父との関係
「…さま、お嬢様。シエナお嬢様。」
私を呼ぶ声が聞こえて私は目を覚ます。
頬が濡れている。
あぁ、私、泣いていたのね。
「ジュリア、私、お父様からもライリー様からも愛されていなかったのね。」
ジュリアが何も言わず私を抱きしめてくれる。痛いくらいに。
私にはジュリアがいるわ。ジュリアに大丈夫よと言葉を伝える。しばらくして夕食を食べる頃に父は帰宅し、私の部屋にやってきた。
「シエナ、記憶は大分取り戻したのか。」
「いえ、まだ半分程度、ですわ。」
「そうか。」
「しかし、私はお父様や陛下にとって都合のいい存在、自分達の物事を進める人形の一つである事は理解しました。
年に一度会うかどうかの家族の為に無理に邸に戻って来なくても良いですわ。私が邪魔なのでしたら修道院へ向かいますわ。」
私の刺すような言葉に父は一瞬だが目を見開く。
「シエナ、すまなかった。私はお前の母が亡くなり、仕事に逃げた。シエナと会わない間に大事な娘、お前を1人の人間としてではなく物のように考えるようになってしまった。
そしてそのような扱いもしてしまった。シエナが頼ってくれた時、私はお前のせいだと責めた。今でも後悔をしている。
修道院へ行かなくていい。私の後を継いでいつまでも領地で過ごしておくれ。」
私は驚いていた。表情には出さないけれど。私を捨てたと思っていた父からの後悔の言葉。母が亡くなり、支えてくれた使用人達。
いつも居ない父。
今更だと思う。
本当に今更。
けれど血の繋がった父。
「お父様。謝って欲しい訳ではありませんわ。家族ですもの。仕方がない事もありますわ。」
今の私はこれ以上何も言う事は出来なかった。父は暗い表情をしていたが、私を心配しているのだと分かる。
私を、心配してくれている。
私の父との距離はまだ離れているけれど、これを機に少しずつ距離が縮まると良いなと願わずにはいられない。