定休日の冒険 その1
「なぁ、リィーサ」
「何です? エル店長」
「明日は店を休みにしようと思うんだが」
「えっ? 店長が休むんじゃなくて、お店自体をですか?」
「うん」
こちら来てから、三ヶ月になろうかと言う時、ふと思った。
あれ?「俺、コッチに来てから休んだっけ?」と。
忙しい毎日に、休日というものを忘れていた。
「エル店長、私が店番するので店長は休んでいいですよ」
「うーーん、それだとなんか心配で・・・・」
「ちょっと、どう言う意味ですかソレ!」
「兎に角、明日は休み! あっ、いっその事・・・・明日から七日毎に一回の定休日をもうけようかな」
「定休日・・ですか?」
「働き過ぎは良く無いしね。それに・・・・あんまり頑張ると、商人ギルドがねぇー」
「何か言ってくるんですか?」
「さあ? もしかしたらの話し」
「そう言えば、店長は何で商人ギルドに入ら無いのですか?」
「んーー、まあ何となくかな?」
「はあ」
「兎に角、明日は休み。リィーサも好きにしていいよ」
「うーーん・・・・分かりました店長。お買い物にでも行きます」
「うん」
*****
次の日、リィーサが出かけた後、俺も出かけた。向かった先は・・・何と冒険者ギルド。理由は・・・まあ、その・・冒険したくなったからだ。だって、折角異世界にいるんだから。冒険しないと損な気がした。
「着いた。冒険者ギルド」
ここから俺の冒険が!
「こんにち・・・・・・・・」怖っ!
ギルドの中に入ると、それはそれは怖い顔だらけだった。
よし! 帰ろう!
「あれ? 何でも屋の店主じゃん」
「ん?」
声をかけられたので、そちらを向くと。そこに立っていたのは、前に店に来たお客さんの「あれ? フローさん」だった。
「本当だ。何でも屋さんだ」
「リゼッタさん、どうも」
「うむ」
「こんにちは、店主さん」
「ボウスさんもリーンさんもこんにちは」
パーティー、鋼の翼の勢揃いだ。
「何で、何でも屋の店主が冒険者ギルドに?」
「えーと、冒険者登録に・・・・」
「えーー、何でも屋さんが?! 無理だよ!」
「ちょっと、失礼だよリゼッタ」
「リーンの言う通りだ。店主殿は、強い」
「強いってボウス、どう見ても何でも屋さんは・・・・弱そうだけど」
「見た目に騙される様では、リゼッタもまだまだだな」
「何ですってフロー!」
「ちょっと二人共、喧嘩は辞めて下さい」
喧嘩になりそうなので二人を止めた。俺が女性だったら、私の為に争わないで! って言う所かな? あんまり言いたくないセリフだな。
「えーと、取り敢えず登録してきます」
「何でも屋さん、登録はあっちのカウンター」
「教えてくれてありがとうございます。リゼッタさん」
リゼッタさんに教えてもらった、カウンターの場所へ。そこには、登録担当の受付嬢が座っていた。
「こんにちは、登録したいのですが?」
「・・・・はい。ではここに、名前とお住まいの住所をお願いします。それと、冒険者登録費として、銀貨一枚をお願いします」
「はい」
エ・ルと、登録費に、さて次は・・・・「次は何を?」
「・・・・現在の、あなたの力を見ます。えーと、鋼の翼の皆さんはお知り合いですか?」
「お店を経営しているのですが、そこのお客です」
「・・・・成る程。では、彼らのそうですね。フローさん、ちょっといいですか?」
「おう、いいぜ」
「もしかして、今からフローさんと闘うって事ですか?」
「・・・・はい、そうです」
「安心しな。手加減するから」
「はあ」
冒険者ギルドの裏には、訓練場があり。そこで実力を為さ事になった。
「やっちまえー」「ぶっつぶせぇー」
「何か、野蛮な声援が・・・・」
「気にするなよ店主、アイツ等暇だから騒いでるだけだから」
「はあ、でも、一人知ってる人が混ざってるんですが」
「えっ?」
「何でも屋さん! フローをボコボコにしちゃぇー!」
「・・・・リゼッタの奴」
「・・・・それでは、始めますよ」
「ほんじゃ行くぜ」
「はい、お願いします」
互いに木剣を構え、向かい合う。そして、受付嬢さんが試合開始の合図をした。
「・・・・始め!」
「おらぁぁー!」
何でフローさんが向かって来るんだよ。普通、登録する側の人間が攻めるじゃ。兎に角、躱しとこう。
「ヒョイっと」
「な、避けた! やるな店主! これならどうだ!」
今度は連続攻撃が来た。俺はそれを華麗に躱した。
「よっと、ほっと、あらよっと!」
「ぬあっ、くそ! 何で当たらないんだ!」
「何でも屋さん凄ーい!」
「はい。フローさんの攻撃を完全に見切ってます」
「言っただろ。店主は強いと」
あの、登録の為の試験を受けてるの俺なんだけど?
まあいいか。それよりも、ちゃんと体は動くな。いきなり試合と聞かされて、ちょっと緊張したけど。問題ないな。
フローさんには悪いけど、いい練習台になってくれた。
と言う事で・・・・「ほい!」
「ぐわっ!」
「・・・・そこまで! 勝者、エル!」
「本当に強かった。店主、あんた何者なんだ?」
「ただの、何でも屋の店主ですよ」
「・・・・では、こちらが冒険者証になります。無くすと、再発行にまたお金がかかるので、気をつけて下さい」
「はい」
これで俺も冒険者だ! 星が1つ掘ってあるドックタグを首にかける。何でも、星の数が多いとランクが上になるらしい。俺は1つなので、ぺーぺーの新米だ。
「おめでとう店主」
「あのフローさん、店主じゃなくてエルでお願いします。他の皆さんもそれで」
「ん、あーすまん。じゃあエル、おめでとう」
「エル、おめでとう」「おめでとうございます」「さすがだ」
「ありがとうございます」
「それで、これからどうすんだ? 何なら、俺らと依頼を受けて見るか?」
「いえ、まずは一人でやってみます」
「そうか・・・・まあ、エルなら大丈夫か」
「エル! 困った事があったら、リゼッタお姉さんに言いなさい。相談に乗ってあげる!」
「リゼッタがじゃなくてか?」
「ちょっと、どう言う意味よフロー!」
「リゼッタ、喧嘩はダメですよ」
さてと、何か依頼を受けて見るかな。ちょっとワクワクするな!