないですよ姉様!」と姉妹喧嘩が始まる。
それを「まあまあ」とオルターニャさんが宥める。
「止めないの?」とナヴィアナさんに視線を送ると。
「何時もの事だ。放っておけ」と目線で返された。
そして、その状況を止めたのはララウだった。
「世界樹の杖のぉ。まだ合ったのだな」
ララウの発言に、しーんと静かに。
「ララウは世界樹の杖を知ってるのか?」
「うむ、知っておる」
「古竜様は、何故世界樹の杖の事をご存じなのです?」
気になったのか、オルターニャさんが真剣な顔でララウに聞いた。
「あれは、かつてこの世界にやって来た。
迷い人によって作られた物だ」