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古竜と桃缶


 今日は休日。店をお休みにして、のんびりピクニックに来ている。言っておくが一人だ。リィーサは別の用事があるらしく、ナヴィアナさんも仕事らしい。


 日除けのパラソルの下、地面に敷いたシートの上に寝そべり、空を見つめる。


「いい天気だな。・・・・リィーサやナヴィアナさんは来なかったけど、たまには一人でってのも悪くないな」


 草原に吹く風が、とても涼しい。

 あーーなんか眠く・・・・『ブォーーーン!!』


 気持ちい風に、昼寝でもしようかと目を閉じた瞬間。何かが、途轍も勢いで上空を通過した。その何かが通過した事により、パラソルが吹き飛んでしまう程だった。


「な、なんだぁーー!!」


 直ぐに起き上がり、空に目をやると・・・・「あれ? あれってもしかして・・・・古竜? ・・・ん? もしかして、ララウ?」


『ブォンブォン』と上空を飛びまわる古竜は、確かに見た事あるシルエットだった。にしても・・・・何しに? 聞けば分かるかな?


「おーーーーい!! ララウーー!!」


 俺の声が聞こえたのか、ララウはこちらに向かって急降下してきた。


『ドスーーーン!』


「ゴホッゲホッ・・・・もうちょい静かに降りられないのか?」


「うるさい人間。気安く我の名を呼びおってからに」


 そもそも、自己紹介して来たのはお前だろ? と思ったが、言わないでおこう。


「で、何してんるんだ?」


「近くを飛んでいたら、お前の気配を感じたから見に来た」


「・・・・・・・・つまり、特に要はないと?」


「・・・・・・・・まあ、そうだな。何となく来ただけだ」


「ララウは暇なのか?」


「ぐっ、うるさい人間!!」


「いやまあ、人間だが・・・・名前がちゃんとある。エルだ」


「むう。・・・・え、エル」


「おし」


 何やら小っ恥ずかしそうに、俺の名前を呼ぶする古竜に、ちゅっと可愛いと思ってしまった。見た目はめっちゃ、イカツイ上にゴツイけどね。


「それで、エルはここで何をしている?」


「見ての通り、昼寝だが?」


「・・・・お主こそ! エルこそ暇ではないか!」


「今日は休日なんだよ。古竜には分からないだろうが、人ってのは、忙しい日々を送ってるんだぞ」


「人の営みなど知らんし、知りたくも無いわ。ふん!

 ・・・・『ぐぎゅるるるーーーー!!』あっ・・・」


 ララウの腹が鳴る。鳴ると言うより、轟くといった感じだ。

 正直、俺はその音に驚いた。だって、もの凄い音だったし。

 

 ララウに視線を向けると、腹の音が鳴った事がとても恥ずかしかったのか、イカツイ顔をそっと横に晒した。


「・・・・腹減ったのか?」


「・・・・ぐうぬぅ! 別に減っとらんわい!!」

『ぐぎゅーーー!!』


「・・・・・・・・」


「・・・・・・・・」


 ララウは恥ずかしさのあまり、プルプルと小刻みに震え出す。

 

「何か食べるか?」


「だから、減っとらんと言っておろう!!」


 はあーー。素直に減ったと言えばいいのに・・・・。まあ、古竜だからな、誇りや威厳とかってものがあるのだろう。まあ、腹鳴らしてたらそんなの、無いと思うのだけど。

 

 ・・・・仕方ない。「そうだララウ」


「むっ、なんじゃ」


「試食してみないか?」


「試食?」


「あぁ。俺は店をやってるんだ。店ってのはだな・・・・」


「そのくらい知っとる! たくさんの物を売り買いしとる所じゃろ? ・・・・売り買いと言うは良く分からんが・・・」


「古竜は買い物しないからな。分からないのは仕方ないと思うぞ」


「むう」


「兎に角だ。店で今度から、商品として売る予定の物があってな。

試しに食べてみないかなぁーーと思ってな」


「ふむ。・・・・毒でも盛るつもりか?」


「盛るか! そもそも古竜に毒って効くのか?」


「効かぬわ! ・・・・ただ、お主なら。エルならとんでもない物を持っていそうな気がするのじゃが?」


 いやいや。俺はそんな危険人物じゃないぞ?


「古竜を倒せる毒なんて、さすがに・・・・いや待てよ? 

 ない事もないか? あれならもしかして・・・・」


「あ、あるのか? 貴様やはり、毒を盛るつもりか!」


「だからそんな事しないっての! いらないなら別にいいよ。俺が食う」


 ゲーム画面を開き、アイテム倉庫を検索して、とある物を取り出した。それは・・・・缶詰。果物の入った缶詰だ。後忘れずに、缶詰と一緒に缶切りと、食べる為のフォークも取り出しておく。


「何だそれは? 金属の箱? まさか、それを食わす気だったのか? 古竜はそんな物食わんぞ? と言うか、それを何処から出したのだ?」


「まあ、なんだ。こう言う力? スキル? みたいなもんだ。

 後、コレは入れ物だ。中身を食べるんだ。・・・・よし、開いた」


 缶切りを使って缶詰の蓋を開け、フォークで中身の果物を刺して、ララウに見せてやる。因みに中身は桃。


「じゃあ、いただきまーーす」とフォークに刺さった桃缶を頬張る。「うーーん、甘い。美味しい!」そう俺が言うと。ララウはゴクリと唾を飲んだ。と言うか、よだれが垂れてる。


「美味しい! 桃缶最高!」


「ぬぬぬ! おい!」


「ん? どうかしたか? 毒が入ってるから食わないんだろう?」


「むう、ぬっ、ぐぬ。く、食わないとは言ってないぞ」


「でも毒云々言ってたろ? ララウに毒を食わせる訳にはいかないからな。俺が全部食べる。うーーん! 美味しい!」


『ぐごるきゅるるるるーーーー!!』


「うぬーー! 悪かったのだ! 謝るから食わせろ!」


「・・・・しょうがないなぁー。ほら」


 フォークに桃を刺して、ララウに食べさせようとしたら。

「うむ、あーーーーん」とララウの大きな口が開いた。


「・・・・で、デカイな。お、おい、俺まで食うなよ?」


「くうはけないはろ、さっさはとくはせろ」


「あぁ。ほれ」

 

 ララウの口の中に、桃缶の桃を一つぽんと入れてやる。ララウの口はデカイので、ちょっと怖い。何せ、俺を一飲みに出来そうな大きさがある。


 ララウは口に入った桃を「むごむごむご」と味を確かめるように咀嚼すると。「ごっくん」と飲み込んだ。


「・・・・・・・う、うまーーーーい!!!!!!」


 ララウはそれはもう、大きな声で叫んだ。まさに、竜の咆哮と言うものだと思う。あまりの声の大きさに、鼓膜が破けるかと思った。

 

「き、気にいったたなら、よ、良かった」

 あー、耳がキンキンする。なんて大きな声だよ。


「もっと寄越せ!」


「あーー、はいはい。・・・・」


 ララウに桃をもう一つあげようと、フォークに刺した時思った。

 ララウが大きすぎて、物足りないのでは無いかと。人間なら、豆一個を食べてるようなものだ。

 ララウをチラッと見ると「早く寄越せ」と涎をたらしながら訴えてきている。足りなくて、面倒な事になる予感がした。


「ほれ」


「がぷっ」


 桃缶の中身を全て、ララウの口に放り込む。ララウは味わいつつも、うーーんと言った、少し不満気な様子見せる。


 やっぱり足りないよな? 


「おい、もっとだ! もっと食わせろ!」


 うん、そうだよな。そうなるよな。


「無茶言うな。ララウの大きさだと、どんだけいるんだよ。自分の大きさを考えてくれ」


「・・・・うむ、確かに。我なら後、数百、いや、もっと食えるな。

 おっ、そうだ。ならこれでどうだ?」


『ぼわーーーーん!』


 何か思いついたらしいララウが、急に爆発? いや、煙を撒き散らした。


「な、なんだ? おい、ララウ! 大丈夫か?!」


「安心せい、我なら平気だ」


 煙の中から声がする。どうやら無事のようだ。ゆっくりと煙が晴れていく。すると、煙の中から美少女が現れる。 それも裸で!


「これなら量も少なくすむであろう? ふぁっはっはっはっ!」


「ララウなのか?」


「それ以外誰がおると言うのだ?」


 どうやらララウは、古竜とは、人間に変身出来るようである。

 とても、驚きだ。ただ・・・・。


「服を着ろーーー!!」


 誰かに見られて、誤解されたらどうすんだぁーーー!!



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