ライリーとの関係に困惑
それからの4ヶ月はライリー殿下や側近達が抜けた部分の仕事を私1人で処理する為に朝早くから夜遅くまで休みなく働いていた。
私はライリー殿下の部屋と繋がった寝室に戻る事なく、夜まで執務を行った後、執務室横の休憩室で眠り、朝にはまた仕事をする。
着飾る事も無く、ただ黙々と仕事をする。
ジュリアはずっと傍に居てくれている。とても心配しているようだけれど、私に求められているのは妃としての職務だけよ。
それに仕事をしていれば誰も何も言わないし、何も考えなくても良いもの。
ライリー殿下と側近達が治療から帰ってきた。真っ先に皆私の元へやって謝罪を述べている。
「…そう。治療が終了して良かったですね。」
彼等は陛下への挨拶をしに部屋を出る。出て行く彼等を余所に私はまた書類に目を向ける。ライリー殿下が私を見つめていた事は気付きもせず。
後からおしゃべりな文官が入って来た時に聞いたのは教会でひと月半程治療を行い、治療を終えた後のひと月は修道士見習いとして奉仕活動をしていたらしい。
残りは教会と騎士団へ往復しながら勉強、奉仕活動、基礎体力作りの再教育を行っていたみたい。魅了魔法はちゃんと解けてはいるらしい。魔法に掛かっていた頃の記憶はしっかりあるらしく、各人後悔の言葉を口にしているそうだ。
側近達は軒並み婚約破棄を宣言していたため再教育の後の婚約者探しは大変になる。唯一破棄をしなかった騎士は騎士を辞め、婚約者の家に婿入りする予定なのだそう。
私はライリー殿下と側近が帰ってきた事もあり、仕事を夜中までする事は無くなったが、相変わらず私は休憩室で寝泊まりしている。
そんな中、クロエ・パーカーの処罰が決まったらしい。王族に魅了を使用した事、不敬罪、王宮への侵入など含めて死罪となったようだ。パーカー男爵は爵位の返上。
婚約破棄された者達は国から縁談相手の選定を行い一連の事件は終了となったみたい。みたい、ようだと言った理由は全てが終わった後、報告として聞かされただけ。
当事者の私は蚊帳の外だった。
やはり私の存在は判子を押すことが出来る文官なのね。ライリー殿下とは治療が終わって以降会っていない。
会うのは何日ぶりかしら?王妃様に家族での食事は必要だと呼ばれ、一緒に食事をしたわ。普段の私の様子を文官達から陛下や王妃様に報告はされているみたい。
王妃様は私の事を特に心配されたわ。何度も何度も確認するみたいに言われたの、大丈夫?って。食事は王妃様やコニー殿下の話で和やかに終わり、私は休憩室へと戻ろうとするとライリー殿下から声を掛けられる。
「シエナ、仕事ばかりで結婚してから1日も休んでいないと聞いた。明日は仕事を休んで出かけないか。」
「すみませんライリー殿下。明日は孤児院の訪問の予定があります。」
「なら一緒に行こう。明日迎えにくるよ。」
ライリー殿下と2人で話す事自体珍しいのに一緒に出かけるなんて。
何かあったのかしら?
不思議に思いながらもジュリアに明日の準備をしてもらう。
結果として孤児院の訪問は無事に終わったわ。ライリー殿下と共に子供達と話をしたり、歌を歌い、楽しい時間を過ごせたの。書類に囲まれている私にとっての唯一の息抜きの場所。
ライリー殿下は帰りの馬車で何故か上機嫌だったわ。そしてその日以降2週間に1度の孤児院訪問にはライリー殿下が一緒に来るようになった。私と一緒になる公務を楽しみにしている、と馬車の中で話していたわ。
・・・でも、よく分からない。
ジュリアにその話をしても複雑な顔をするばかりだったもの。




