陛下への報告
「シエナを襲った犯人のその後はどうだ。」
「はい。自白魔法により吐かせていますが、どうやらグリフィス公爵の手の者のようです。シエナ様亡き後、グレース嬢を正妃にするように動いています。」
「そうか。引き続き頼む。容赦はしなくていい。」
そう言い残し、尋問室から出る。シエナを害する奴は死より重い物がいい。正妃?側妃?シエナ以外触るのも御免だ。
クロエは処刑となったが、今でもアイツは研究室対象者として北の牢へ送り、生涯実験体にすれば良かったとさえ思っているのに。
沸々と湧く感情を表に出さないように陛下の執務室に入る。
「陛下、只今戻りました。」
「シエナの様子はどうだった。一応報告はきているがな。」
「呪いと毒については同乗していた魔法使いにより回復しております。腕の怪我についても治療師により傷跡も残らず回復しています。
問題は王宮に関する全ての記憶が欠落している事です。シエナを追い詰め過ぎた結果なのだと思います。
今回の襲撃の件に関してはグリフィス公爵の配下のようです。シエナを殺害し、娘を正妃とさせるために。」
握った拳に力が入る。
「陛下、俺はクロエの件で王太子に相応しくありません。コニーを王太子にお願いします。モリス公爵とも話をしました。
俺は臣下に降りてモリス公爵家へ入ります。例えシエナの記憶が欠落したままであろうとも、記憶を取り戻し、嫌われようともシエナと生涯を共に添い遂げます。」
「そうか。分かった。シエナには無理をさせた。お前の好きなようにするがよい。ただ、今回の襲撃の件、コニーにも降りかかる可能性がある。お前がしっかり対応しろ。」
「分かりました。」
一礼し部屋を出る。
ようやくシエナと一緒に過ごせる。俺はそう思うだけで心が軽くなった。
早く始末しないとな。