表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/68

古竜とパイナップル缶


「なんで裸なんだ!」


「むう? そもそも古竜は裸だぞ? 何を言っておる?」


「あ、いや、そうなんだが・・・・兎に角、服だ!」


 アイテム倉庫から、ララウが着れる服を探す。のだが・・・・無い。しまった・・・・パメラさんに、ポメラ衣料品店に、服を卸したばかりだった。


「どうしよう。女性向けの服が無い。今から作るか? でもな」

 

 チラッとララウを見る。俺が異世界からやって来た事を、知っているものの。その力を見せるのは・・・・別にいいか?


 あっ・・・・素材がたら無い。そりゃそうだよな。服を大量に作ったばかりだし。はあーー、素材から作らな・・・・あっ、錬金釜! 部屋に置いたままだ。錬金釜がないと素材が作れないじゃんか。


「・・・・仕方ない」


 アイテム倉庫から、俺のTシャツと短パンを取り出す。

 勿論、両方とも新品だ。ちょっと大きいけど、まあいいか。


「ほれ、これ着て!」


「なんだコレは? どう着るのじゃ? と言うか、着ないといけないのか?」


「いいから着る! ほら、手伝ってやるから!」


「むうぅ!」


 ・・・・手伝って着せた結果。えーーーと、何て言ったらよいのだろうか。ララウには大きかったらしく、Tシャツはブカブカで、

ワンピースのようになっていた。


「うぬぅ。なんか気持ち悪いぞ」


「我慢しろ。その姿でいるならな。ほれ、残りの桃缶だ」


「おぉ・・・・おい、たったコレだけか?」


「もう、これだけしか無いんだよ。五缶で充分だろ?」


「むう、足りぬわ! 確かに縮んだが、コレだけではたらん!

 もっと寄越せ!」


 ・・・・はあーー。何て我儘な古竜なんだ。


「桃缶はもう無いぞ。桃缶は」


「ん? と言う事は、他の物ならあるのか?」


「あぁ。後あるのは・・・・パイナップル缶だな」


「ふむ、それも寄越せ!」


「寄越せって・・・・誇り高き古竜が、たかるなよ」


「むっ、たかってなどおらん! そもそも、エルが食わすと言ったのではないか」


「まあ、そうだが・・・・。しょうがない。食わしてやるから待ってろ。今出すから。それまで桃缶でも・・・・もう食ったのか?」


 ララウは「美味びみであった!」と腹を摩りながら、空になった缶を片手に、草の上に座っていた。


「いやいや。食べるの早すぎ。と言うか、どうやって缶の蓋を開けた?」


「どうって? エルの真似をして、こうやってだが?」


 ララウはそう言って、まだ空いてないパイナップル缶を手に取った。そして、缶の蓋を自身の爪で、シュパッと綺麗に切断した。


「どうなってるんだソレ?」


「古竜の爪を舐めるな。我の爪は、なんでも切り裂く」

 

 ララウは「むっふーー」と小さな胸を張った。


「凄いな古竜って」


「当たり前じゃ! さて、パイナップル缶とはどんな・・・・むぉぉ!

 なんだ? 黄色い? 円形? ぬっ! 真ん中に穴があいている! なんだコレは!」


「パイナップルだよ。パイナップル缶なんだから」


「パイナップル・・・・では早速!『がぶり』 

 ・・・・・・・・うまーーーーい! ふむ、桃缶とは違って酸味が強いが、それがま美味い! 美味である!」


「ララウは果物好きなんだな」


「まあ、果物は好きだが・・・・。美味いならなんでも好きだ」


「そりゃあ、誰でもそうだろ。って、おい。パイナップルの穴に、指を入れて食べるなよ。お行儀が悪いぞ」


「古竜の我に、人の行儀など関係ない」そう言うと、両手の人差し指に入れたパイナップルを、ガブガブと頬張った。


「美味だ!」


 良く食うな本当に。まあ、元の大きさを考えればな。


「ふう、食べた」


「何も、シロップまで飲み干すなよ。体に悪いぞ」


「体に悪い? まさか毒か?!」


「いや、甘い物を摂りすぎるのは良くないって意味だ」


「こんなに美味なのにか?」


「美味い物が、体に良いとは限らないと言う事だ。さて、俺はそろそろ帰るかな」


 日も傾き始めたし、帰ろうかな。「それじゃあな、ララウ」


「ぬっ、帰るのか?」


「あぁ。日が落ちると門が閉まるからな。帰らないと」


「そうか・・・」


「それじゃあ、またな。ララウ」


 ララウに軽く挨拶して帰ろうとしたその時・・・・。


「ぐわっ・・・・・な、なんだ?」

 突然、服を引っ張られた。後ろを振り返ると・・・・。


「むっふー。我を置いていくな! 我も連れて行け!」


「はあー?! 何言ってんだいきなり?!」


「むっふっふっふ。確かあっちに人の巣があったな。行くぞ!」


 不敵な笑みを浮かべ、ララウは街の方へと歩き出す。

 ちょっと待て、本当に来る気か? ど、ど、どうしよう?!

 焦る俺。止めるか? いや、だが・・・・しかし、何しに来る気なんだ?


「はっ! ちょっと待ってララウ!!」


 どんどん街の方へと進むララウ。

 えーと、どうする? んーー、もう! 


「ぬははははっ! 美味な物よ待っておれーーー!!」


 それが狙いかい。あっ、こら、先行くなーー!!


 門番をどうやって誤魔化そうか?! と言うかバレないよな?

 今はただの人の姿だし。

 

「おーーーい。早くこーーーい!!」


「はあーーー。直ぐ行くから待ってーー!!」


 まあ、何とかなるだろ。・・・・多分


「パイナップル缶はもうないのか?」


「さっき、五缶も食っただろ!」


「ぬう・・・・」『ぐるるら』


「あれだけ食ったのに?」


「あれだけしか食っておらん」


「勘弁してくれ」


「街に行けば、さらなる美味があるのだろ? ほら! 行くぞぉーーー!!」


「分かったから走るな!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ