定休日の冒険 その2
「えーーーと、なんか簡単そうな依頼はないかな?」
現在、依頼書の貼り紙が貼ってあるボードの前にいる。取り敢えず、最初は簡単ものにしようかと思っている。
「コレなんかいいぞ」
「えっ、あっ、どうも・・・・って! ナヴィアナさん?!」
「うむ」
うむ、じゃないよ! あーー、びっくりしたぁーー!
「驚かさないで下さいよ、ナヴィアナさん」
「む、すまん? と言うより、驚いたのはこちらだが・・・・」
冒険者ギルドに顔を出したら、俺がいてびっくりしたとの事だ。
・・・・それは申し訳ない。あっ、そう言えば!
「ナヴィアナさん、覚えた魔法と、魔導具の指輪はどうです?」
「ん? うむ、問題なく使えておるぞ。店主には何とお礼を言えば・・・・」
「別にお礼何ていらないですよ。俺は商品を販売しただけですし」
「だとしてもだ。ありがとう店主」
「いえ、そんな」
ナヴィアナさんは、綺麗な笑顔を向け、俺にお礼を言った。
美人のナヴィアナさんの笑顔は、とても美しくて見惚れてしまった。
「それで店主、この依頼などよいのでは?」
「あっ、はい。どれどれ・・・・オークの群れ、三十匹の討伐・・・・・・。あの、ナヴィアナさん?」
「ん、どうした店主?」
「冒険者初日の人間が受ける依頼じゃないでしょ!、これ!」
「ん? 店主なら問題ないであろう?」
いや、問題ありまくりですから。ゲームと違い、現実何ですからここは。こっちに来てから倒したのは、ゴブリンとチンピラだけだし。・・・・無理っしょ、絶対に。
「俺はこっちの依頼でいいです」
「ふむ。しかし、薬草集めとは初心者の仕事なのだが・・・・」
「今さっき、冒険者になったばかりですけど」
「ふむ、店主がそれでいいなら・・・・依頼は、あそこの受付に持って行くんだ」
「はい、教えてくれてありがとうございます」
受付を済ませ、冒険者ギルドを出る。
さぁーて、俺の冒険が幕を開ける時が・・・・。
「・・・・・・・・何でナヴィアナさんが着いて来るんです?」
「何でと言われてもな。それは、私も一緒に行くからだが?」
「・・・・・えっ?」
「・・・・・・ん?」
何言ってるの? と互いに首を傾げる。そして沈黙の中、暫く見つめ合う。因みに、ロマンスは生まれない。こんな事で生まれてほしくもない。
えっ、何で?
「着いて来る気なんですか?」
「ダメなのか?」
「いや、ダメかと聞かれると・・・・ダメでは無いですが」
「なら、一緒に行く」
「・・・・はい、それじゃあお願いします」
「うむ。こちらこそ」
断り切れず、一緒に行く事になった。俺の初めての冒険・・・・。
まあ、右も左も分からない、初心者な訳だし。逆にいいかな。
「所で店主」
「はい、何です?」
「その格好で行くのか?」
「えっ、えっ? ・・・・あぁーー! 忘れてた」
俺の今現在の格好は、普段着だ。剣すら装備していない。
油断・・・・いや、平和ボケ? 違うな、生産職ボケか? カオスフロンティアでも、やっちゃった事ある失敗だ。何やってんの俺!
「店主? 大丈夫か」
自問自答している俺を見て、心配になったのか、ナヴィアナさんが、優しく声をかけてくれる。
「だ、大丈夫です。えーと、ほら」
「なっ! 何をした店主!」
俺が装備一式を、魔法倉庫ことマジックハウスから取り出した。
はっ、しまった! ナヴィアナさんの目の前で出しちゃった。
どうしよう? 何て説明を・・・・そうだ! 魔法の存在する異世界ならこれでいける!
「収納魔法って言うんです。物を閉まっておける魔法です」
「魔法なのか? ・・・・こんな魔法があるのだな。使えれば、色々便利そうだな」
「はい、とても便利ですよ」
うん。ごまかせたよね。必殺の、これは魔法作戦。
「えっと、兎に角着替えないと・・・・そこの路地裏で着替えて来ます」
「あぁ、待ってる」
人の少ない路地裏へ行く。薄暗い路地裏の、積み上げられた荷物の影に隠れる。着替えるとは言ったが、ゲーム仕様で一瞬で装備を変えられる。
『ヒュン』「これでよし」
ナヴィアナさん元に戻ると「ほう、その格好・・・・似合っているな店主」と褒めてくれた。ただ、何か疑いの目も感じる。ナヴィアナさんは、何か俺の事を、怪しんでいるのは? そう思ってしまう。
「では行こうか。店主」
「はい!」
いよいよ、冒険開始だ。まあ、街の外に出て、薬草摘んで来るだけだけど。あれ? 思えば街の外に出るのって、こっち来た時以来じゃん。・・・・何だろ、何かちょっと・・・・怖くなってきたな。
「店主、行くぞー!」
「はーい、今行きまーーす!」
俺はナヴィアナさんを追いかけた。少し不安はあるが、初めての冒険に、とてもワクワクしていた。