主人公は強制される!?
空は昨日休んでいたことと、アイを一緒に探したことも相まって、クラスメイトとの距離は縮んでおり、気軽に話しかけてくる。
渾名が"家出少年"になったこと以外は特にデメリットはなかったが、人が多すぎて空は少し疲れていた。
しかし、それに終始が打たれる。
「座れー。HR始めるぞー」
連絡事項を軽く伝えると、号令とともにHRの終了が告げられる。
「白柳 空。教材が届いた。取りに来い」
空は言われるがままに教材をもらい、その重さによろめきながら座席に戻ろうとした。
すると、一瞬だけ茶色い髪が見える。
教材をどかすと、目線の先にはチビギャル相川がいた。
「持ってくの手伝うよ」
「いや、近いからいいよ」
「私も近いから」
そういう意味ではないが、相川もそれはわかっていらはずだ。
空は、少し屈んで相川に教材を持ってもらう。
少量の教材だけで、相川はよろめいているので、空は少し心配しながら、座席に戻った。
「ありがとう」
「どーいたしまして」
そう相川が笑うと、空は失礼ながら相川がトイプードルのように見えて、頭を撫でようとしてしまった。
しかし、途中で自分が何をしようとしているのかに気づき手を引っ込める。
そんな空に対して、相川は口を開いた。
「じゃー、お返しして」
「はい?」
予想外の言葉が返ってくる。
「ここに署名するだけでいいから」
入部届だった。
部の名前は、ボランティア部と書いてあった。
「詐欺だろもう」
「お返しは大事だよ」
「俺は帰宅部予定だから」
空は、相川から視線を外し拒否する。
しかし、相川はニヤリと笑っていた。
「うちの学校、帰宅部ダメなんだよ?」
「・・・・・・まじ?」
「まじ」
空は少し考える。
しかし、相川はボソリと呟くように空の欲しい言葉の"基本自由参加"と提案されて、渋々、署名する
「ありがとー」
相川は満足そうに席へと戻っていった。
いっぱい食わされたなと思いつつ、空はため息を吐きながら前を向くと
今度は、ニヤける担任の顔が空の目に写った。
それと同時にチャイムが鳴る。
なり終わるとと共に、号令をした。
皆が着席すると、いつもダルそうな担任は教卓をバンッと叩いた。
「小説創作の時間だ!!」
皆、いつもテンションの低い担任からは想像できないような声と発言にポカンとしながら担任の話を聞く。
ただ一人、空だけは頭を抱えていた。
(やりやがった! ガチで小説書かせに来やがった)
言い分よれば、自分も物語を書く作家になってみれば、国語の成績も上がるとのこと。
そして、書いたものは担任にしか行かないようで、誰かに見られる心配はないから、自分の好きなように書けとのこと。
空にとっては、後者が1番の難題なのだが転校してきたばかりの一生徒が教師に逆らえるはずもなく、
貰った何枚かのプリントを渋々貰った。
ここの学校の人、強引すぎる
そう思った瞬間だった。




