52.打ち砕かれた野望
崩れ落ちる大竜スカルデッド。
荒い息の中で、アルトは声を絞り出す。
「か……勝った!!」
リリィとミアがアルトの元へと駆け寄ってくる。
「アルト、やった!!」
「アルトさんやりましたね!!」
二人に声をかけれられ、半信半疑だったアルトも勝利を確信した。
「ば、バカなぁ!!!!」
ワイロー大臣は最強の使い魔が倒れたことに呆然とする。
だが少しして、ようやく自身の危機を認識する。
「ええい! お前ら、なんとかしろ!」
脇にいた二人の兵士に命じるワイロー大臣。
だが、次の瞬間アルトの“ファイヤーランス”で脇の二人を吹き飛ばす。
「クソッ!! こうなったら!」
と、ワイロー大臣は懐からナイフを取り出して、目の前のシャーロットに突きつけた。
「お前ら! 動いたら王女の首が飛ぶぞ!」
だが、
「“アイスショット”!」
ミアの高速の弾丸がワイロー大臣のナイフを持っている手を撃ち抜いた。
「ぐぁああ!!!」
ナイフを落とし、倒れこむワイロー大臣。
そして次の瞬間、ミアは“アイスハンド”でワイロー大臣を縛り上げた。
アルトはシャーロットの元へと駆け寄り、縄をほどく。
「あ、アルトさん……!!」
シャーロットはアルトにそのまま抱き着いた。
「お、王女様!!」
国で二番目に偉い人間に突然抱き着かれ、うろたえるアルト。
女の子がさらわれて殺されそうになっていたのだから無理もないと思う一方、果たしてこれは不敬罪にならないのだろうかと汗が出てきた。
「……あの……とにかく無事でよかったです」
アルトは王女の背中に手を軽くおいて、そう言うのだった。
†
「なんだと!? ワイロー大臣が逮捕されただと!?」
部下からことの顛末を聞いたウェルズリー公爵は、驚きのあまり唖然とした。
公爵は、ワイロー大臣が政敵であるシャーロット王女とアーサー隊長を殺すために協力し、その見返りに大臣の座を得るはずだった。
そのために、大金をはたき、騎士時代のコネを使って用意できる最強の魔物であるスカルデッドを用意したのだ。
「(スカルデッドは、最盛期の私でも倒せるかわからないほどの魔物だぞ!!)
それがまさか倒されてしまうとは思いもしなかった。
だが、公爵を驚かせたのはそれだけではなかった。
「それが……なんでも使いの者が申すには……アルト様がスカルデッドを倒したとか……」
「なにぃ!? アルトだと!?」
追放した息子。
ノースキルのろくでなしだったはずの彼が、まさかスカルデッドを倒し王女様を助けるなど思いもよらないことだった。
「ご安心ください、公爵がワイロー大臣に協力していたことがバレるようなことはございません」
部下がそうなだめるが、ウェルズリー公爵は壁を叩いて怒鳴り散らす。
「馬鹿を言うな!例えそうでも、私がワイロー大臣に取り入っていたことは周知の事実!こうなっては大臣になれないではないか!!」
ウェルズリー公爵は、騎士として名をはせ、領地を得て富をなした。
だが、それによって得られるものは限られていた。
より大きな力を手に入れるのは、国の政治の中枢に入るしかない。
そのためにワイロー大臣と手を組んだのに、それが全て無に帰したのだ。
「おのれ……」
ウェルズリー公爵はやり場のない怒りを再び壁にぶつけた。
握りしめたこぶしの側面が壁にめり込む。
だが、少し怒った後、気が付く。
「……待てよ……」
妙案。
まさにそう呼ぶべき考えが公爵の頭に浮かんだ。
まさしく一発逆転の手立て。
これで全てが解決する。
「そうだ……何もワイロー大臣にこだわることはない! 王女様の派閥に入り込めばいいんだ!」
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