定休日の冒険 その4
「強いとは思っていたが、まさかここまでとは・・・・恐れ入ったぞ店主」
「いえ、たいした事は・・・・」
「ん? どうかしたか店主?」
「あの、店主って呼び方は、お店以外では・・・・」
「ふむ。では何と?」
「普通に名前でお願いします。エルと」
「うむ、分かった。・・・・え、え、エル」
「はい」
少し恥ずかしそうに、そっぽ向きながら俺の名前を呼んだ。
ちょっと・・・・可愛い。
「所でどうしましょうか・・・・アレとコレ」
まず、ハイオーガを指差し。その後、背中に背負ったナターリアさんを指差す。
「ふむ。そ奴はその辺に捨てていけ。ハイオーガは回収屋を呼ばねばな」
「捨てて行けって・・・・所で回収屋って?」
「素材を回収する者達だ。ナターリアが依頼を受けた時点で、知らせは言ってる筈、恐らく近くに居ると思うが」
「近くにって・・・・「呼びました?」おわっ?!」
突然、近くの草むらから。ちっこいの人が数人現れた。彼等、或いは彼女等は、顔を隠しているだけではなく。体全体をマントで隠していた。
ちっちゃい・・・・小人かな?
「やはり居たな。運び屋」
「勿論です。それにしても・・・・見事な腕前」
「えっ? 見てたの?」
「はい」
まったく気配を感じ無かった。
「それでは運ばせて頂きます。手数料として、運ぶ荷の三割を貰いますが?」
「えーと」チラッとナヴィアナさんを見ると。「うむ」とひと言。
恐らく、適切な値段なのだろう。
「分かりました。お願いします」
「はい、それでは。仕事にかかれー!」
「「「「「「おぉーーー!!」」」」」
ちっこい運び屋さんが、ハイオーガに群がる。そして、何処からともなく、荷馬車がやって来た。ちっこい運び屋さんは、何とハイオーガを六人程で持ち上げて、荷馬車に積み始めた。
「どっからそんな力が・・・・」
「驚いたか? てん、エル」
「運び屋さんて、一体・・・・」
「この者達はノームだ」
「ノーム・・・・ノームって精霊でしたよね?」
「成長すれば精霊になりますよ。私達はまだ妖精ですけど」
俺の質問に、ノームの一人が答えた。
「積み込みが終わりましたので、運びますね」
「あっ、はい。それで、成長すればとは?」
「ん? あぁ、段階があるんです。産まれて直ぐは、妖精種なんです。そして、成長すると精霊種に・・。エルフ族だと分かりやすいかもしれません。エルフは妖精種、ハイエルフは精霊種になります」
「へぇー」異世界だとそうなのか。面白いな。
「それじゃあ、ナヴィアナさんやナターリアさんは?」
「私もナターリアも妖精種だ。ただ、精霊種である、ハイダークエルフには、なろうとしてなれるものでは無いがな」
「へぇー」
「それじゃあ出発しますね」
「はい、お願いします」
「所で・・・・ナターリアさんも運びましょうか?」
「ん? お金取られるんですか?」
「まあ、はい。怪我して動けなくなる冒険者を運ぶのも仕事ですので」
「ナターリアに払わせればいい」
「はあ、それでいいんですか? 知り合い何ですよね?」
「知り合いと言うか・・・・従姉妹だ」
「尚更じゃないですか!」
「・・・・仕事に失敗したのナターリアだ。問題ない」
「はあ、そんなもの何ですね」
「そんなものだ。それに・・・・」
「それに?」
「コイツの事は昔からから嫌いだったのだ。いい気味だ」
思っ切り私怨じゃん。まあいいか。
「じゃあナターリアさんもお願いします」
「はい。かしこまりました」
運び屋ノームさんに、ナターリアさんを託して、俺とナヴィアナさんは、冒険者ギルドに帰還した。まあ、案の定と言うべきか。ハイオーガの事は騒ぎになり、ギルド側から、ランクアップの話しがあった。
でも、そこまで本腰入れてやるつもりは無い。なので、その件は断った。
「よいのかエル? 断ったりして」
「冒険者を、本格的にやるつもりは無いのでいいです。それよりナヴィアナさんこそ良いんですか?」
「ハイオーガ討伐の金か? 倒したのはエルだ。私が受け取る訳にはいかぬ」
「はあ・・・・まあ、ナヴィアナさんがそう言うなら」
ハイオーガは、金貨15枚の値がついた。高いのか安いのか分からないが、運賃が三割の運び屋ノームさんは喜んでいた。
「さて、家に帰るか」
冒険初日から、本当に大変だった。