悪役令嬢は料理する!?
「夢か」
空はソファから体を持ち上げる。
(重たい)
額に冷たい感触がすると思ったら、濡れたタオルが額から落ちてきた。
空は首を傾げて、立ち上がる。
すると、身体が異様にふらつき、吐き気を催した。
(風邪か)
親はいない。
どうしようか悩んでいると、ドアがガチャリと開く。
「誰?」
「アイです」
アイは瑠璃の一枚のシャツを借りて着ていたため、一瞬誰だか、わからなかった。
「風邪は大丈夫ですか?」
「やばぞう」
「すみません。風邪で回復魔法はあまり推奨されていなくて」
「大丈夫。まぼうはあんまりづがわないで」
「昨日、思い知りました」
アイは、昨日の気絶した瑠璃を思い出しながら、タオルを変える
「では、後のことは任せて、寝ていてください」
アイはそう言って、冷蔵庫を開いて何かのメモを開いて見ている。
空はそんなアイから目を離して、時計を見ると時計の針は3時を刺していた。
(結構寝ていたな。アイは留守番してたってところか)
空は携帯を取り出し、電源をつけようとするが、画面が暗いままで何も変わらない。
空は首を傾げるが、段々意識が鮮明になっていく。
全てを思い出した上で、全てを忘れたかった。
風邪になった理由大体察しがつく。
被せてくれたのであろう布団に蹲った。
そんな空をアイは首を傾げてみていたが、メモに目を移して、エプロンを腰に巻く。
瑠璃は学校なため、家にはいない。
だから、瑠璃は土下座して空の看病をアイに頼んだ。
土下座されなくても元々、看病する気満々だったアイは快く承諾した上で、土下座を止めさせようとするが瑠璃は頑なに顔を上げない。
その理由は、尊い? かららしい。
瑠璃はアイにすることを教えると遅刻ギリギリだったため、走って学校へと行ってしまった。
その様子を思い出しながらアイは、長く白い髪をたくしあげて一つに結ぶ。
「よし!」
瑠璃からもらったメモに書いてある『お粥のレシピ(簡単)』を片手に取り、内容を再び確認しながら、調理器具を出していく。
・米を炊く
(お米の研ぎ方は、教わった!)
アイは、嬉しそうに髪をしっぽのように揺らしながら、米を研ぐ
(洗剤は・・・・・・・・・・・・・・必要だった気がする!)
アイは、瑠璃に言われたことを思い出しながら、調理していく。
・お湯を作って、米ごと鍋の中に入れる
アイはお湯を入れて、るんるんと待っていた。
沸騰音に驚いて、椅子から転げ落ちた事は誰にも言うつもりはない。
・卵を入れる
(瑠璃に電子レンジという簡単に調理できる機材があると聞いた気がする!)
アイは、卵を電子レンジに入れてスイッチを押す。
まぁ、言わずもがな。
(卵は諦めますか)
アイは爆発した電子レンジの中を拭いていると、焦げ臭い匂いが漂った。
火をつけたまま、お粥を放置していたのだ。
お粥の下の方には焦げがへばりついていた。
(勿体ない。この黒いの多分食べれるよね?)
そう思って、アイは空の目の前にお粥(毒)を置いて瑠璃の部屋へと戻っていた。
これは余談だが、何故か空の体調は悪化した。
最終的に回復魔法で治したらしい。




