ヒロインちゃんは諦めない!?
空の隣の自室に入った瑠璃は、拒絶するように扉を閉める空を見て、少し哀しい顔をする。
「馴れ馴れしずきたかな?」
瑠璃も自室に戻りながら、仲が良さそうにしていた空と空の母を思い出した。
「家族が嫌いっていうわけでは無さそうだけど・・・・。はぁ、人付き合いって本当に難し」
瑠璃は自分のベッドに寝っ転がり、父が再婚を報告してきた時のことを思い出す。
当然のように拒絶した。
母が亡くなったばかりの時だったから、コロコロ女を変える男に見えて何日か口を聞かなかった。
空は今、こういう状態なのだろうか。
あの時の半端、瑠璃は根負けで再婚を認めた。
瑠璃の人生を変えたと言っても過言ではない『マジカル☆ファンタズマ』という乙女ゲームの完全解説本を手に取り、目次から『悪役令嬢 アイ』のページを開く。
そこには、小さい頃から努力家で根気よく慈愛に満ち溢れ、一時的とはいえど王子様の心を掻っ攫ったまでに至った少女の過去と真実が綴られていた。
瑠璃は最初、主人公をいじめるアイが嫌いだった。
しかし、この少女の切なくたくましく、格好いい物語を読んでいくうちに
瑠璃は、重度のアイ☆ファンになっていた。
人の心は変えられる。そう学ばしてくれたこの少女の一枚絵を眺める。
「よし、私もアイちゃんみたいに根気よく行こう!」
瑠璃はそう決意した。
この声が隣に聞こえているとも知らずに・・・・・・・