表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/76

53.決別



 王女と共に、王都に帰還したアーサー隊。


「……王女様! ご無事でなによりでございます!」


 近衛騎士団長がアーサー隊一行を迎える。団長は、既に大まかな情報を聞いていた。


 団長の顔を見ると、王女は頭を下げた。


「私のために第三近衛隊が全滅してしまいました。本当に申し訳ありません」


「いえ、王女様……彼らは騎士の務めを果たしたまでです」


 団長は穏やかな目で王女にそう言った。これまで死地をいくつもくぐりぬけてきた団長だからこそ言える一言であった。


「アーサー、よくぞ王女様を救出した」


 団長が、アーサーをねぎらう。


「いえ、今回の件は新入りのおかげであります。敵の繰り出してきた魔物、スカルデッドを倒したのも彼らです」


 アーサーはアルトたちの方を一瞥してそう答えた。

 すると団長もアルトの方を見て言った。


「そうか。今年の新人は優秀だと聞いていたが、本当によくやった」


 すると王女が言う。


「彼らがいなければ、私の命はありませんでした。この功績は勲章に値します」


「もちろん、それも当然です」


 団長がうなずく。


「さて、功績に報いるためにも、まずは状況を整理しよう。ワイロー大臣の裁判もあるからな。アーサー隊長、帰着早々だが少し話できるかな?」


「はい」


 アルトたち平隊員はそこで一度解散になった。

 建物を出て、騎士団の本部へ向かって歩き出す。



 ――だが。


 そこに突然の来訪者があった。


「――――アルト」


 声をかけてきたのは――他でもないウェルズリー公爵であった。


 アルトの心中に、怒り、失望、悲しみ……いろいろなものがごちゃまぜになった感情が現れた。


 魔法適性がないとみると、すぐさま自分を追放した男。

 ――だが、そんな元父親から飛び出したのは意外な一言であった。


「よく立派に成長したな」


 ――突然のことにアルトは驚く。


 二度とウェルズリーの名を名乗るな。そう言われた家を追い出されたあの日の、父親の顔は、アルトの脳裏に今でも焼き付いていた。

 

 だからこそ、笑いながらこちらを見る彼の顔に感情が揺さぶられた。

 そしてウェルズリー公爵は――笑みを浮かべたまま、右手を前に差し出した。


「立派に成長した今ならお前を許す。我がウェルズリー家に戻ってこい」


 実の父親から投げかけられた優しい温かい言葉。

 アルトも、きっと本心ではその言葉を待っていた時もあったのだ。


 だが、


「それはありません――ウェルズリー公爵・・


 アルトはまっすぐ、ウェルズリー公爵の目を見据えて言った。


「……なに?」


「ウェルズリーの名は、もう私には必要ありません」


 アルトは、追放されてから長い間不安を抱えていた。

 誰も信用できる仲間がおらず、ただただ毎日、おのれのスキルを磨いた。

 だから、家に帰りたい。追放されたのは間違いだと思ったときもあったのだ。

 だが、


「今、私には信じる仲間がいます。だからもうウェルズリー家の人間である必要はないのです」


 きっぱりと、アルトはそう言い切った。 


「おおお、お前ッ!! どれだけ不義理を重ねれば気が済むんだ!!」


 ウェルズリー公爵は顔を真っ赤にして言った。


 だが、それで何かが変わるわけもなかった。


「……それでは、失礼します。ウェルズリー公爵」


 アルトはそう言って踵を返した。

 そして、後ろでそのやり取りと見守っていた、リリィとミアの元へと向かう。


「……もう、あの家とは決別するんだね」


 リリィは一言、アルトの決意を追認するようにそう言った。


「ああ」


 リリィとミアは顔を見合わせて、そしてわずかに笑った。

 アルトの表情は、どこか晴れやかに見えたから――




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
「……もう、あの家とは決別するんだね」 追い出されたときに、縁は切られています。二度と顔を見せるなとも、と言ってあげて欲しい。
自ら二度と家名を名乗るなと主人公を追い出しておいて何を言っているんだかw それに王宮で再会した時も無視した癖にw
[気になる点] ミントン公爵はスルー?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ