10.ギルドを追放になったので、ソロデビューします
――突然、ギルドを追い出されてしまったアルト。
最初は、あまりに突然のことに呆然としていた。
しかし、少し考えて思い直す。
「待てよ。オートマジックのおかげで攻撃魔法も使えるようになったし、もう普通にポーターじゃなくて冒険者になればいいんじゃないか?」
これまでアルトがポーターとして働いていたのは、冒険者として働くほどの攻撃魔法をもっていなかったからだった。
しかしつい昨日覚醒したオートマジックの“同時発動”によって、攻撃方法を手に入れた今、なにもポーターとしての生活に固執する理由はないのだ。
「よし! クエストを受注しよう!」
冒険者ギルドのパーティに所属してダンジョンの攻略をする以外にも、ソロや他のパーティの補佐として活動するフリーランスという道もあった。
いきなり実績のないまま他のパーティに入れてもらうのは難しいだろうから、まずはソロで始めてみようと決意する。
そうと決まれば、さっそくダンジョン攻略に向けて準備をする。
「まずはテキストを準備して……」
オートマジックの中に記録したテキストたちを整理する。
ギルドを辞めさせられたので、もう仲間を補佐するテキストはいらない。
「魔力強化……物理強化……あと、状態異常自動回復、探索魔法もとりあえずいらないな……」
スロットに入れていたパーティサポート系の魔法を全て保管領域に移動する。
そしてソロ探索向けに、自分だけを強化する仕様のテキストを代わりにセットした。
そして、攻撃魔法の同時発動テキストも用意して、攻守ともに準備万端だ。
「よし、これで大丈夫。さっそくクエストに行こう」
ギルドをクビになったというのに、今のアルトの気持ちはとても晴れやかだった。
†
アルトはクエスト紹介ギルドに出向いて、仕事を紹介してもらう。
「あの、Eランクの討伐の仕事を紹介いただけないですか?」
それまでアルトは最低レベルのFランクの仕事を中心に受注していた。
Fランクは魔法なしでも倒せるようなモンスターの“駆除”の任務が中心だ。
なのでギルドのライセンスは最低レベルのFランクのままであり、一つ上のEランクまでしか受注できない。
「アルトさん、Eランクに挑戦されるんですね。えっと、ちょうど今あまりEランクのクエストがなくて……あ、ちょうどこれがいいですね」
そう言ってお姉さんは、仕事を紹介してくれる。
「最近街のはずれに出現した“黒のラビリンス”です。ダンジョン自体はBランクですが、一階層にいればEランクモンスターしかでませんのでご安心を。それより下の階に行くとモンスターのレベルがD、C、Bと上がっていきますから、くれぐれも立ち入らないように注意してください」
「ありがとうございます」
アルトは内心でガッツポーズした。
“同時発動”があれば、おそらくDランクの魔物も倒せる。
せっかくなので、自分の力がどこまで通用するか試したかったのだ。
いけそうなら、そのまま階を降りていけばいいだろう。
「では、気を付けてください!」
†