悪役令嬢は恐怖する!?
瑠璃はどこかに電話をした後
質問攻めをしていた。
アイはそれに少し困っていた。
まず、推し? という好きな人を聞かれた。
その次に、スリーサイズ。
再現度がすごいと言われたがなんのことだかは分からなかった。
そして、奇妙な事にアイが経験した事についてを問題として出された。
アイは、一応有名人ではあるが人気はない。
貴族で人気のある者など片手で数えるほどしか存在しないからである。
ストーカーの線も考えたが、相手は女子である。
元いた世界ではレズビアンの文化はなかったため、かなりの困惑を深めた。
「最高だよねー。『マジカル☆ファンタズマ』。アイちゃんサイコー」
瑠璃は満面の笑みを作って、喋る。
そして、はあはあと性的な目でアイを見た。
それがアイの背中をゾクりと震わす。
アイは慌てて、話を逸らそうと口を開いた。
「そ、空とは、どういうご関係なんですか?」
「敬語はやめてよー。・・・まぁ、家族だよ?」
「顔が似てないし、あまり仲がよろしくないよう・・・・・・ね」
アイは出そうになった敬語を仕舞い込んで聞く。
継承争いと言うものがあるため、兄弟仲の悪いのは当たり前。
アイにとってはそうだったが、それは貴族に限っての話。
いい所に家を建てているが貴族には見えなかった。
アイは平民の兄弟愛をよく知っていたし、憧れていたため、不自然に見える。
「あー、ね。まぁ詳しくは言えないんだけど、とある理由で今、喧嘩? というか、私が一方的に避けてる・・・・・・の」
瑠璃は、少しだけ苦しそうな顔をしていたので、アイは首を傾げる。
「苦しいの?」
「そ、そんなわけないじゃん? でも、私はどうしても許せなくて・・・・・・」
その様子を見て、アイは空が過ちを犯してしまったのだろうと悟った。
兄弟仲が良くて損はない。
元の世界にいる弟を思い出した。
アイは、今あったばかりの瑠璃と空の仲を取り戻させようと、アイは自分の過去を振り返る。
アイは、目を閉じてあの時のことを思い出す。
過去の過ちで責められ、どうしようもなかったあの時を
しかし、アイは青い顔でゾッと震えてしまう。
「大丈夫?」
「いえ、なんでもありま・・・・・・ないよ」
瑠璃はアイの背中をさする。
アイは、少し落ち着き、唱える。
「●●●●●●、●●●●●●●●●●」
緑色の粉が舞い散るとそれは小さな愛らしい妖精を形成した。
その妖精は、アイの周りを飛び散り翅の鱗粉を落とす。
そして、少しアイを眺めてからその妖精は笑顔になり、アイに抱きつくと共に消えてしまう。
アイは、まだあの出来事を過去として認識するにはまだ早かったようだ。
あの軽蔑の目、嫌悪の目、それを思い出すとどうしようもなく震えてしまう。
アイは、空のことをまだ何も知らない。
その目をどうか、溺れる自分を助けてくれて居候までさせてくれた恩人である空に、他の人にあんな想いはして欲しくなかった。
しかし、人を諭す前にアイ自身がまだ傷ついていては意味がない。
それにアイはよくよく考えてみたら、瑠璃が何について怒っているのかもわからないのに、何を諭そうとしていたのか、赤の他人が知った風な口を聴こうとしていたことに恥をかき、自分に悪態をつく。
周りが全く見えていなかった。
自分が情けなくて仕方がない。
「はぁ」
魔法によって、落ち着いたアイは瑠璃を見ると真っ青な顔でアイを指差していた。
「ほ、本物?」
「アイ本人で・・・・・・だよ?」
瑠璃は気絶した。




