36.毒
「それでは、明日の試験のペアを発表する」
最終試験の前日。試験官のアーサー隊長により、模擬戦の組み分けが発表される。
「アルト。そしてミア・ナイトレイ」
名前を呼ばれたアルトとミアは顔を見合わせる。
まさかお互いにペアになれるとは思ってもいなかったのだ。
「続いて、ボン・ボーン。そして、グレゴリー・パーンズ」
ボン・ボーンの相方は、第一の試験でミアを軽々倒した男だ。
貴族同士のペアである。
「続いて……」
それからそれから数分で一通りの発表が終わる。
「それでは、明日の試験最終日での諸君らの健闘を祈る」
それでその日は解散になった。
各チームの対戦相手は当日発表されることになっていた。
「まさかアルトとペアになれるなんて思わなかった」
ミアがうつむき加減で、少し恥ずかしそうに言う。
「俺も予想してなかった。でもうれしいよ。一緒に頑張ろう」
「……足引っ張らないように頑張る」
「まぁ前日だからあまり張り切ってもしかたないし、今日はゆっくり休もうか」
「うん」
アルトはそう言って、寮へと帰ろうとする。
――だが、それを引き留める者がいた。
「ちょっといいか」
声をかけてきたのは、他でもないボン・ボーンだった。
アルトは警戒してボンの方を見る。
しかし、ボンは「害はない」とアピールするように笑みを浮かべる。
「今までの態度を詫びたいと思ってな。ずっと大人げない態度をとっていた。すまなかった」
そう言って、突然頭を下げるボン。
アルトは突然のことにたじろぐ。
「いや、別にいいんだが……」
「アルトがあまりに優秀だから、ついムキになって敵対的な態度をとってしまった。だが僕が間違いだった」
アルトはボン・ボーンの態度が180度変わったことに、強烈な違和感を覚えた。
けれど、そんなアルトに、ボンはさらにグイっと迫った。
「お詫びをさせてほしいんだ。この後、一緒に食事でもどうかな。ここらで人気のレストランでごちそうするよ」
「(正直、あんまり気乗りはしないな……)」
それがアルトの正直な感想であった。
けれど、頭を下げてきている相手を無碍にすることもできなかった。
「ああ、わかった……。昼ごはんなら……」
アルトが言うと、ボンは笑みを浮かべる。
「よかった! じゃあさっそく行こう!」
と意気揚々と歩き出したアルトは、ミアに別れを告げて、ボンについていくのだった。
†
――それから、アルトはボンと一緒にご飯を食べたが、ハッキリ言って、ボンとアルトの会話はあまり盛り上がらなかった。
「(まぁ、おいしかったし)」
貴族の紹介するレストランということで、食事はおいしかった。
それに会話中もアルトは自身への物理強化スキルをかけ続けており、経験値を稼ぐことはできていたので、時間を無駄にしたというほどの感覚はなかった。
「さて、明日に備えて今日は帰るか……」
アルトはそのまま寮へと帰る。
だが、やがて違和感が身体に広がっていく。
「(あれ……?)」
アルトは身体がだんだんと重たくなっていくのを感じた。
そして家にたどり着いたころには、めまいで立っているのがつらくなっていく。
「(なんだ……?)」
アルトはそのままベッドに倒れこんだ。
しばらく横になるが、どんどん苦しくなっていく。
寒気もしてくる。
「……どうなってるんだ……?」
†
更新が止まってしまって申し訳ありません。
年度末のため本業が忙しく、執筆の時間がまったくとれていませんでした。
来週いっぱいで他の仕事は片づけて執筆に戻りますので、引き続きどうぞよろしくお願いします。




