古竜とパイナップル缶
「なんで裸なんだ!」
「むう? そもそも古竜は裸だぞ? 何を言っておる?」
「あ、いや、そうなんだが・・・・兎に角、服だ!」
アイテム倉庫から、ララウが着れる服を探す。のだが・・・・無い。しまった・・・・パメラさんに、ポメラ衣料品店に、服を卸したばかりだった。
「どうしよう。女性向けの服が無い。今から作るか? でもな」
チラッとララウを見る。俺が異世界からやって来た事を、知っているものの。その力を見せるのは・・・・別にいいか?
あっ・・・・素材がたら無い。そりゃそうだよな。服を大量に作ったばかりだし。はあーー、素材から作らな・・・・あっ、錬金釜! 部屋に置いたままだ。錬金釜がないと素材が作れないじゃんか。
「・・・・仕方ない」
アイテム倉庫から、俺のTシャツと短パンを取り出す。
勿論、両方とも新品だ。ちょっと大きいけど、まあいいか。
「ほれ、これ着て!」
「なんだコレは? どう着るのじゃ? と言うか、着ないといけないのか?」
「いいから着る! ほら、手伝ってやるから!」
「むうぅ!」
・・・・手伝って着せた結果。えーーーと、何て言ったらよいのだろうか。ララウには大きかったらしく、Tシャツはブカブカで、
ワンピースのようになっていた。
「うぬぅ。なんか気持ち悪いぞ」
「我慢しろ。その姿でいるならな。ほれ、残りの桃缶だ」
「おぉ・・・・おい、たったコレだけか?」
「もう、これだけしか無いんだよ。五缶で充分だろ?」
「むう、足りぬわ! 確かに縮んだが、コレだけではたらん!
もっと寄越せ!」
・・・・はあーー。何て我儘な古竜なんだ。
「桃缶はもう無いぞ。桃缶は」
「ん? と言う事は、他の物ならあるのか?」
「あぁ。後あるのは・・・・パイナップル缶だな」
「ふむ、それも寄越せ!」
「寄越せって・・・・誇り高き古竜が、たかるなよ」
「むっ、たかってなどおらん! そもそも、エルが食わすと言ったのではないか」
「まあ、そうだが・・・・。しょうがない。食わしてやるから待ってろ。今出すから。それまで桃缶でも・・・・もう食ったのか?」
ララウは「美味であった!」と腹を摩りながら、空になった缶を片手に、草の上に座っていた。
「いやいや。食べるの早すぎ。と言うか、どうやって缶の蓋を開けた?」
「どうって? エルの真似をして、こうやってだが?」
ララウはそう言って、まだ空いてないパイナップル缶を手に取った。そして、缶の蓋を自身の爪で、シュパッと綺麗に切断した。
「どうなってるんだソレ?」
「古竜の爪を舐めるな。我の爪は、なんでも切り裂く」
ララウは「むっふーー」と小さな胸を張った。
「凄いな古竜って」
「当たり前じゃ! さて、パイナップル缶とはどんな・・・・むぉぉ!
なんだ? 黄色い? 円形? ぬっ! 真ん中に穴があいている! なんだコレは!」
「パイナップルだよ。パイナップル缶なんだから」
「パイナップル・・・・では早速!『がぶり』
・・・・・・・・うまーーーーい! ふむ、桃缶とは違って酸味が強いが、それがま美味い! 美味である!」
「ララウは果物好きなんだな」
「まあ、果物は好きだが・・・・。美味いならなんでも好きだ」
「そりゃあ、誰でもそうだろ。って、おい。パイナップルの穴に、指を入れて食べるなよ。お行儀が悪いぞ」
「古竜の我に、人の行儀など関係ない」そう言うと、両手の人差し指に入れたパイナップルを、ガブガブと頬張った。
「美味だ!」
良く食うな本当に。まあ、元の大きさを考えればな。
「ふう、食べた」
「何も、シロップまで飲み干すなよ。体に悪いぞ」
「体に悪い? まさか毒か?!」
「いや、甘い物を摂りすぎるのは良くないって意味だ」
「こんなに美味なのにか?」
「美味い物が、体に良いとは限らないと言う事だ。さて、俺はそろそろ帰るかな」
日も傾き始めたし、帰ろうかな。「それじゃあな、ララウ」
「ぬっ、帰るのか?」
「あぁ。日が落ちると門が閉まるからな。帰らないと」
「そうか・・・」
「それじゃあ、またな。ララウ」
ララウに軽く挨拶して帰ろうとしたその時・・・・。
「ぐわっ・・・・・な、なんだ?」
突然、服を引っ張られた。後ろを振り返ると・・・・。
「むっふー。我を置いていくな! 我も連れて行け!」
「はあー?! 何言ってんだいきなり?!」
「むっふっふっふ。確かあっちに人の巣があったな。行くぞ!」
不敵な笑みを浮かべ、ララウは街の方へと歩き出す。
ちょっと待て、本当に来る気か? ど、ど、どうしよう?!
焦る俺。止めるか? いや、だが・・・・しかし、何しに来る気なんだ?
「はっ! ちょっと待ってララウ!!」
どんどん街の方へと進むララウ。
えーと、どうする? んーー、もう!
「ぬははははっ! 美味な物よ待っておれーーー!!」
それが狙いかい。あっ、こら、先行くなーー!!
門番をどうやって誤魔化そうか?! と言うかバレないよな?
今はただの人の姿だし。
「おーーーい。早くこーーーい!!」
「はあーーー。直ぐ行くから待ってーー!!」
まあ、何とかなるだろ。・・・・多分
「パイナップル缶はもうないのか?」
「さっき、五缶も食っただろ!」
「ぬう・・・・」『ぐるるら』
「あれだけ食ったのに?」
「あれだけしか食っておらん」
「勘弁してくれ」
「街に行けば、さらなる美味があるのだろ? ほら! 行くぞぉーーー!!」
「分かったから走るな!」