定休日の冒険 パートⅡ その1
「あの、ナヴィアナさん?」
「なんだエル?」
「定休日がくる度に、冒険に誘うのやめてませんか?」
「う、何故? 迷惑だったか? エルは私が嫌いなのか?」
「いえ、嫌いとかでは無くてですね。そもそも、定休日は休むためにもうけたわけでして」
超絶美形のナヴィアナさんが、ショボーンとする姿は可愛いかったが。罪悪感が半端なかった。
「では、なんのために冒険者登録を?」
「それは・・・・」言えない。異世界に来たから、冒険してみたかったとか言えない。
「それに、一定の日数の間に仕事を受けないと、登録を取り消されるぞ?」
「えっ、そうなんですか?」
「うむ、と言うか事で・・・・行くぞ!」
「・・・・はい」
定休日に冒険者登録をして、ナヴィアナさんと一緒に依頼を受け、冒険をした事で。それ以来、定休日には冒険の誘いを受けるようになった。
「それで・・・・なんでナターリアさんが?」
「あら? 何か文句でも?」
「文句と言いますか・・・・何故? と言うか」
「エル、ナターリアはお礼のつもりなのだ」
「ちょっと、ナヴィアナ!」
「お礼?」
「ハイオーガから助けてもらった、そのお礼がしたいそうだ」
「ん? つまり、お礼として着いて来たと?」
「そういう事らしい」
「はぁー?」ナターリアさんに目をやると「ふん」と顔を逸らした。お礼をしたいと言う気持ちは、本当・・・・みたい?
と言うか、一緒に冒険に行く事がお礼? なのか?
・・良く分からん。まあ、両手に花状態は・・・悪くないかな?
「おい、アイツ」「なっ、ナヴィアナ様とナターリア様が一緒?」
「アレ、なんでも屋の店長じゃねぇか」「両手に花とはやるなぁ」
「俺のナヴィアナさんが」「いつお前の物になったんだよ」
「ナターリア様・・・なじってほしい」
「「「「「「なんでも屋の店長、許すまじ!!」」」」」
ダメだ。大勢の男性冒険者から殺気が! それに、何故か女性が混じっていた気が・・・・後・・・・「一人やばいのがいる」
冒険者ギルドの内で、大勢の冒険者達から殺気が放たれる中。
ナヴィアナさんとナターリアさんは、気にも留めず。依頼の貼り出されている場所に、ツカツカと歩いていった。
はっ! マズイ、二人から離れると襲われるかも! そう思って、慌てて後を追った。みんなの睨む目が、めちゃめちゃ怖かった。
「さて、今日はなんの依頼を受けるのだ?」
「コレとかいいんじゃないかしら?」
ナターリアさんは、一枚の依頼書を指差した。
「えーと、地竜の・・・・討伐?」
はい? 地竜?
「ちょっと、ナターリアさん? いくらなんでも地竜は!」
「そう・・・・だったらコレならどうかしら?」
再びナターリアさんが、依頼書を選び指差した。
「えーと」何々・・・・サイクロプスの討伐。これなら・・・・ん? 数が五体? その内一体は、メガサイクロプス?! サイクロプスのデッカい番の奴か?!
「どうだエル? それにするか?」
ナヴィアナさんは、ワクワクした表情を浮かべ。ナターリアさんは、何か疑うような顔をしていた。
これってまさか・・・・。
「あの、もしかして俺を、試そうとか思ってます?」
言い当てられたのか、二人は直ぐに顔を逸らした。
やっぱりか!
「いや、試そうなどと。そんな事、微塵も思っていないぞ」
目が泳ぎ過ぎです。ナヴィアナさん。
「えぇ、そうよ。試そうなんて・・・・本当にハイオーガを倒したのが、貴方なのかって疑ってる訳じゃ・・・・ないですわ!」
解りやすい。
「あの、まだ俺。冒険者になったばかりなんですからね。そんな、とんでもない依頼を、ホイホイと選ばないで下さいよ。もう、俺が決めますから」
さてと、何か良さそうな依頼は・・・・と。ん? なんだこの依頼書?
「どうしたエル?」
「いえ、この依頼書だけ赤文字なので・・・・」
「「緊急の依頼だな」ですわね」
緊急?
「えーと、人探し? 年は十二才。特徴、金髪に碧眼。顔は超可愛い。目に入れても痛くない程に可愛い・・・・食べちゃいたいくらいに可愛い! ・・・・・・・・・・・・」
・・・・なんだ? この依頼した側の、主張と主観、入りまくりの依頼は?
「えーと、続きはと・・・・緊急の依頼のため、報酬増か」
うん、妙な依頼と言うのは分かった。
「変な依頼書だな」
「たまにあるのよね。おかしな依頼」
この依頼は・・・・パスで!
「まだ見つからないのか!」
ん? なんだ? 声のする方を見ると、金髪の女性が受付と揉めていた。
「申し訳ございません! 今、依頼を受けた冒険者達が探しておりますので・・・・」
「えぇい! 早くするのだ!」
「「「はいぃぃぃ!!」」」
「なんの騒ぎですかね?」
「なんの騒ぎも何も、恐らくこの依頼の事だろう?」
「ナヴィアナの言う通り、この依頼ですわね」
うーーん、あっ! 目が合った。綺麗なひと・・・・あれ? こっちに来る? あれ? あれれ? 何? なんなの?
はっ! コレってまさか! イベントか? これはゲームじゃ無いけど、イベント発生なのか!
カツカツと女性はこちらにやって来る。そして、俺の前・・・・を通り過ぎた。
なんだ、違ったのか。ふう。そう思ったのも束の間。
「其方等が、ナヴィアナとナターリアだな。其方達に依頼を頼みたい!」
どうやら、イベントが始まってしまったらしい。
タイトル付けるなら、少女を探せ! とかかな? なーーんて、
あははは・・・・嫌な予感がする。