定休日の冒険 パートⅡ その2
突然、近寄って来たと思ったら。ナヴィアナさんとナターリアさんに、どうやら依頼をしたいらしい。
ナヴィアナさんとナターリアさんの二人は、互いに顔を見合わせると・・・・「「断る」」と胸を張って言った。
「なっ、お前達、妾が誰か分かっておるのか!」
「身なりからして・・・・大方、どこぞの貴族令嬢といったところか」
「ですわね。そもそも、人探しになんで私達が?」
「むむむぅ・・・・」
やばい・・・・貴族のお嬢様がお怒りだ! どどど、どうしよう?!
「ちょ、ちょっと、二人と・・「あれ? なんでも屋の店長? 何してんの?」
えっ? あっ! 「フローさん!」
俺を呼んだのは、鋼の翼のリーダー、フローさんだった。
「フローさん、ちょうどよかった。実は・・・・あれ? フローさん一人ですか?」
「ん、あぁ。今日、仕事は休みなんだ。俺は、昨日受けた依頼の断るで、ギルドに話があって・・・・ところで、なんの騒ぎだ?」
「えーと、カクカクシカジカでして・・・・」
「へぇー、人探しの依頼か。金髪に碧眼・・なんだこの依頼書?」
「やっぱり、変ですよね。その依頼書・・・・」
「あれ? 十二才の少女で金髪に碧眼・・・・」
「フローさん、どうかしましたか?」
「いや、見たかもこの依頼書の子」
「えっ、本当「その話、本当か!!」
「えっ、あっ、はい」
突然、依頼を出したであろう、金髪美女が食いついた。
「妾の妹をどこで見た! 早く申せ!」
「えっ、あっ、えーと。貴方はどう言う関係で」
「その依頼を出した者だ。そして、探してほしい人物とは、妾の妹だ!」
姉さんでしたか。それにしても、フローさんタジタジだな。
美女に迫られ、フローさんは顔を赤くして、モジモジしていた。
気持ちは分かるよ、フローさん。
「それで、どこで見たのだ!」
「えーと、あれは・・・・そう! 確か・・・・」
「な、何?! 商人の荷馬車に、乗り込んでいただと!」
「えーと、はい。俺が見たのは、そんな感じでした」
「何故、止めなかったのだ!」
「ちょ、ちょっと、うわぁー、うあー」
金髪美女は、フローさんの胸ぐらを掴み何度も揺さぶった。
「ティファリーゼ様、落ち着いて下さい!」
女性ギルド職員が、間に入って止めに入る。しかし、その手は止まらない。
ティファリーゼって言うのか、この人。それにしても、綺麗な顔に似合わず、過激だな。フローさんの胸ぐら掴んで、振り回す姿は、シュールであった。
この世界の美女は、こんな感じなのか? チラッと横を見る。
騒ぎの中淡々と依頼を選ぶナヴィアナさんとナターリアさん。
「エル、この依頼などいいのでは?」
「そうね、コレもいいわね」
ブレないなこの二人・・・・。
「うん? なんだ貴様は?」
どうやら、次にロックオンされたのは、俺のようだ。
「えーと、なんでも屋の店長のエルと申します」
一応、挨拶をしておく。挨拶大事!
「・・・・なんでも屋? ほう、其方が噂のなんでも屋か」
噂? えっ、噂になってるの、うちの店?
フローさんを離して、ティファリーゼさんはこちらに向き直る。
「エルと言ったな?」
「は、はい」
「妾は、ティファリーゼ・フォン・グラトナスだ」
「はあー?」こう言う場合、どうしたら? ははーとか、やればいいのか?
「ゴホッ、ゴホッ。ん、 グラトナス? グラトナスってまさか」
「知ってるんですか? フローさん」
「いやいや、知ってるも何も。ここら一体を治めているのは、グラトナス公爵家だよ? と言うか、店長は何故知らない」
「すいません。まだ、来てから日が浅いものでして」
異世界に来てと言う意味で。
「グラトナス家を知らんとは・・・・其方、相当の田舎者か?
ふん・・その話はまあよい。兎に角、其方の店の噂は良く聞いていた。妹も、行ってみたいとゴネてな」
「それはそれは」
「それで幾度、屋敷から抜け出したか・・・・」
「ん?」抜け出す? もしかして、来店した事があるのか? でも、金髪碧眼なんて幾らでもいるし。
「おっと、こんな話をしている場合では無かった。妹を探しに行かねば! 街を出たとなると・・・・騎士団の応援を願うか。屋敷に人をやれ!」
「「はっ!」」
なんか大事になってるな。
「ゴホッゴホッ」
「大丈夫ですか? フローさん」
「あぁ、大丈夫だ。さすがは、姫騎士と名高いティファリーゼ様だ」
姫騎士? へぇー、そう呼ばれてるんだ。
「それにしても、なんで街の外に・・・・」
「確かに・・・あっ!」
「なんです? あっ、て」
「そう言えば、一人じゃなかった」
「まさか、何者かが妹を拐かしたのか?」
「あ、いえ、と言うより。その妹さんに連れ回されてた様に見えましたけど。兎に角、その時、微かに聞こえた気がするんだ。竜と」
「「「「竜?!」」」」
「あぁ」
竜・・・・竜?!! まさか!
「あのこれ!」
俺は慌てて、地竜討伐の依頼書を指差した。まさか、とは思うけど。念の為、言った方が良い気がした。
「地竜討伐・・・・って、それこそまさかだろ? いくらなんでもそれは」
フローさんは「さすがにそれは無いだろ」と否定する。俺もそれならいいけどと思う。
しかし、姉であるティファリーゼさんは「あり得る」と納得した表情を見せた。
「あの、あり得るとは?」
「妾の妹は・・・・その、活発な子なのだ。だから、もしかしたらと」
「・・・・・・・・」まじか。
「なら決まったなエル」
「えぇ、決まりですわ」
「決まったって・・・・何が決まったんです?」
「決まっている『バン』コレだ」
ナヴィアナさんは、地竜討伐の依頼書を、右手でバンと叩いてこちら見た。
「・・・・マジですか?」
どうやらこのイベントは、地竜討伐するようだ。
「マジか」