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王子妃の失った記憶の先に  作者: まるねこ


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長い記憶の夢から醒めました

私は目を覚ました。


長い記憶の夢。


どれくらい寝ていたのだろう。


起きあがろうと動いてみるけれど、身体が重い。パサリと落ちた肌掛けでジュリアは気付いた。


「お嬢様?シエナお嬢様が目を覚ましたわ!」


ジュリアが泣いている。


「ジュリアは泣き虫ね。いつも私の事で泣いているもの。」


微笑むとまたジュリアから大粒の涙が流れていた。私はどうやら2週間程寝ていたみたい。ジュリアがすぐにカレブに伝えると、しばらくして父と治療師が部屋に入ってきた。


「身体はずっと寝ていたから体力が落ちています。けれど、少しずつ身体を動かしていけば大丈夫ですよ。長年の毒で弱ってはいるから無理な運動は気をつけるようにして下さい。」


私、王宮で毒を盛られていたのね。寝込むようになったのはそのせいだったのね。私が驚いた顔をしていたようで治療師は言葉を続ける。


「襲撃時の解毒魔法で毒は身体に残っていないから大丈夫。記憶の方はどうですか。」


「全て思い出せたと思います。」


「そうですか。体調に変化があったらすぐに連絡を下さい。では私はこれで。」


そう言って治療師は帰っていった。


「シエナ、大丈夫か。辛かっただろう。」


父は心配して声を掛けてくれる。


「お父様。私、全て思い出しましたわ。もう、大丈夫です。私、王宮で毒を盛られていたのですね。」


「あぁ。その事についてなのだが落ち着いてから話をした方が良いだろうか。」


「いえ、お父様。今で構いませんわ。」


「そうか。それなら今話をしよう。私からでは無い方がいい。しばらく待っていなさい。」


父はそう言ってライリー殿下と共に戻ってきた。ライリー殿下は私を見るとホッとしたような、不安が入り混じるような表情で私の側に座った。


「シエナ。無事で良かった。本当に心配したんだ。もう、離さない。」


ライリー殿下はそう言って私を抱きしめる。側に父もジュリアもカレブも居るというのに。恥ずかしくて顔が真っ赤になる。


「ライリー殿下。私が眠りについている間に新たな正妃と側妃は決まったのでしょうか。」


「シエナ。決まっていない。私の妃はシエナただ1人だ。どこから話そうか。私とシエナのお茶会を駄目にした側妃の噂が立った令嬢の事から話そうか。


あれはね、最初から仕組まれていたんだ。貴族達は王家と繋がりたいから側妃の話を出しやすいようにするためにね。


もちろん、倒れてきた令嬢を護衛に渡して指示し、抱き上げる事はしていないよ。シエナ以外に触れたのも嫌で仕方がなかった。


俺はあの後直ぐにシエナの後を追いかけて行こうとしていたんだ。けれど、その場に居合わせた宰相から呼び止められ、『ちょうど良かった。あの令嬢は俺の新しい側妃だ』と告げられたんだ。そしてシエナに会わせないようにされていた。


貴族達の中ではシエナを亡き者にして正妃と側妃3人を娶るように画策していた。


その中心となっていたのがグリフィス元公爵とその娘のグレースだ。


俺が貴族達の企みに気付き、急いで動いている間にシエナは療養として領地に向かってしまったんだ。


俺はシエナが襲撃され、気が気では無かった。


それなのにあの女は意気揚々と正妃になったと偽造した書類を持って俺の執務室に現れたんだ。


その場で斬り捨てたい衝動に駆られたけれど、なんとか我慢したよ。グレースはその場で取り押さえ、色々と喋ってくれた。


シエナに害を与える者を洗い出すのに時間がかかり、シエナに辛い思いばかりさせてしまった。ごめん。長期に渡ってシエナに毒を盛っていたのはメイド長だった。


あいつはモリス公爵に長年の恨みを抱えていて娘のシエナに毒を盛っていた。グレースはメイド長に正妃になったら面倒をみる約束をしていたようで俺の執務室へ引き入れ、媚薬を飲ませようとしていた。


それと宰相。俺とシエナを会わせず、仲を割くよう部下に指示をしていた。そして王印や書類の偽造。宰相はグリフィス元公爵に弱みを握られていて犯罪に加担していた。


シエナの馬車を襲撃したのもグリフィス元公爵と娘のグレースの指示だった。もちろんシエナが眠っている間に全てを片付けてきた。もう、襲撃される事はないから安心してほしい。」


「グリフィス公爵達はどうなったのでしょうか。」


私はその先が気になり、ライリー殿下に尋ねる。


「グリフィス元公爵と娘のグレースは第一王子の正妃殺害未遂で処刑となった。公爵の妻は最果ての修道院へ永遠の預けになった。


メイド長は処刑となり、宰相は情状酌量の余地もあったので10年の炭鉱送りと王都への出入り禁止。


その他にシエナに害を与えた令嬢達は皆修道院送りになった。」


「そう、ですか。」


私の眠っている間に大変な事になっていたのね。


「ライリー殿下。私は陛下に側妃の話をし、離縁を願い出ました。どうか、新たな正妃と側妃をお迎え下さい。」


ライリー殿下は泣きそうな顔をしながら私をきつく抱きしめる。


「さっきも言ったよ。俺の妃はシエナだけだと。ずっと後悔していたんだ。大好きで愛おしくて堪らないシエナを苦しませた事を。


あいつの魅了に掛かってシエナに暴言を吐いた。一杯傷付けた。魅了が解けてから後悔ばかり。


王国一幸せな花嫁になるはずのシエナを絶望させてしまった。王宮に帰ってからのシエナは俺の事を忘れてしまったようだと思った。


全て俺のせい。


だけど、無理に迫るとシエナは壊れてしまうと思い、また初めからゆっくりシエナとの時間を持とうと考えていたのに。


大切なシエナをまたなくす所だった。


もう、シエナを離したく無い。魅了の治療中からずっと考えていたんだ。


もう一度、僕と結婚して下さい。


僕は昔からシエナが大好きでシエナしか要らない。シエナと居るために王子も辞める。もちろん陛下に許可を貰っている。


今のシエナの気持ちは難しくても、ずっと僕が支えるから。


僕とこの先もずっとずっと一緒にいて欲しい。」


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