プロローグ
「暇だなぁーー。・・・・はあ、今日はもう、店じまいにするかな?」
店内のカウンターに、頬杖をつきながら、外を眺める。
「こっちに来てから二週間か。俺は帰れるのだろうか? ・・・・こう言う場合、無理っぽいよなぁー」
こっちに来てから? とは何か。それは何かと言うと、俺は今現在、異世界に居る。そう、あの異世界だ。魔法とか冒険とかの、あの異世界なのだ。
「どうして俺が・・・・。はあーーー」
夢のような現実に、深い溜め息が出てしまう。こちらに来てからと言うもの、何故、こうなってしまったのだろうか? と、いつも自問自答している毎日だ。
ことの始まりは・・・・いや、これが原因と呼べる物が無いので、どれがことの始まりなんだろうか?
俺は、只々、普通の生活を送っていた筈だったのに。普通の家庭に、長男として生まれ。普通の成績で、普通の高校、大学を卒業して、普通に地方公務員になった。それなのに、何故か異世界に転移させられた。そもそも、転移なのかコレ? 俺、若返ってるしな。
今の姿は、高校生時代の俺だ。俺、25才だったのに・・・・。
普通に生きる俺に、何で摩訶不思議な大冒険がやって来るんだか。親父とお袋、元気してるかな? 妹と弟、今頃どうしてるんだろう?
「・・・・もしかして、やっぱり、原因はゲームなのか?」
普通な人生の俺が、唯一ハマったゲーム。フルダイブオンラインゲーム、カオスフロンティア2045。西暦2040年に、フルダイブゲームが実現して大人気に。その中でも、カオスフロンティアは、世界ユーザー五千万人を超える大ヒットゲームだった。
友人に勧められて始めたが、それまでゲームに興味無かった俺が、もろにハマってしまった。ハマりまくった結果、カオスフロンティア内では、俺はちょっとした有名人になっていた。
めちゃ強とかで、有名になった訳じゃない。最高の生産職として、有名人になっていた。
カオスフロンティア内では、エルと名乗っていた。因みに、本名だ。宝生エル、何でエル? と思った方、親に聞いてくれ! 弟と妹は、涼介と春香で、普通の名前なのに・・何故俺だけ・・・・まあ、それは置いておこう。
仕事から帰宅して、風呂入って、夕飯とビール。そして、カオスフロンティアと。いつものローテーションで過ごし。零時が回る前に寝る。いつもこなしている、俺にとって普通の一日だった・・筈なのに・・・・目を覚ますと異世界。即ち、ここに居た。
しかも、ゲームカオスフロンティアの力を持って・・・・。
途方に暮れながら、魔物蠢く森を抜け、道に出た所で、お爺さんが魔物に襲われていた。相手はゴブリン三体。助けないと精神で、勝手に体が動き、気づけば勝利。命を救われたお礼にと、お爺さんに、今居るお店を譲り受けた。
ただ、この店には問題がある。客がこねぇー! 店を開店してから一週間。来た客の数、片手で数えられる人数しか、来店してない。
「はあーー。・・・・今日は店じまいにしよう」
俺の異世界生活は、始まったばかり。