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携帯保存食


「ふう、洗濯バサミ500個、ハンガー100個、ジャラジャラ20個完成」


 最近人気の商品を、頑張って制作していた所だ。どうやって作っているかと言うと、カオスフロンティアの、ゲームスキルの一つで、[創造極魔法士]クリエイトマスターを持っている。


 このスキルは、通常材料が必要な物が、MPの消費のみで色々作れると言うスキルだ。作れる物は、下級アイテムや下級武具などが作成できる。その他にも、日用品すら制作可能なスキルなどもある。


 そもそも、カオスフロンティアは、とても変わったゲームであった。普通、生産系が作る物といったら、ポーションなどのアイテムや、剣などの武器に、鎧などの防具が普通だ。なのに、カオスフロンティアでは、家から家具と、その他にも色々作れた。ゲーム素人の俺にも分かるくらいに、正直言って変わっていた。


 まあ、そのゲームの生産系を、俺は極めた訳だが・・・・それに、店を運営するのにスゲェー役立ってる。 


 極めていて良かった。ゲーム内で、DIYに励んで良かったよ。マジで!


「すいませーーん。誰かいますかーー」


 ん? あっ、お客さんだ。


「はーい、只今行きまーーす!」


 作業場から、お店の方へ向かう。店内には、男女二人づつ、の四人組が待っていた。格好からして、冒険者だろう。


「お待たせいたしました。いらっしゃいませ、どのような御用でしょうか?」


「えーと。ここは、なんでも屋であってるか? 洗濯バサミの?」


 真ん中に立っていた、リーダーらしき冒険者が、ひとり前に出て、カウンターに両手を着いて、グイッと体を近づけて聞いてくる。


 この人は・・・・フロー、戦士職の冒険者か。レベルは・・24か。


 その人の顔を見ると、鑑定スキルで勝手に、右上に表示されてしまう。盗み見てる訳ではない。勝手に出ちゃうから仕方がないのだ。


「はい、洗濯バサミはうちの商品です。洗濯バサミを買いに来られたのでしょうか?」


「いえ、そうではなくて・・あっ、おい!」


「洗濯バサミを買いに来たんじゃないの! ここにあるって聞いた、携帯保存食を買いに来たの!」


 喋っていた男性を押し退け、今度は女性の冒険者が前に出て来た。


 ふむ、名前はリゼッタ、剣士職か。レベルはと・・19。


 携帯保存食を? 冒険者の人なんて来た・・・・あっ! もしかして、ナヴィアナさん!


「もしかして、ナヴィアナさんの知り合いですか?」


「いや、顔見知り程度だ」


 もう一人の、身長が2メートル近い、寡黙そうな男性冒険者が口を開いた。


 名前ボウス、重装騎士・・・・盾職か。レベルは25ね。


「もう、ボウス! 私が聞いてるの!」


「リゼッタこそ、リーダーの俺が聞いてるだろう?!」


「リゼッタ、邪魔」


「何ですってぇーー!!」


「あの、店内ではお静かにお願いします」


「「「・・・・すいません」」」


「はあー、フローさんも、ボウスさんも、リゼッタさんもお静かにお願いします。私がお聞きしますので!」


「「「はい・・・・」」」


 最後のひとり、眼鏡をかけた女性が前に出る。

 

 魔法使いか。名前はリーン、レベルは18。


「リーンと言います。こちらは、フローさん、ボウスさん、リゼッタさんです。私達、鋼の翼と言うパーティーを組んでます」


 リーンは、パーティー仲間の紹介を終えると、こちらに顔を向けなおし、クスっと笑った。


「どうも、なんでも屋の店主、エルと言います」


「どうもよろしくです。それで、何ですけど・・・・ナヴィアナさんにお売りした携帯保存食って、まだありますか?」


「はい、ありますよ。ナヴィアナさんに教えてもらったんですか?」


「はい。たまたま依頼でご一緒した際に、とても美味しそうに食べていたもので・・・・聞いてみたら、ここで買ったと」


「あれは旨そうだったなぁー」


「思い出すだけで、お腹がすくなぁー」


「食事は大事だ」


「と言う事で、携帯保存食を下さい!」


「はい、少々お待ち下さい」


 奥から、木箱に入った携帯保存食を運んでくる。カウンターにドンと置く。鋼の翼は、その木箱をワクワクしながら覗き込む。


「こ、こんなに種類があるんですか?」


「あの! コイツは?」


「それは、お湯を注いで食べる物です」


 リーダーのフローさんが指さしたのは、いわゆる、インスタント食品。


「じゃあ、こっちのは?」


「これは、穀物と乾燥させた果物を、焼き菓子みたいにした、保存食です」


「えっと、コレは?」


「そちらは、蒸しパンです」


 フローさんは、白い四角い固まりを摘み取る。


「蒸しパン? 硬いなこれ、本当に食べられるんですか?」


「そうですね、実演しましょう。えーと、まずは小鍋に水を入れて、コレを一つ入れ、火にかけて待ちます。5分程でこんな感じです」


「「「「おぉーー!!」」」」


 ふっくら蒸しパンが、小鍋の中でふっくらと膨らんでいた。


「食べてみます?」


「「「「はい」」」」


 鋼の翼は、旨い旨いと言いながら、ムシャムシャと、あっという間に食べた。


「美味しかったです」


「あぁ、コレさえ食えば、元気が出るぜ」


「そうね、森やダンジョンで食べる物としては、上等過ぎるわ」


「旨い」


 どうやら、気に入ってもらえたようだ。カオスフロンティアも、食事が大事だった。そもそも、ゲームで食事ってと思ったが、実際の冒険者の話しからして、とても大事なようだ。


 そう言えば、レイドで集まったパーティーの、料理スキルを持った連中が。こぞって競っていたっけな。俺は、料理スキルも極めてたから、フレンチのフルコースとか出してたっけな。料理によっては、ステータスを上げる物とかあったしな。


「あのー! これでお幾らですか?!」


「はっ、はい! えーと、この量だと銀貨1枚と、大銅貨3枚になります」


「はいリーダー、後宜しく」


「おい、宜しくって何だ!」


「パーティーのお金から出してって事よ」


「まったく・・・・えーと、はいこれで」


「はい確かに、頂きました」


「それじゃあ」


「はい、またのご来店をお待ちしております」


 鋼の翼のメンバーは、紙袋に入れた品を大事そうに抱えて、帰っていった。


 その数日後、洗濯バサミと同様の現象が、俺の店を襲った。


「携帯保存食! 携帯保存食をよこせ!」

「おい! 割り込むんじゃねえ!」

「うるせぇ! おい、それは俺のだ!」

「ちょっと! 誰、私のお尻さわったの!」

「こいつよ! 変態!」

「ぐへっ!」


「落ち着いて! 落ち着いて下さーーい!」


 冒険者達が押し寄せ、店は大繁盛した。何か変なのもまじってたけど。



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