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39.ボンボーンたちの所業が全て明らかになる


 試験官のアーサーはミアたちの勝利を告げると、すぐさま倒れこんだアルトの元へと駆け寄った。


「……アルト。起きろ」


 アーサーが体をゆすると、アルトはかろうじて目を覚ます。

 それを見たアーサーは、外套からポーションの瓶を取り出し、アルトの口に含ませる。


「お前が盛られた毒の特効薬だ。飲めばすぐに楽になるぞ」 


「すみません……ありがとうございます」


 アルトが言うと、アーサーは「礼には及ばない」と返す。


 アーサーの言葉通り、アルトはすぐに自力で起き上がることができた。

 見る見るうちに生気を取り戻していく。


 ――と。


「おい試験官! そいつらは明らかにズルをしてたぞ!!」


 アーサーに対して、ボン・ボーンがそう言って食って掛かった。


「ほう? ズル、だと?」


 アーサーが聞き返す。


「アルトが倒れた後、ミアに誰かがバフをかけていた。おかしいだろ?!」


 確かに、ミアも何かの力によって自分の力が高まっているのは感じていた。

 しかし、その原因はミア自身にもわかっていなかった。


「確かに、ミアに対してはバフがかけられていた。スキル制御力を強化するものだ」


 アーサーが言うと、ボンは「やっぱりな!!」と息を荒らげた。


 だが、アーサーはピシャリと言い放つ。


「アルトのスキルは、戦闘不能になるより前に、既に発動していたハズだ。見張っていたが、アルトが新たにスキルを発動した気配はなかったからな」



「で、でもアイツは俺たちと戦ってる間には、強化スキルなんて使ってなかっただろ……!? そんな余裕はなかったはずだ!」


「だからアルトは倒れる直前に全てのスキルを発動したんだろう」


 ――実際、アーサーの見立て通りであった。

 アルトは倒れる直前、バフを連続発動するテキストを起動していた。

 そして、アルトのオートマジックは、一度起動さえしてしまえばその「実行」は本人が寝ていようが自動でなされる。


 確かにこの決闘では、戦闘不能になった後に新たにスキルを発動することは許されていないが、その前に発動したスキルを取り消すことまでは要求されていなかった。

 アルトは正当な戦いをしていた。


「そ、そんな!? あの一瞬で!? ば、ばかな……」


 ボンはアルトの力に言葉を失う。

 だが、彼らの敗因は決してアルトの強さだけではなかった。


「だが、アルト・ミアチームが勝ったのは、なにもアルトの力だけによるものではない」


 アーサーがミアのほうを見てから、ボンに向き直る。


「バフは効果が出るまで時間がかかるからな。アルトがバフをかけたといっても、実際に試合中に効果を発揮したのはスキル制御のバフ数回分だけだろう。ミアがお前を倒したのは、元々の地力じりきがあってこそだ。お前たちはアルトにだけ負けたわけではないから。お前たちはアルト・ミアチームに全てにおいて負けているのだ」


「……ッ!!」


 ボンは歯ぎしりしながらうつむいて地面を見る。


 ――だが、そこにアーサーはたたみかける。


「それに。逆に妨害していたのはお前たちだろう」


 アーサーが言うと、ボンは驚いて顔を上げる。


「なな、なにを!? 僕たちが妨害?」


 ボンはしどろもどろになりながら反論する。

 だが、アーサーは既に全てを掴んでいた。


「おい、連れてこい!」


 アーサーがそう言うと、決闘場の建物から男たちが出てきた。


 中年の男を、二人の衛兵が両脇で腕をつかみながら連れてくる。その男の顔を見た瞬間、ボンの表情が一気にこわばった。


 衛兵に連れてこられた男は、ボンの父親がひいきにしている役人だった。


「この者が、お前と、その父ボーン伯爵に命じられ、アルトの妨害をしてきたことは既に調べがついている」


「そそそ、そんな!! ち、ちがいます!」


「とぼけても無駄だぞ。アルトに盛った毒の入手ルートも調べがついている。この小役人が見返りにボーン伯爵から金銭を受け取っていたことも既につかんでいる」


「……!!」


 ボンは言葉を失う。


「何を今さら慌てている。俺がアルトに解毒薬を飲ませたときから、俺がすべてを知っているとわかってしかるべきだろう。お前が盛った毒は専用の解毒薬でないと治せないものなのに、俺がその専用の解毒薬をたまたま持っていて、アルトに飲ませたとでも思ったのか」


 アーサーがそう言うと、ボンは滝のように汗を流して目をきょろきょろする。

 だが、周囲に彼を守ってくれる人間は一人もいなかった。


 そして、アーサーが目くばせすると、脇に控えていた別の騎士がボンの身柄を拘束する。


「騎士になろうという人間が対戦相手に毒を盛るなど万死に値する。連れていけ」


「や、やめてくれえええ!! ぱ、パパ!!!!! 助けてぇ~~!!!」


 とボンが子供のようにあがくが、強面の騎士たちによってそのまま連れさられていくのであった。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
「騎士になろうという人間が対戦相手に毒を盛るなど万死に値する。連れていけ」 つまりは、処刑されるってことなのかな。
[一言] しばらく空いていたので、何の話だったか全く思い出せない…
[気になる点] >お前が盛った毒は専用の解毒薬でないと治せないものなのに、俺がその専用の解毒薬をたまたま持っていて、アルトに飲ませたとでも思ったのか 「試合が始まる前に解毒剤を飲ます」ことができた。…
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