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悪役令嬢は現代世界に転移する!?  作者: リンリン
ボランティア部⁉︎
34/40

主人公は救われる?!


 風と相川が入ってから10分経ったところで

空と瑠璃は、校舎の中へとはいる。


 夜光のみが入ってくる廊下を歩く。


 静かすぎて、本当にいそうな空気を出していた。

しかし、空と瑠璃は当然のように普通に歩く。


「ドキドキするねー。私、こういうの初めてだから」

「呪われるケースもあるらしいぞ」

「え、まぢ?」


 瑠璃は平気そうな顔をしていた。


「学校の七不思議って知ってる?」

「聞いたことある程度だな」

「一つ目、夕暮れにこっくりさんに尋ねるとなんでも答えてくれる。二つ目、理科室の人体模型が動き始める」


 空は落ちている内臓の模型を見つけて、瑠璃を見る。

 瑠璃は内臓の模型を見ても、平気な様子で続ける。


「三つ目、誰もいないはずの音楽室からピアノが聞こえる」


 音楽室から、ピアノの音が鳴り響く。

それでも尚、瑠璃は笑顔を崩さない。


「四つ目、突然水道から水が溢れ出す」


 突然水道から水が溢れ出した。

それでも尚、瑠璃は笑顔を崩さない。


「五つ目、下駄箱の横にある絵が笑う」


 下駄箱の方から大きな笑い声が聞こえて来る。

それでも尚、瑠璃は笑顔を崩さない。


「六つ目、トイレの花子さん」


 女子トイレの方からドアが叩かれる音が鳴り響く。

それでも尚、以下略)


「7つ目、何故か鳴るチャイム」


 チャイムが不気味な音を立てて鳴る。

以下略)


「なんで、そんな平気でいられるんだ?」

「え、空。怖いの?」


 ニヤニヤとした顔で瑠璃が空の青い顔を覗く。


「怖いのかー。可愛い可愛い弟の為にいい事を教えてあげよう」


 自信満々に瑠璃は胸を張る。


「これね、全部、教師陣側のタネも仕掛けもあるトリックなんだよ。そこを通ると音楽室にあるピアノを録音したラジオが流れる」


 瑠璃が指を刺すと、たしかにそこにはカメラらしきものがあった。


「まぁ、他もおんなじようなものよ。内臓は理科の先生がわざわざ置いていることぐらいね」

「どうしてまた」

「帰らない生徒が多かったらしいよ? 私は、先生にネタバレされたから全部知ってるけど、今の空のように普通怖がるからね。これのおかげだし、これで残る生徒も減ったらしいよー?」


 空は、胸を撫で下ろし歩く。

それをみて、瑠璃は微笑む。


 それのおかげで、肝試しムードはなくなり、空と瑠璃は今日のことを振り返っていた。


「俺、レジャーシートだけであんなに馬鹿やれるとは思わなかった」

「ねー。必死だったよー。みんなびっくりしてたもん」

「だろうな」


 祭りの後の静けさのような淋しいものを噛み締めながら2人は歩く。


「星綺麗だったねー。お菓子も美味しかった」

「相川がキノコ派だとは思わなかったな」

「本当ね! 相容れないかもしれないわー」

「俺はキノコの方が好き」

「嘘! アレの強み、チョコが多いだけじゃん」

「それがいい」


 雑談に話が盛り上がる。

その声が廊下に響き渡っていた。


「はぁー。何はともかく楽しかったねー」

「ああ」


 空は流れに乗って自らに発破をかけ、聞く。


「さっき言ってた話したい事ってなんだ?」


 沈黙が流れる。

ただ足音だけが廊下に響き渡り、緊張が走った。


 神妙な趣きの瑠璃は空を見つめる。


 手を少しだけ大きく振りながら、瑠璃は歩いた。

神妙な顔を崩して、苦笑しながら、俯く。


 瑠璃は少し恥ずかしがっているようで、

少し間が開く。


 覚悟を決める為、瑠璃は自分の行動を改めて、見直す。

 空の虚偽の過去は確かに軽蔑に値した。

だが、瑠璃はこれまでの空を見てきて、そんな事をするような人間には見えない。


 変わったのかもしれない。

それを自分が掘り返して、空を傷つけてしまった。


 贖罪を胸に瑠璃は夜に照らされ、ゆらゆらと揺れる影を踏みつけて真剣な顔で、空の方を見る。


「まずは、ごめんなさい」


「・・・・・なんで、義姉さんが謝る?」


「そうなのです。私は姉なのです」


 そう自分で言い聞かせるように見える瑠璃に、そらは少し困惑する。


「家族は支え合うものです」


 少しまだ恥ずかしがっているのか敬語口調になった瑠璃を空は見つめながら、ついて行く。


「家族はなにがあっても信頼し合うものです」


 窓の縁も相まって牢屋の中の様に見える廊下をひたすらに歩く。


「家族は愛し合うものです」


 夜光の水色が当たる瑠璃は空の方向に振り返り、止まる。


「家族全てがそうとは限らないけど、少なくとも私はそういう家族になりたい」


 瑠璃は手を離し、空の顔をガシリと掴んで無邪気に笑い、空の顔を見つめ、表情を変える。


「私はそう思ってたのに、一番最初に破った。だから、ごめんなさい」


「何も知らない人を信じれないのは当たり前だし、仕方ないと思うぞ」


「知らないは免罪符じゃないよ。私は確かに空を傷つけた。だから、仕方なくなんてない」


 瑠璃は真剣な眼差しで空に焦点を合わせる。


「私は空を少しは知れたつもりだし、少しは見れた」


 空はその表情を決して忘れることはないだろう。

瑠璃は空を離して、再び歩き始める。


「昔とか今後とか関係ないよね。一番大事なのは今だもん。私、何を考えてたんだろーね」


 空は何も言えなかった。


「だから、空の言うことを一番最初に信じるし、いつでも空の味方になるよ」


 空はその言葉が昔、父に言われた言葉に重なる。

 溢れそうになる涙を乾かしながら救われた気分になっていた。

 それで救われていれば簡単なのに、捻くれた自分に嫌気が刺す。


 空はひたすら視界をクリアにしようとするが、ぼやけるばかりで何も見えない。


 本当に自分が憎かった。




 6月23日

綺麗。その一言で現すには勿体ないと思えるほどの、星空、友人、家族。もう悔いはないと思えるほどの、貴重な体験だった。


 空はそう書いて、みんなの写っている一枚の写真を貼った。

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