定休日の冒険 パートⅡ その3
「ほんと、大事になってきた」
「直ぐ出られる様に、準備せよ!」「そこ! 早く整列せんか!」
「第一、第二騎士隊。集合しました!」「騎馬隊はそちらに並べ」
街と外とを繋ぐ門の前で、慌ただしく騎士達が準備していた。
どうしてこうなったかと言うと、公爵令嬢であるティファリーゼ
さんが出した、非常事態宣言によりこうなった。
「そもそも、本当に地竜の元に行ったのかは、分からないのに」
ティファリーゼの行動は、心配症と言う次元では無い。
しかし、子供達だけで行動しているとなると。危険すぎる。
この世界には、本物のモンスターがらいるからだ。それだけじゃない、盗賊や人攫いだって・・・・俺もちょっと心配だ。
「エル」
「うぇ、あっ、はい」
「どうかしたかエル?」
「ナヴィアナさん・・・いえ、凄く大事になったなぁーと」
「過保護な奴だ。それより、馬車を頼んだからさっさっと行くぞ」
「馬車?」
「あぁ」
「どうもです!」
「うわ、出た、ノームさん達」
ちびっ子ノームの運び屋さん達が現れた。相変わらずチッコイ。
・・・・この間の子達かな?
「この間は儲けさせてもらいました。ありがとうございます」
あっ、この間の子達か。
「いえいえ、こちらこそお世話になりました。今回もお世話になります」
「はい! 是非、地竜を討伐して下さい! そうすれば、運び屋の我々も、大儲けです!」
「えーと、頑張ります」
「それじゃあ、地竜に向けて出発です!」
「・・・・」
「あれ? ナターリアさんどうかしました?」
「なんでも無いですわ。さあ、行きましょう」
「・・・・ん?」
「なんだ? ナターリアの奴・・・・まあいい。エル、行くぞ」
「はい」
*****
ガタゴトと揺られながら、ノームの荷馬車に乗って、地竜の出没する場所へと向かって行く。
ふと思ったが、地竜を倒したとして・・・・これに乗るのか?
それに、ティファリーゼさんを、何も言わずに置いて来たが、良かったのだろうか?
鎧姿に身を包み、騎士達に号令していたティファリーゼさんを、ナヴィアナさんとナターリアさんの「面倒だから放っておけ」の一言で、声をかけずに出発したのだが。逆に、面倒になりそうな気がする。
「ところで、地竜の出現場所は遠いんですか?」
「それほどかからん。数時間で着くだろう」
「確か・・・・地竜の出没場所は、アラル渓谷でしたわね。三時間もかかりませんわ」
「馬車で三時間・・・・」酔わないかな?
「ナターリアさん、アラル渓谷って、子供が行けるような場所なんですか?」
「行けないことはないですわね。アラル渓谷は、途中まで馬車で行けますから。ただ、アラル渓谷の周辺は、険しい山ですし。子供だけとなりますと、難しいかもしれませんわね」
「成る程・・・・」そもそも、商人の馬車がアラル渓谷の方に向かったかは、分からない。案外、ティファリーゼさんの妹は、商人が立ちよった近くの街に居そうな気がするけど。
「兎に角、暫くはのんびりと場所の旅と言う事だ、エル」
「そうですね。景色でも見ながら、のんびりと行きましょう」
ゴロンと寝転び、のんびりとする事にした。これから、地竜と戦う事になるし。今くらいはゆっくり、のんびりとしよう。
・・・・馬車に揺られて、のんびりするのも悪くは・・・・。
「どう言う事じゃ?! 妾はアラル渓谷に行きたいのじゃ?!」
「お嬢様、おやめ下さい! 無理でございます!」
「地竜をこの目で見たいのじゃ?! 邪魔するでない?!」
「システィーナお嬢様!!」
声がした方を見ると、二人の少女と男の子一人が、道の真ん中で言い争っていた。
ちょっと待て、今の内容からしてまさか・・・・。
「あら、ちょうど馬車が来たのじゃ。ミレット、馬車を止めるのじゃ」
「か、畏まりました! す、すいませーーん! 止まってくださーーい!」
「どうしましょうか?」
手綱を持つ、運び屋ノームさんが聞いてくる。
「止まる必要は無い。放っておけ」
「ですわね、さっさと先に行きましょう」
・・・・本当にブレないなこの二人。話の内容からして、多分ティファリーゼさんの妹なんじゃ・・・・。
「はあー、止まって下さい」
「エル?」
「ちょっと、なんで止めるんですの!」
「放って置く訳には、いかないでしょう? ノームさん、止めて下さい」
「分かりました」
馬車を止め、荷台から降りる。馬車を止める様言われた少女は、涙目になりながら「止まってくれましたお嬢様!」と喜んでいた。
「そこの者! 妾達を馬車で運ぶのじゃ!」
・・・・ムカッ。何が活発な子だ。ただの我儘娘じゃないか。
「エル、やはり放って置いた方が良かったのでは?」
「そうですわ。放って置きましょう」
少しムカついたけど、そう言う訳には・・・・。
「あの、止まっていただきありがとうございます。お嬢様は世間知らずなので、平にご容赦を・・・・」
「ちょっと、アルフレット! 何頭を下げてるのじゃ! 妾に仕える者として、堂々とするのじゃ!」
「システィーナお嬢様・・・・今は兎に角、馬車を手に入れ事が大事です。ですから・・・・」
「じゃからといって、平民に「なあ? 君はティファリーゼさんの妹?」
「・・・・な、なんの事じゃ」
めっちゃ動揺しとる。
少女は、そう言って視線を逸らすが。バレバレである。
「あ、あの、どうしてそれを・・・・」
「ミレット!」
「どうしても何も、お姉さんが君を探して、街は大騒ぎになってるぞ。騎士隊まで、捜索に参加してる状態だ」
「!!・・・・まずいです! システィーナお嬢様、お早く戻らなければ!」
「アルフレット! じゃから言ってるのじゃ! 竜を見るまでは帰らないのじゃ!」
「「お嬢様・・・・」」
「と言う事で! 妾達を馬車で運ぶのじゃ!!」
・・・・・・・・。
「エル、此奴の尻をひっぱ叩いていいか?」
「駄目に決まってるでしょう」
「一発くらい・・・・良いと思うわ。躾ですわ」
「駄目ですって! はあーー」
今にも、お仕置きをしそうなナヴィアナさんと、ナターリアさんを止める。正直二人は、女王様みたいな雰囲気がある。その威圧により、少年少女達はビクビクと震えていた。
「お、おお前達! わわ、妾に何かしたら、お父様やお姉様が、だだ、黙ってないのじゃ!」
完全に怯えとる。兎に角・・・・「君達、馬車に乗りなさい」
保護しといた方がいいだろ。一旦帰る方がいいかな?
「言っておくが、我々は今から地竜を討伐に行く。邪魔するで無いぞ!」
「な、なんじゃと!」
「ちょっと、ナヴィアナさん! 言っちゃ駄目ですよ!」
「よし、地竜に向けて出発なのじゃ!」
はあー、こうなるか。えっ、待って、このまま地竜の元に行くの? ・・・・一旦帰らない?