3話
この後あらためてサリスさんに紹介してもらった。近くで見る彼女は相当な美人だった。つい胸の辺りも見てしまったが、胸は大きくないらしい・・・笑顔が素敵な、娼婦にはまったく見えない女性だった。気になったのは何故かステップさんの視線が私に・・・・・にらんでる??
家に入る前にたらいで足を洗うように言われ裸足であったのをやっと気づいた。夢だと思うとなんでも平気だなこりゃ。全然気にならなかった自分に笑える。
家に入るとリビングとキッチンがあり、すぐ隣の治療室に連れていかれた。
患者の入り口は別にあるのがわかる。
細いベッドがあり、そこにTシャツを脱いで座らされた。
「ケガはないみたいだなぁ。」
肩の関節を揉まれたり腕を回されたり痛い箇所を聞かれたり、体術師というのはどうも整体師の事みたいだと思った。結果サイクスさんに言われたのは
「これは肩を使いすぎたり、歳とるとなるやつだな」
知ってたよ!五十肩って言うんだよ!!と内心思いながら、マッサージは気持良かった。
只サイクスさんの私への疑惑は深まっていったようだ。
なぜ御神木の下で倒れていたのか・・・・・・とか思ってるんだろうなぁ。
コンコン
リビングと治療室を結ぶドアが叩かれたと同時にサリスさんがドアを開け
「兄さん朝ご飯できてるわよ。冷めないうちに早くね。」
「おっ おーわかった」
どうもサイクスさんはシスコンらしい顔がデレている。そして壁際の椅子に座っているステップさんも・・・お前もかぁ
「じゃあ朝飯にしよう
治療は午後の休憩時間にやってあげるから」
と言われ私もTシャツを着てリビングに向かった。
テーブルの中央には、バターロールの様なパンが籠の中に山盛りになっていて、5人分の目玉焼きとソーセージが1人づつお皿に盛られて用意されていた。
ものすごく、いい匂いで食欲をそそる。サリスさんが今運んでいるスープもたまらない感じだ。
匂いをかいでお腹が鳴る。よくできた夢だ。足元がふわふわと軽いので夢に間違いないのだが、
こんな大勢でご飯を食べるのも久しぶりだな。
各々椅子に座り全員で
「いただきます」
と手を合掌して食べ始める。なんだか日本ぽい
私はバターロールを一つ取ってスープにダンクしてパンを味わう。
うまい!!
スープは少し乳臭いが、こんなクリームシチューの様なスープは食べたことがない。
パンも焼きたてのように外がカリッと中ふんわりだ。
「うまいだろ!サリスのスープは絶品だ。」
どうも つい口に出して、うまいと言ってしまっていたようで、サイクスさんが私にむかって
ドヤ顔をしていた。
「本当においしいです。」
夢中になって朝食をたいらげた後
「ごちそうさまでした」
と合掌して各自食器を洗い場まで片づけていた。その後紅茶をだしてくれて味わいながら飲んでいると、サイクスさんが
「この後、診療所を開くので見学するなり散歩するなりしていてもらってかまわないから」
と話しかけられサリスさんがその恰好じゃなんだからとサイクスさんの服とズボンと靴を貸してくれた。
着替えてから、とりあえず暇なので、診療所を見学する事にした。
ステップさんは他に仕事があるらしく出掛けていき、アツシ君はリビングにあるソファーでくつろいでいる。
庭から診療所への入り口には患者さんが、すでに3人並んで開くのを待っていた。
サイクスさんの治療はやはり整体みたいな感じで、サリスさんの治療はキズに手をあてている。
2人の手からは少し光を発していてアニメのようだ。
私は不思議な顔をして見ていたのだろう。
患者さんがいなくなった時にサイクスさんに
「なんだ診療所は初めてか?」
と言われ説明をしてもらった。それによると
サイクスさんのは体術と言い、人の体を理解し正常な形に戻していくもので、神経や血管も回復させる効果があるのだとか、サリスさんのは水術と言いキズをふさいだり血行をよくしたり、いわゆる新陳代謝を加速的にあげる効果があるのだとか・・・・人の体の60%は水分だからかな?となんとなく理解しようとしてみる。
この世界には生まれつき適正を持って生まれてくる者がいるそうで、サイクスさんは体術と大気術が使えるのだとか。サリスさんは水術と少し体術が使えるらしい。
もっと話を聞いてみたかったが、患者さんが来て忙しくなったので散歩でもしようかとリビングに行ったらアツシ君が目覚めたらしくソファーの上で伸びをしていた。
「オッサン何処行くんだ」
と声をかけられたので
「散歩でも」
と返してみたら
「じゃあ俺がカヤスの村を案内してやるよ」
と名乗り出てくれた。
門のあった入り口とは逆の方角に行くと田畑や家畜小屋などがあり、田んぼまであった。米あるのかな?一番奥には山というか丘のような物が見えた。
歩きながら気になっていたので、適正の事を聞いてみたら
「オッサンなんもしらねえんだな。その歳になるまでいったい何してたんだよ」
とあきれられ
「じゃあ一通り教えてやっから、ありがたく聞けよ」
「よろしくお願いします師匠」
とおだててみた。