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『ガチャ、カランカラン』


「店主、いるか?」


「あっ、いらっしゃい。ナヴィアナさん」


 やって来たのは、携帯保存食の火付け役、ナヴィアナさんだった。


「売れ行きは良いらしいな」


「はい。ナヴィアナさんのおかげです」


 ナヴィアナさんは、自身の銀髪の髪に触れ、軽く微笑んだ。その姿に、少しドキッとしてしまう。褐色の肌に、美しいプラチナブロンドの髪。そして、特徴的な長い耳。そう、ナヴィアナさんは、ダークエルフと呼ばれる種族だ。ファンタジー感が半端ない。それに・・・・めっちゃ美人だし。


「それで今日はどんな御用でしょうか? 携帯保存食を買い足しに?」


「いや、まあ、それもあるが・・実はな、コレなんだが・・・・」


「?」


 ナヴィアナさんは、左腰に下げていた剣をとり、カウンターに置いた。


「この剣がどうかしたのですか?」


「あぁ・・・・取り敢えず見てくれ」


 置いた剣を取り、鞘から抜いた。


「・・・・ポッキリ折れてますね」


 剣は真ん中から、それは見事にポッキリと折れていた。硬い魔物でも斬ったのかな?


「そうなんだ。この間の依頼で折れてしまってな」


「・・・・あの、修理なら鍛治屋でお願いします。うちは、物品販売しかしてないので・・・・」


「いや、修理を頼みたいのでは無くてだな。いい剣を置いてないかと思ってな」


「それで、店に来たと・・・・」


「あぁ」


「まあ、武器防具も置いてはいますが・・・・」


 うちの店でも、武器防具は置いている。ただし、品質は下の中くらい。初心者冒険者向けの物だけだ。正直言うと、カオスフロンティアの力、スキルや魔法の力を使えば、聖剣、魔剣の類いなんて、いくらでも作れてしまう。さすがにそれはマズイので、品質高めで作ったとしても、中の下には抑えている。


「店主、どうだろうか?」


「えーと、ナヴィアナさんの折れた剣の代わりになる剣ですか」


「あぁ、何とか頼む」


 どうしよう、コレより良い剣は、あるにはあるが・・・・売っていいものか? 面倒な事になるのでは? たまたま手に入ったとかにすれば・・・・うーむ、嫌な予感しかしないし。


 ここは、下の上くらいの物を見せて、納得してもらおう。


「分かりました。取り敢えず、うちの店に置いてる剣をお見せします。代わりになるかは分かりませんが」


「構わない、頼む」


 奥の武器防具の倉庫から、3本の剣を抱えてカウンターへと急ぐ。選んだ剣は全て、下の上くらい。カオスフロンティアでは、アイテムや武器防具などのランクを、星の数で現していたが。この剣のランクは、1.5〜2くらいだろう。因みに、最上級は星が七つつく。


「お待たせしました。ナヴィアナさんのお眼鏡に叶う物があれば良いんですが・・・・」


「すまんな、無理を言って」


 ナヴィアナさんは、コクリと軽く頭を下げると。カウンターに置かれた剣を手に取った。鞘から抜いた剣を、食い入るように眺めた。


「・・・・・・・・」


「どうでしょうか?」


 最後の剣を見終わると、考え込むようにナヴィアナさんは沈黙した。


「店主・・・・」


「はい・・・・」


「どれも素晴らしい剣だ!」


「えっ?!」


 あれ? 何で? そんなにいい剣では・・・無い筈何だけど?


「店主! これほどの剣を一体どこで!」


「えーと・・・・まあ、ちょっとしたツテと言いますか・・・・」


 何で? ランクはたいした事無いのに? ・・・・まさか、俺の作った剣は、とんでもない物だったのか?


 この時、本人はまだ気づいていなかった。カオスフロンティアで手に入れた、複数の極限に達したスキルの力を・・・・。武器防具類などは特に、「錬金極魔術師]アルケミストマスター。[鍛治極魔導士]ブラックスミスマスターなど、複数の極スキルで制作している為、ランクは低くても、通常より強力な剣となっているのだ。


「それで、店主! 幾らだ!」


「えーと・・・・」ど、どうしよう? 価格の設定はまだしてなかった。この様子だと、本当にこの世界だと良い物だと言う事なのか?

 

 あまり低いと、逆に変だと思われるし・・・・金貨10、いや、20くらいで・・・・大丈夫かな?


「あの、金貨20枚でどうでしょう?」


「店主・・・・」


 ナヴィアナさんは、値段を聞いた途端に肩を震わせ、少し低い声を出した。


 あれ? もしかして怒ってる? 高かったかな?


「あ、あの、20枚でなくて「安い! 安すぎるぞ店主!」


 えっ、そっち?


「商売する気あるのか店主? これなら金貨30・・・・いや、40の価値はあるぞ!」


 えっ、倍も? いやいや、そこまでは無いと思うよ。


「うむ・・・・よし! この剣を貰う!」


 ナヴィアナさんは、3本の中から一本を選んだ。


「代金だ! 受け取れ」


 ドスッと、カウンターにお金の入った袋を置いた。確認すると、金貨40枚が入っていた。


「あの、ナヴィアナさん?」


「ん? どうした? 金貨40枚は入って居たと思うが?」


「いえ、多すぎます。価格は金貨20枚と・・・・」


「店主、下手に安く売るような剣では無いぞ? 兎に角、40枚と言ったら40枚だ」


「・・・・分かりました。その代わり、携帯保存食はサービスさせて下さい」


「うむ、助かる。実はそれで手持ちの全額だったのでな」


 はははははっと、ナヴィアナさんは笑う。俺は今後、武器防具の販売を気をつける事にした。もしかしたら、俺にとってはたいした事無くても、この世界ではとてつも無い物かも知れないからだ。


「ではな、店主」


「はい、またのお越しをお待ちしております」


 お店を出て、ナヴィアナさんを見送った。ナヴィアナさんの後ろ姿は、とても絵になるものだった。


 ナヴィアナ・シュペール 

 職業 森林警備隊[レンジャー]

 レベル37



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