表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/68

洋服


「どうしたんですエル店長? 昨日から、ちょっとソワソワしてません?」


「いやー、何と言うか。今日、来るんだよ」


「来るって何がです?」


「来るんだ」


『カシャ』


「あっ来た」


「えっ? 今、変な音がしませんでしたか?」


『カシャ、カシャ』


「ち、近づいて来ますよ!」


『カシャ、カシャ、カシャ』


「ひっ・・・・」


『カシャ、カシャ、カシャ、カシャ』


『カランカラン』


「店主、来たぞ!」


「きゃーーーーぁあ?!」


「いらっしゃい、シェルカさん・・・・と」


「シェルカ、何で休みの日まで甲冑着てるのよ」


「いらっしゃい、リビィーさん」


 シェルカさんの後ろから、リビィーさんが現れる。


「って、店長のお知り合いですか?!」


「あぁ。こちら、役所で働いてるリビィーさん。それとリビィーさんのお友達の」


「シェルカだ。驚かせてすまないな」


「いや、驚きますよ。何で完全装備で来るんですか?」


「・・・・癖だ」


 どう言う癖だよ。


「はあーー。エル君、癖とかと違うからね」


 リビィーさんが「癖ってどう言ういいわけしてるのよ」と指摘を入れる。


 それで、納得する奴は、まあいないだろ。


「でも、何でそんな格好を?」


「えーと、それはだな・・・・」


「エル君、シェルカは何と言うか・・・その、面倒くさがりなのよ」


「はい?」


「甲冑を着れば、身だしなみや服装を気にする必要無いから・・・・」


「んー、気持ちは分からなくもないですが、だからって甲冑じゃなくても・・・・えーと、確か守護騎士でしたよね?」


「あぁ、そうだが。それがどうかしたか?」


「だったら、甲冑じゃなくても。守護騎士の制服で別にいいんじゃ

・・・・」


「はっ、確かに! それならこんな重い物着なくても!」


 ・・・・・・・・今気づいたんかい!


「はあーー、シェルカ」


 リビィーさんは頭を抱え「昔からオツムが弱いのよね」と漏らす。


 リビィーさんも大変だな。


「えーと。兎に角、店長の知り合いなんですね」


「あぁ。買い物に来ただけだよ。だから怖がらなくても平気だよ、リィーサ。まあ、好きに見て下さい。あっ後、兜は取って下さいね、それじゃあ見え無いでしょうし」


「うむ。分かった」


 シェルカさんは兜を取る。相変わらず、兜の下は美人だ。ちょっと残念な人ではあるけど。リィーサも、シェルカの顔を見て安心したようだ。あのフル装備の甲冑は、威圧感が半端ないからな。


「エル君、ここって服は置いてないの?」


 シェルカさんより先に、店内を見て回っていたリビィーさんが聞いて来た。


「ありますよ。ただ、店内に置いてないだけです」


「えっ、そうなんですか?」


 一緒に働いているリィーサが、何故か驚く。あれ? 言って無かったか? 


「でも、二階の部屋に仕舞ってあるの知ってるだろ?」


「全部、店長の物かと思ってました」


「いやいや。男もの以外にも、女性ものの洋服もあっただろ?」


「店長の趣味かと思って・・・・」


 えっ、そんな風に思われてたの?


「リィーサ・・・・そんな風に思ってたのか」


「あの、えと、そのーー・・・・少しだけ。で、でも! 店長が着るにはサイズ合わないなぁーって、ちょっと変だなーとは思ったんですよ」


「・・・・・はあーー。兎に角、あれは売り物なの。分かった、リィーサ?」


「はい」


「それで、その洋服を見せてもらえるかしら?」


「いいですけど・・・・ここに持って来るのもな。・・・・うん、よし。リィーサ、休憩中の看板出しといて」


「えっ、いいんですか?」


「あぁ、大丈夫。今お客さんは、リビィーさんとシェルカさんだけだしね。二人に、二階まで上がってもらった方が早いから」


「確かにそうですね。分かりました」


「リビィーさん、シェルカさん。こちらにどうぞ」


「「おじゃましまーす」」



 *****


「ここが、洋服を置いてる部屋です」


 二階の部屋に入ると、六畳程の広さの部屋に、びっしりと服か置いてあった。部屋自体がクローゼットとして扱われていた。


「凄ーーい。こんなにあるのね」


「ほう、見た事ない服ばかりだな」


 二人は部屋に入るなり、服を手取って物色し始める。


「店長の作る服は、変わったデザインが多いですよ」


「えっ! エル君が作っての?」


「店主自らだと!」


 おいこら! 余計な事を!


「あら、これ可愛いわね。シェルカに合いそう」


「なっそんなヒラヒラ嫌だ!」


「あっ、それ可愛いですよね」


「リィーサも、よく体に当てて鏡で見てるよな」


「えっ、店長! どうしてそれを! まさか、覗きですか!」


「違うわ! 鼻歌まじりに、ドア全開でやってれば見たくなくても目にはいるわ!」


「・・・・しゅみません」


「シェルカ、兎に角それ脱いで。エル君、試着してもいい?」


「構いませんよ。・・・・あっ、俺は部屋から出ときます。リィーサ、後お願いね」


「はい」


「別に私は構わんぞ」


「ダメに決まってるでしょ! エル君、ごめんなさい。外してもらえる?」


「はい。買う服が決まったら、言って下さい」


「えぇ、分かったわ」



 そんな会話をしてから、かれこれ三時間は経過している。女性の買い物は長いと言うが・・・・長過ぎである。三十分くらい経ったあたりから、長くなりそうので店番に戻った。


「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」


 ・・・・長いなぁーー。どんだけ掛かってるんだよ。


 天井を見つめ、ちょっと呆れていた。時たま声が聞こえて来るのだが、かなりヒートアップしているようだ。特にリビィーさんが。


「これもいいですね!」


「リビィーさん。これ何てどうです」


「それもいいわ!」


「リビィー、そろそろ・・・・」


「そうね」


 その言葉にシェルカはホッとした。かれこれ三時間も着せ替え人形状態だったからだ。しかし、そんなに甘くない。ファッションと言う名の欲望は・・。


「それじゃあシェルカ、これとそれとあれと・・・・後これも」


「リビィー! いい加減にしてぇー!」


「ちょっと、シェルカ! 逃げちゃダメよ!」


 

 その頃下の俺は・・・・。


「いつ終わるのだろうか? それを聞きたいが・・・・触らぬ神に祟りなしって言うしな。気がすむまで、放っておこうっと」


 結果、終わったのは二時間後であった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ