剣 その2
異世界に来て、初めての冒険。興奮していたのか、自宅に帰ってから、休もうにも寝付けずにいた。なので、作業場で物作りに没頭していた。
正直、それがいけなかった。赴くままに作った結果・・・・現在俺の手に、伝説級の剣が!
ゲーム、カオスフロンティアにおいて、剣の格を現す三段階の呼ばれ方がある。武器防具の強さや、ランクを表す星の数やレア度から。プレイヤー間で、勝手にそう呼ばれるようになった。一つ目が英雄級。二つ目が伝説級。そして、三つ目が神話級だ。いつの間にか、そう呼ぶようになっていた。と言うのも、アップデートの度に、クエストの難易度が上がり。クエストのランクをそう呼ぶ様に。そして、クエストで手に入れた武器防具が、クエストの難易度に合わせて、そう呼ばれるようになった。最終的には、カオスフロンティアの公式呼称になっていた。
因みに、その後日本サーバーのみ、日本刀の格を現す呼称、業物が導入、アップデートされた。業物、良業物、大業物、最上大業物の四つだ。この呼称は、意外に評判となり、海外サーバーでも取り入れられた。
まあ、それによって○○級の呼称と、業物系の呼称問題が出始めた。なので、レア度関係を○○級で表現し。業物系を切れ味や能力・・強さを表す呼称になっていった。俺の作った剣は、レア度は伝説級で、能力面は良業物に抑えてある。
伝説級は、それなりレアな素材を使っているので。武器防具にある耐久値[武器防具などが、破壊されるまでのダメージ値]が高いので、ちょっとやそっとでは破壊出来ない。神話級などになると、壊れる事は、そうそう無い。因みに、アイテムなど剣を、上級、中級、下級で現す事もあるが。三段階の一番下の英雄級でも、中の上から上の下級に入る。こちらに来てから作っていた物でも、中の下級の剣だった。今回作った剣は、中の上はある。ナヴィアナさんに売った剣とは、まるで違う代物なのだ。昨日のハイオーガなどを、真っ二つに出来る程に。
つまり俺は・・・「やり過ぎた」のだ。どうしようコレ。
作ってしまった伝説級の剣。正直問題だよな。死蔵まっしぐらにすべきか。いざとなったら、分解してしまうか。いや、それは作り手としてちょっとな。壊すのは忍びない。
そもそも、伝説級の武器は、本来作れない物だ。何故なら、素材を魔法で産み出す事が出来る[創造極魔法士]クリエイトマスターの力では、必要素材を作れないからだ。なので、俺のストックしてあるゲームの素材を使った。ほぼ、所持上限まで持っているので。このくらいの剣なら、軽く百本以上は作れる。
更に問題はある。この伝説級の剣は、一本しか作ってないが。
英雄級の剣を、三本程作ってしまったのだ。
「だいぶ興奮したんだんだな俺」
三本の剣は、俺の好みにデザイン、加工されている。ちょっとダメージ加工したり、アンティーク加工を施してある。更に、一応俺製作と分からないように、剣の銘には、俺の名前ではなく、適当に考えた名を入れる程に念を入れている。
「俺が作ったとは、分からないよな?」一応、鑑定の魔法を使える人がいた事を考え、三つの剣は作られてから数百年は経過させている。アンティーク加工と言って、これもカオスフロンティア独自のスキルだ。作ったアイテムや武器防具。魔道具や装飾品に至るまで、1年〜1000年まで時を経過させられる。これにより、剣は
古ぼけて見える。
それにしても・・・・「いい出来だなぁー」
売るつもりは無いけど・・・・ちょっと人に見てもらいたくはある。
「店に飾っておくとかいいかもな」
客が求めたら、非売品と言えばいいか。
早速、店内に飾ろうかと思ったが。今頃になって眠気が。
少し寝るかな? 陽が昇るまで二、三時間はあるだろう。
と言う事で・・・・「おやすみなさい」
この剣がのちに。色々と問題になる事を、俺はまだ知らない。
「くかーー、すぴーー、くかーー、すぴーー」