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衣料品店の立ち上げ その2


「落ち着いた? パメラ」


「ありがとうリビィー。もう・・・・ずずぅぅー、大丈夫・・・・だから」


「鼻水出てるわよ。ほら、拭いて! あっ、私の服についてる!」


「あの、コレどうぞ」


 パメラさんにそっとハンカチを渡す。


「あ、ありがとう。ずびぶーーー!!」


「「・・・・・・・・」」


「ありがとう、返すわ」


「いえ、結構です」


「そう、ん? あっ!」


「どうかしたのパメラ?」


「このハンカチ! 凄くいい生地だわ!」


「そう・・・・」


「所でそっちの人は・・・・あぁー! あんたは、なんでも屋の!

 何しに来たー!」


「何しにって、リビィーさんに相談されて、それで見に来たんですけど? あれ? もしかして・・・・聞いてない?」


「エル君ごめん、言ってない」


「何で言ってないんです?」


「だって、それは・・・・」


「出てけーー! 全部お前の所為だーー!」


「こうなるから」


 ・・・・なるほど。


「帰れーー!」


 *****


 20分後・・・・。



「落ち着いた? 兎に角。話しを聞いてパメラ」


「私はずっと落ち着いてます! こんな人の力、借りません!」


「あのねパメラ、そんな事言ってる場合じゃないでしょ?」


「うぅ」


 パメラさんが、帰れコールをしている間に。リビィーさんから説明をしてもらった。このお店、借金の返済で今月中にもやばいとの事。


「借金の所為でって・・・」デジャヴかよ!


「パメラ、エル君なら力になってくれる筈だから!」


「でも・・・・」


「でもも、へったくれも無いわよ! 分かってるの? このままだとお店潰れるのよ!」


「分かってるよー。うっ、うう、うわーーーん」


「もう、泣かないでよパメラ」


 ・・・・・・・・。


「それでどうかしらエル君?」


「どうと言われてもなぁー。・・・・因みに、借金てどのくらい?」


「・・・・金貨五十枚ほど・・」


「うん無理」


「ちょっとエル君!」


「だって、金貨五十枚の借金をどうやって返すんです? テコ入れ以前の問題かと」


「でもエル君なら・・・・」


「アンナさんの飲食店の様にですか? 無茶言わないで下さいよ。まず、借金の桁から違いますよ! それに、今月は後二週間も無いんですよ? 稼いで返すにも、限界があります」


「・・・・」


「と言う事で無理!」


 俺がキッパリそう言うと。


「リビィー、私諦める」


「ちょっとパメラ、何言って・・・・」


「だって無理だよ。もう。手ばなす。ここは立地もいいから、借金の大体は返せる筈だから」


「パメラ・・・・」


 しまった。雰囲気が最悪に・・・・。でも、現実はそうだからな。それにしても、立地はいいんだよな? 何でそんなに、経営が悪化したんだ?


「あの、リビィーさん?」


「何かしら、血も涙もないエル君」


「酷い言われようだな。はあー。何でこの店は、そんなに経営が悪化したのかと思いまして・・・・」


 一体何が原因で・・・・ん?

 俺の視界に、古着とは別の高級そうな服が目に入った。

 

 ん? 扱ってるのは古着だけじゃ無いのか。


「あの、パメラさん。これって売り物ですか?」


「えぇ、そうよ」


「お幾らですか?」


「・・・・・・・・銀貨八枚」


「高っ!」いや、普通このくらいなのか? うちの商品は、大銅貨三枚から五枚なんだが・・・・。 因みに、銀貨一枚は、大銅貨十枚の価値。日本円にすると・・・・よく分からない。兎に角、俺からすると高いと思う。


「パメラ、何でこんなに高いの、この服?」


 あっ、やっぱ高いんだ。 なんでも屋の服は、安す過ぎたかと思ったけど・・・違ったのか。


「やっぱり、高いんですね。うちの店の服、安く売り過ぎたと思いましたよ」


「エル君のお店の服は、かなり安い方よ。いい古着の値段だもの」


「あっ、そなんですね。それにしても・・・・高過ぎません? この値段」


「何言ってるんです! この服の生地は、最高の物を使っているんです! これでも、安す過ぎるくらいです!」


 成る程・・・・この所為だ。絶対この所為だ。この店の経営が悪化したのは。


「リビィーさん。何故、経営が悪化したのか分かった気が・・」


「奇遇ねエル君。私もよ」


 この店には、古着とは別に、ずらりと高そうな、数十着の服が置いてある。この服全てが、銀貨十枚近くの値段と考えると・・・うん、ダメだこりゃ。


「パメラさん、因みに売れてるのですか?」


「・・・・たまーーに」


「パメラ・・・・はあーー、経営が、悪化する筈ね」


「何よー、リビィーまでー」


 売れない高い服を、こんなに仕入れたりしすれば、経営が悪化するのは、俺でも分かる。


「あの、リビィーさん。今すぐこの服全部、質屋にでも売ってしまいましょう」


「そうね。それで当分は乗り切れるかもしれないわ」


「ちょ、ちょっと! 勝手に決めないで!」


「何言ってるのパメラ。誰も買わない服なんて、さっさと処分するのよ! じゃないと、本当にお店が潰れるのよ!」


「うっ、うぅ。でもー」


「でもじゃない! はい! 処分! 分かった?!」


「うー、うん分かった」


「宜しい!」


 はあー、取り敢えず暫くは・・・・なんとかなるかな? いや、根本的な問題は解決してないからなぁー。


「こんにちはー、パメラさん?」


 突然、小太りのおっちゃんが入ってきた。


「あっ! マイケルさん!」


 どちら様?


「エル君。この人は・・・・」


「あっ、どうも。金貸しをしております、マイケルと申します」


「あぁ、つまり」借金取りですね。


「えーと、マイケルさん。あの、もうちょっと待って・・・・」


「そう言われても、もう待てませんよ。利子すら払え無い状況じゃないですか」


「うぅ、それは・・・・」


「あの、マイケルさん」


「はい、リビィーさん。なんでしょうか?」


「取り敢えず、なんとかするので、もう少しだけ待って下さい。

 お願いします!」


「うーーーん。はあー、分かりました。リビィーさんに、そこまで頭を下げられたら仕方ありません。取り敢えず、今日は帰ります」


「ありがとうございます。マイケルさん!」


「ありがとうございます!」


 二人は一緒に頭を下げた。マイケルさんは「一週間だけ待ちます」と言って帰っていった。


「それで、どうすれば良いと思う? エル君」


 何故、俺に聞く。


「そんな事言われても、後一週間でか・・・・」


 取り敢えず、服を処分して・・・・そのお金を、借金の返済に回すかな? 幾らになるかな? 利子分くらいになれば良いけど。


「兎に角、この高くて売れない服を、質屋に売って処分しましょう。話しはそれからですね」


「えぇ、そうね」


 アンナさんの店より、このテコ入れは骨が折れそうだ。

 

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