定休日の冒険 その3
やはり、と言うべきだろうか。俺とナヴィアナさんの冒険は、そう簡単に終わらなかった。いや、勿論依頼はこなした。依頼された量の薬草を採取できた。問題が起きたのはその後の事だ。
「ナヴィアナ、久しぶりね」
「・・・・ナターリア」
現在、ナヴィアナさんと同じ種族の、ダークエルフの女性に絡まれている。薬草採取が終わり、帰ろうとしたその時。急に現れ、一触即発状態になっている。
それにしても・・・・ナヴィアナさんに、負けず劣らずの美人さんだ。ただ・・・・。チラッと、視線が顔から下にいく。残念な事にこの人・・・・小さいのだ、お胸お山が。ナヴィアナさんと同じく、背も高くてすらっとしているのに・・・・胸はナヴィアナさんの圧勝である。
「おい、そこの人間。ジロジロ何を見ている? この美しい私の姿に見惚れたか?」
お胸を強調する様な、セクシーなポーズを何故かとる。確かに美人ではあるが、何かムカつく。
「あの」
「何だ人間」
「偽物を強調されても・・・・」
「なっ、何じゃと! 何が偽物だと言うのだ!」
「えっ、何がって・・・・あっ、すいません」
しまった。思っ切りセクハラ発言をしてしまった。
彼女は胸を強調する様ポーズをした。そう、彼女の胸は強調されている。何かを詰めて・・・・。何故分かったかと言えば・・・・彼女を鑑定した際、情報の欄に出ていた。
ナターリア レベル39 種族・ダークエルフ 職業・魔法士
隠蔽・偽乳
隠蔽に偽乳の表示がされていた。隠蔽は鑑定した際、情報を隠そうとした時に出る表示。つまり、ちっぱいを隠していると言う事だ。うん、下品な事を言ってしまった。
「く、くく、ぷっ、くわはははあはははは!」
突然、俺の横でナヴィアナさんが大笑いし始める。
「店主・・・・くく、笑・・かすな。ぷははは」
「おのれ人間! よくも私を侮辱したな! えぇい、笑うなナヴィアナ!」
「無理を・・くはっ・・言う・・ぷははは」
「笑うな!」
隣りて大笑いするナヴィアナさん。
あの、そんなに笑わなくても。
「えぇい! 人間がぁーー!」
「あっ、ちょっと! えっと、ごめんなさーーい!」
怒ったナターリアさんが、俺に掴みかかろうとしてきた。
「おい、ナターリア。事実を言われたからと言って・・・・ぷは、ひはははははっ!」
「ちょっと、ナヴィアナさん! 火に油を注がないで下さい!」
「うがぁーー!!」
怒りが頂点に達したナターリアさんは、獣の様に襲いかかってきた。
「あぁーー!「ひゃっ!」 ん?」
俺に飛びかかって来たナターリアさんは、何故か直ぐに、掴んだ服を離して後ろに跳び退いた。そして、俺を掴んだ自身の手と俺を、交互に見ていた。
一体、どうしたんだ?
「貴様・・・・本当に人間か? 魔族の類いのではないだろうな?!」
「えっ? 俺は普通の人間ですけど?」
「嘘をつくな! 人間がどうやってそれほどの力を・・・」
「ナターリア、相変わらず鈍いのぉー。魔法士の癖に、相手の力を計れんとは・・・・。私は会って直ぐ分かったがな」
「ふん! 獣の勘を、威張らないで! 人間・・・・貴様は一体」
「グゴォォォォォ!!」
「何だ何だ?!」
突如、地面を揺らす様な唸り声が、森に響いた。
「今のは・・・・まさか!」
「どうやらお出ましのようね」
二人はどうやら、声のぬしに心あたりがあるようだ。
「ナターリア! もしかしてお前が受けた依頼は・・・・」
「えぇー、そうよナヴィアナ。・・・・ハイオーガよ」
「なっ! ナターリア! お前一人で・・・・」
「ハイオーガくらい一人で倒せるわ!」
ハイオーガ? オーガの上位種? えっ、もしかしてそれがこっち来てるの?
『ドスン! ドスン!』
「来るぞ店主!」
「エェーー!」
「来たわ!」
「グゴォォォォォ!!」
ハイオーガ レベル47
これはまずいな。ハイオーガのレベルは47。実力は二人より上だ。まずい!
「いくわよ! エアブレイド!」
『シュパーン』と、ナターリアさんの風属性の魔法、大気の刃がハイオーガを襲う。しかし、それほどダメージは与えられてない。
「グゴォ・・・・グゴォォォォォ!!」
ハイオーガは怒り、丸太の様な腕を振り上げて、ナターリアさんを攻撃しようとした。
「くっ! はっあぁぁぁ!!」
すかさず、ナヴィアナさんが剣を抜き、ハイオーガの脇腹を斬りつける。しかし、いや・・・・やはりと言うべきか。薄皮を切っただけで、ダメージは与えられなかった。
「グゴォォ! グゴォォォォォ!!」
ハイオーガは、振り上げた腕を地面に向かって叩きつけた。
すると『ドカーーン』と音と共に衝撃波が! それによって、ナターリアさんとナヴィアナさんが吹っ飛んだ。
「ぐわっ!」「きゃっ!」
「ナターリアさん!! ナヴィアナさん!!」
『ゴン』と音がした。ナターリアさんは木に当たり、更に気を失ってしまったようだ。ナヴィアナさんは、吹っ飛びはしたが何とか耐えた。
「くっ、ナターリア。店主! 私が引きつける! その間に逃げろ!」
「何言ってるんです! 逃げる訳無いでしょ!」
「店主・・・・」
俺はハイオーガの前に出る。正直怖い。それでも、やるしかない! 近づくと、ハイオーガの大きさがよく分かった。そして、その怖さも。顔、めっちゃ怖い!
「グゴォォォォォ!!」
俺が近づくと、新たな獲物と思ったのか。ハイオーガのほうから向かって来た。しかし・・・・。
「グゴォ?」
その歩みは、直ぐに止まった。それどころか、後ずさりまでし始める。どうやら、俺との力の差を肌で感じとったようだ。
確かに俺は、生産職を極める為、戦闘系の能力を犠牲にしている。しかし、全く上げてない訳ではない。この異世界に、ゲームの力が有効であるなら。ゲーム、カオスフロンティアのレベルの最大値、レベル300の俺に。高々レベル47のハイオーガが、勝てる要素は皆無だ!
「て、店主?」
「・・・・ライトニングボルト!」
『ピカッ! バリバリバリィーーーー!!!』
雷光が、ハイオーガを貫いた。ハイオーガは口から煙を出し、辺りに焦げた臭いが漂った。ハイオーガは膝から崩れ、ドスンと倒れた。
ふう、何とか・・・・なったよーーー。