ポテチ
「エル店長、おはようございまーす」
「うん・・・・おはよう」
「ん? 店長・・・・なんかお疲れですね」
「あぁ、うん。冒険疲れかな?」
「あんまり無茶しないで下さいよ」
「そうしたいけど・・・・あの二人が・・・・はあーー」
ナヴィアナさんとナターリアさんが、無茶な依頼を受けさせようとさせてくるからなぁー。はあーー。
「ふう、シャキッとしないと。顔洗ってくる。リィーサは先に朝食食べな。今日は、パメラの所だろ?」
「はい。それじゃあお先に・・・・」
******
リィーサはパメラの所に手伝いに。俺は一人で店番をしていた。
顔を洗ってシャキッとは出来たが、気怠さが抜けない。
「エナジードリンクでも飲むかな? ・・・・ポーションの方が効きそうな気もするな。・・・・混ぜたら効果倍増とかしたりは・・・・ゴクゴク」
エナジードリンクと、異世界の万能薬、ポーションを混ぜて飲んでみた。効きめは・・・・あるような無いような・・・・。
『カランカラン』
「いらっしゃいま・・・・」
突然、お客が来た。対応しなきゃと、ドアの方を見て挨拶をしすると。そこには・・・・とある人物が!
「やって来たのじゃ! 店主よ!」
「システィーナ?」
なっ・・・・あれ? 確か・・・・自宅謹慎中の筈じゃ? まさか・・。
「抜け出したのか?」
「ふっふっふっ。妾にかかれば、このくらいたいした事ではないのじゃ!」
腰に両手を置いて、えっへんと胸を張るシスティーナなお嬢様。
「お嬢様、さすがにまずいですよ」
「お嬢様、いくらなんでも叱られます」
「二人も一緒か」
「当たり前じゃ、二人は妾の側仕えなのじゃから」
「二人も大変だな」
「「・・・・・・・・はい」」
「にゃんじゃとーー?!」
俺の大変だなに、一瞬、答えるのを控えたが、結局は深く頷き返事を返した。
「むむむ! なんの文句があるのじゃーー!!」
「いえ、文句など・・・・」
「そ、そうです。屋敷を抜け出すのに手を貸して怒られたり。お嬢様の我儘に付き合って、大変な目に遭って嫌だなぁーとか、思ってませんよ! あっ!」
「そ、そんな事思っていたか・・・・」
「「いえ、お、お嬢様!」」
「まあ、そりゃそうだろうな」
「ふぐっ、ううう、うぎゃーーーーーーん!!!」
「「お嬢様ーー!!」」
システィーナは泣きだした。それもギャン泣き。
「うぎゃーーーーーーーーん!!」
こんな事言うのはなんだが、うるさい!
「おい、側仕えの二人! なんとかしろ!」
耳を押さえながら、システィーナの側仕えの二人に近づいて、なんとかしろと促す。
「む、無理です。このような状態のお嬢様は、そう簡単には・・・」
「は、はい。お嬢様が落ち着くまで無理です」
「店で泣かれると迷惑なんだが?」
「「も、申し訳ありません」」
「うぎゃーーーーーーーん!!」
「はあー。どうしたものか・・・・」
「「放っておくしかありません」」
放っておけって・・・・目の前でこんな泣かれたら。なんか胸が痛むのだが・・・・。うむ、仕方ない。アレで行くか。アレで。
「システィーナお嬢様、お菓子食べますか? ジュースもありますよー」
安易な考えだと思う。泣く子にお菓子とジュースとか。でも、コレくらいしか思いつかなかった。
「うぎゃーーーん、うっぐ、ひっぐ・・・・食べる」
「「お嬢様!!」」
「あっ、上手くいった」
******
「なんじゃ?! なんじゃコレはぁーー?!」
「「美味しいです」」
「ポテチって言うんだ」
振る舞ったのはポテトチップス。駄菓子でもと思ったが、ちょうど試作で作った、ポテチの評価が気になり。振る舞ってみた。
「問題無さそうだな」
「この黒い奴も、中々・・・・ゲホッゲホッ! シュワシュワが襲って来たじゃ!」
「炭酸な。コーラは前から売ってたんだが・・・・知らないのか?」
「コーラ! コレが噂になっていた奴か! 飲んでみたいと思っていたのじゃ!」
「「甘い、そしてシュワシュワ!」」
二人も気に入った様子。
俺としては、ポテチにはコーラ、これは譲れん。二つの組み合わせこそ、至高!
「ぷはーー! 美味かったのじゃ!」
システィーナは、口周りをポテチで汚し、満足したよにコーラを飲み干した。泣いた目の腫れも、少し治ったな。
「満足したならそろそろ帰んな。お姉さんに見つかるとまた・・」
『カランカラン』
「システィーナ!!」
「あ、姉上!!」
言わんこっちゃない。
「システィーナ!! 其方は自宅謹慎中であろう!! 何をしておるのだ!!」
「あ、姉上。その、なのじゃ」
「其方等側仕えも何をしておるのだ!!」
「「申し訳ありません!!」」
怒られて、ガクガクブルブルに震える三人。助け船を・・・・いや、自業自得ではあるが。はあーー。
「あの、ティファリーゼさん? あまり店内で大きな声は・・・・」
「う、うむ。すまぬ、なんでも屋の店主」
以外と素直ではあるんだよな。
「ティファリーゼさんもどうです? お菓子とジュースでも・・」
「ん? いや、妾は・・・・待て、まさかシスティーナにも?」
「えぇ、振る舞いました」
「ぬぬぬ、勝手に・・・・」
「えっ、今なんて・・・・」
「勝手に、システィーナに物を与えるな! 毒が入っていたらどうするのだ!」
「いやいや、入ってませんから。俺の手作りなんですよ?
それに、よしんば毒を盛られていたとしても、ここには解毒のポーションもありますし」
「だとしてもだな・・・・」
「姉上! 姉上も食べみるのじゃ! 美味しいのじゃ!
はい、あーーん」
「ぬあっ! あーーんだと! う、うむ、あーーん」
やっぱりチョロいなこの人。あっ、おい! チョロかろう?
って顔でコッチを見るな!
システィーナは、姉にアーンをした後、こちらをチラリと見て、チョロいじゃろ? と言う顔で笑っていた。
コイツ、一回くらい痛い目にあった方がいいと思う。
「うむ、ふむ! コレは・・・・美味いな!」
「じゃろ? 姉上!」
「うむ、システィーナがアーンしてくれたから余計に!」
デレデレの笑顔で、喜ぶティファリーゼさん。
この人、本当にシスコンだなぁ。
「店主よ、コレを買って帰りたいのだが?」
「かなり気に入ったんですね?」
「うむ、あっさりとしていて美味かった。何よりシスティーナのあーーんが!」
「・・・・そ、そうですか。・・・残念ながら、まだ販売して無いんですよコレ」
「そうなのか? それは残念だ」
「試作品なんです。ただ、作ったのが残っていますから、それをお譲りしましょうか?」
「良いのか?」
「はい、味の感想も聞きたいですし」
「ふむ、そう言う事なら引き受けよう。ゴホン! システィーナ」
「ひゃい!」
「今回は多めに見よう。ただし」
「ただし?」
「帰ったら、妾にアーンするように」
「ひゃい・・・・」
「お待たせしましたー。先程食べた薄塩味と、海苔塩、コンソメです」
「なんとー! 他にも違う味があったとはー!」
「ふむ、かたじけない店主。システィーナ、帰るぞ」
「姉上、ちょっと待つのじゃ! ポテチにはコーラなのじゃ!」
「コーラ?」
「ジュース・・・・甘い飲み物です」
「ほう、ならそれも貰おう」
「まいどありー」
システィーナ達は、ティファリーゼの乗って来た馬車で帰っていった。はあーー。ようやく、静かになった。
「店長ー! 只今戻りましたー! って! どうしたんです? 凄い疲れた様子ですけど?」
「ん? ちょっとね・・・・」
お店のカウンターで項垂れる俺。あぁー、暫く動きたくない。
本当に・・・・疲れたぁー。三日くらい休みたいなぁーー。