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2の1.ALS○K総動員でお願いします。



「どうも今年の1年生は風紀と服装に乱れがある。1年生にはマナー研修をする必要があるかもしれませんね。」



 秋人が眼鏡をクイッと指で上げながら言った。


 大学生にもなって、風紀うんぬんってどうなの?と思うところはあるが、実は学校教育で一番乱れるのがこの大学時代。


 高校までは制服だったが、大学からは私服。それぞれ自分の嗜好を一番に表現できるのが服装だ。



 私は大学2年生になった。


 秋人と私は相変わらず風紀委員をやっていて、今の風紀委員長は大学3年生の人が務めている。


 琉生も風紀委員に入りたがっていたけれど、高校時代の悪行から、委員会に入るのを拒否されてしまった。


 蓮見先輩は、大学祭実行委員に入って、相変わらず充実した学生生活を送っている。



 今年入ってきた心陽君の世代である1年生は、確かに服装が少し奇抜だ。


 庶民である心陽君は、そもそも服にお金をかけることが出来ない。親戚の叔父さんからもらった服を着ているとのことだが、その格好がセレブ校らしからぬ、ストリート系なのだ。


 それに触発された周りの1年生も派手になっていった、というわけだ。




「しかも最近では合同コンパを斡旋している同好会もあるとか.....1年生だけでなく、他の学年も利用しているらしいですよ。」



 3年生の生徒が風紀委員長に向けていうと、気のせいか、秋人がゴクリと喉を鳴らした。


 バカ言ってんじゃないよ、合コンぐらい許してやれよって声が聞こえてきそうだが、実は合コン斡旋には私も反対だ。



 狼贅学園の生徒のほとんどが、親に決められた結婚相手と生涯を共にする。それが皆分かっているから、学生時代に恋愛を求めるのだろう。


 なら、男同士でちゃっちゃと恋愛すればいいと思う。合コンなんて行ったらただの男女の出会いになってしまうじゃないか....!


 合コン斡旋同好会の息の根を止めないと、私はこのままBLを目の当たりにすることなく卒業してしまう。


 

 私はバンッと音を鳴らし机に手をつくと、立ち上がって言った。



「合コン斡旋同好会を壊滅させましょう!」



 いつになくヤル気の私に、その場が一瞬シーンとなるも、風紀委員長が「....あ、ああ。そうだな。」と少しどもりながら青白い顔で言った。


 ───ああ、風紀委員長、合コンしたんだな.....。



 そこでツッコミを入れるほど嫌な女ではない私は、委員長の「じゃ、じゃあ今日の風紀委員会は終わりだ」の合図ですぐにその場を離れようと教室を出た。



 でも当然のように秋人は私の後をついてくる。



 高校3年の時、秋人と私はクラスが離ればなれになった。教師にクラスを一緒にしてもらうよう直談判しに行くという秋人を止めるのは大変だった。


 1年間クラスが離れただけなのに、大学に入ると鬱陶しいくらい後をついてくるようになった。


 RPGか。ひたすら主人公の後を縦一列についてくる仲間。



 履修科目を選択する時、秋人と授業が被らないようにと素早く教務課に提出したのに、なぜか見事全部授業が被った。



 隣の席に荷物を置けば、荷物をどかして隣に座る図々しさ。


 「俺が朱南を守りますから」と綺麗事を言われても、ただのストーカーにしか思えない。



 やっと秋人から離れられるのは寮に帰った時だけ。


 それでもラインの量は、私が返さなくても、毎日20通送ってくる。性格がきっちりしているせいか、なぜか決まって1日20通、因みに私がメッセージを返せば50通になる。


  

 でも一番怖いのは電話だ。


 秋人は高校の頃から、朝のモーニングコールと、寝る前のおやすみコールを欠かさずかけてきていた。


 高校の頃は、毎日同じ時間に授業が始まるから良かったが、今は2限から始まる授業もあれば、お昼からの時だってある。


 それなのに、大学に入っても変わらず7時半にモーニングコール、22時におやすみコール。


 あまりにウザくなって、それを無視した時はほんとヤバかった。



 朝9時に目が覚めると、なんと着信履歴が2405回。



 目を疑った。秋人が2405回、着信ボタンをタップしていたことを考えると、スマホ画面の手汗汚れが半端じゃないと思う。


 何かあったのかと慌てて電話をかけると、いつもの優しい秋人の声で、こう言った。



「朱南にはずっと俺がついてますから、安心して。」



 とても2405回かけてきたとは思えない柔らかい口調で、自分の腕に鳥肌が立ったのを覚えている。


 でもそれより怖かったのはその後。



「っあ、ご、ごめんね、秋人....わ、私昨日早くに寝ちゃってたみたいで....気付かなくて....」


「ああ、大丈夫。朱南の声が聞けただけで俺は満足ですから。」


「っ!」



 思わず部屋の扉を見た。


 秋人の声が、部屋の外から聞こえたのだ。



 ど、どうしよう....


 今秋人は、部屋のすぐ外にいる....。


 気付いていないふりしてこのまま電話を切るべきか.....うん、扉を開けて部屋に入ってこられても怖いから、気付いていないふりしよう....



 でもスマホから聞こえた秋人の言葉は、さらに恐怖を煽るものだった。



「昨日の夜から誰もこの部屋には来ていないから、安心して。」



 ────安心できない。


 安心できないって、ALS○Kに言っといて秋人。



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