定休日の冒険 パートⅡ その6
「凄い出会いでしたね」
「う、うむ」
「そ、そうですわね」
「「「ほわぁぁーー」」」
現在、荷馬車に揺られながら、帰途の途中だ。あの後、ララウとは直ぐに別れた。なんでも、用事で忙しいとの事。古竜の用事ってなんだろう? ・・・・兎に角、俺達は無事に依頼をこなした・・・・こなしてないよな?
「あの、ナヴィアナさん? 俺達の依頼って、地竜の討伐でしたけど。こう言う場合はどうなるんですか?」
「地竜自体居なかったから、依頼自体が無効だな」
「そうなんですか・・・・。ララウも近くに、地竜なんて居ないと言ってましたからねぇ」
「古竜の言う事だから、確かだろうな」
「ですわね。まあ、地竜は居なかったですけど、ジャイアントポイズンリザードは獲れましたし」
「倒したのは俺ですけど?」
「私達はパーティーなんですから・・・・分け前は頂きますわ」
「私は別にいらんぞ? エル一人で倒したし。エルの強さを、ナターリアに見せつけてやれたしな」
なんでナヴィアナさん、そんな自慢気なの?
「まあ、別にみんなで分けても良いですよ。そんな話より・・・・」
チラッと、未だに放心状態の三人に目をやる。ほげーと口を開け、視線は上をひたすら見つめていた。
大丈夫かコイツ等? それにしても、ジャイアントポイズンリザード・・・・荷台によく乗ったな。と言うか、小さくなってるし。
なんでも、荷台に特別な魔法が掛けてあり。大きな物は、小さくなって、荷台に乗る大きさになるのだとか。
面白い魔法だな。などと、感心していると・・・放心状態のお嬢様が急に立ち上がって・・・・。
「凄かった・・・・凄かったのじゃ! 古竜じゃぞ! 古竜!」
と連呼した。ちょい、落ち着きなさい。
「凄かったです! お嬢様!」
「凄い出会いでしてた! お嬢様!」
「そうじゃろそうじゃろ! これも、妾が・・・・」
「シス・・・・」
「ん? 今、なんか聞こえなかったか?」
「ん? ・・・・何も聞こえんぞ? そんな事より、妾の・・・・」
「・・・システィ」
「ん? ほら、やっぱり聞こえる」
「うむ? 気の所為では・・・・「システィーナ!!」ほえっ!」
この声は・・・もしかして?
荷台から身を乗り出して、前方を確認すると。
「システィーーーーーナーー!!!」と叫び、馬に乗って駆けてくる、お姉さんのティファリーゼさん。その後ろから、数十騎の騎馬隊が追いかけて来ていた。
「ティファリーゼさんだ」
「げぇっ、姉上?!」
「システィーナお嬢様! ティファリーゼ様が」
「ティファリーゼ様がお駆けつけられました」
げぇっ、てなんだよ、げぇって! 心配して駆けつけた人に対して、失礼でしょ。それにしても、この後の展開が・・・・うん、目に浮かぶな。
まあ、どうなったかと言えば・・・・。
「システィーナ! この馬鹿者! どれだけ心配したと思っておるのだ!」
「・・・・・・・・申し訳ないのじゃ」
「まったく! ・・・・すまぬな、其方らが保護してくれたのだな。感謝する。謝礼は奮発するぞ」
「いえ、別にたいした事してないのでいいです」
「そう、謙遜するな。所でだが・・・・荷台に乗ってるのは、ジャイアントポイズンリザードであるな?」
「えーと、はい。地竜の討伐場所に居たのがコイツだったので、一応倒したのですが」
「ふむ、地竜はおろなんだか」
「えー、まあ」居無い代わりに、古竜が居ましたけど。
「ティファリーゼ姉上! 地竜なぞ、どうでもいいのじゃ!」
「どうしたシスティーナ? そんなに興奮して・・・・」
「興奮もするのじゃ! 古竜! 古竜なのじゃ!」
「古竜? 古竜がどうしたのだ?」
あぁ、言っちゃった。はあー、説明した方がいいか。
「あの、それが・・・・カクカクシカジカでして」
俺は、地竜討伐に向かった渓谷で起きた事を、ティファリーゼさんに説明した。
「な、ななな、なんじゃとーーーー!!」
まあ、驚くよな。
「古竜が居たと言うのか?!」
「そうなのじゃ姉上! 古竜! 古竜が居たのじゃ!」
「・・・・・・・・・・・・」
「姉上?」
あれ? ティファリーゼさんがプルプルと震えて・・・・。
「貴様らーー!! 可愛いシスティーナに、なんて危険な目にあわしとるのだーーー!!」
妹ラブのティファリーゼさんが、話を聞いて、怒りを爆発させた。
「えーと、すいません」
「すいませんで済むかーーー!!」
「ちょっと待て、着いて来たのはこの娘達だ。我々には責任など無い!」
「そうですわ! 保護してあげただけでも、ありがたいと思いなさい」
ちょ、ちょっとー! 二人共ー! 何言ってんのーー!!
「ぐうーーー、貴様らーー」
「姉上! この者達は恩人なのじゃ! 怒っては駄目なのじゃ!」
「うっ、システィーナがそう言うなら・・・・」
うわ、この人妹に甘すぎ。と言うかチョロすぎ。
「ありがとうなのじゃ姉上! 大好きなのじゃ!」
「ぐっ!」
鼻を抑え、よろめくティファリーゼさん。
本当に大丈夫か、この人?
「姉上・・・・一緒に帰るのじゃ」
「う、うむ! 一緒に帰ろう! では! 出発! 街に帰還するぞ!!
「「「「「「おぉーー!!」」」」」
「まったく、騒がしい連中だ」
ほんと、ナヴィアナさんの言う通りです。
「そうであった。システィーナよ」
「どうしたのじゃ姉上?」
「父上からの言伝だ。システィーナは暫く、自宅謹慎との事だ」
「な、なんじゃとーーー!!」
「心苦しいが、仕方ない。妾も一緒に謹慎するから寂しくないぞ」
「嫌なのじゃーーー!!!」
「「お嬢様、自業自得かと」」
「うわーーーーん!! なんでも屋よ! なんとかするのじゃーー!!」
「なんでも屋は、雑貨屋ですので、そう言った事は出来ませーん」
「うわーーーーーん!!」