ヒト拾った。
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「お母さん、このヒト死んでるのかなぁ?」
「う〜ん、まだ生きてると思うけど、この様子じゃもうすぐ死んじゃうと思うよ」
「……!……それなら早く病院に連れて行こうよ!」
「…………そうね」
「身長165cm体重47kg、性別は雄。毛や肌、顔のしわを見る限り、断定はできませんがおそらく生後30年ほどですね」
「それと、栄養状態が非常に悪いです。きっと数ヶ月、あるいは数年はまともな物を食べてないですね。痩せているのもそのせいでしょう」
「一般家庭でも飼育できる状態になるまではうちで面倒見ますので、また数日したらお越し下さい」
「お母さん、あのヒト助かるのかな?」
「お医者さんが看てくれるんだし、大丈夫じゃない?」
「…………ねぇお母さん、僕あのヒト飼いたい」
「はぁ……言うと思った。ヒトの世話は自分でしなさいよ」
「……!……やったぁ!ありがとう!」
……………………。
「…………!!……お母さん、タローが起きた!!」
「お母さん、タローが鳴いてるよ!なんて言ってるのかな!」
「お腹でも空いてるんじゃない?」
「そっか、餌持って来る!」
「ほらタロー、お食べ」
「…………お母さーん、タロー食べないよ?」
「タローは野良ヒトだったから、警戒してるんじゃない?しばらくほっといたらそのうち食べると思うよ」
「……そうだ。今のうちにトイレシートを近くに置いたら?その辺にしっこされたら困るし」
「うん!」
「見て、お母さん!餌なくなってる!」
「お腹いっぱい食べて眠たくなったのかな?今は寝てるよ」
「早く元気になるんだぞ、タロー」
「ああっ!お母さん、タローが小屋の隅にうんちしてる!」
「あー、ちゃんとトイレトレーニングしないといけないね」
「そのうんちをトイレシートに置いときなさい」
「はーい。ほら、タロー。トイレはここでするんだぞ」
「あっ!お母さん、タローが机の上で寝てる!コラッ降りなさい、タロー!」
「そういう時は大きな音を立てて怖がらせて、机の上はダメって教えるのよ。こんな風に……」
ドンッ!!
「タロー!降りなさい!」
「あっ!タローが降りた!」
「動物はこうやって躾するのよ」
「いただきまーす!」
「お母さん、タローが僕のご飯を見てるよ。やっぱりヒトの餌より美味しそうに見えるのかな」
「あげちゃダメよ。太るし、ヒトの毒になる食べ物もあるから」
ドンッ!!
「タロー!ダメだよ!」
「あっ……タローが隠れちゃった」
「そのくらいがちょうどいいのよ」
「よしよし、タロー。お前はかわいいなぁ」
「あっコラ!爪を噛むのやめなさい!」
ドンッ!!
「そうだよー。爪は噛んじゃいけないよー、タロー。よしよし」
「お前はお利口な良い子だねー、よしよし」
「お母さーん、タローがうんちしてるよー。臭いから取ってー」
「はぁ……結局、お母さんがタローの世話をするのね」
「タロー、お母さんの方に懐いてるね」
「そりゃ、いっつもトイレシート換えたり餌あげてたら勝手に懐いてくるよ」
「……タロー、おいで!」
「あっ……お母さんの方に行った……」
「………………」
「……喰らえタロー!よしよし攻撃だ!」
「よーしよしよし、よしよしよしよしよしよしよーしよし」
「あっ……逃げた」
「………………」
「……タロー、おいで!」
「………………」
「タロー、おいで!」
「…………タロー、来なさい!」
「………………」
ドンッ!!
「タロー、来なさい!!」
「んー、良い子だねーお前は。よしよし」
「タローはかわいいなぁ」
「見てて、お母さん!タローが僕にも懐いたよ!」
「タロー、おいで!」
「ほら、駆け寄って来た!」
「ホントだねー、あんたのこと大好きなのかもねー」
「……ねぇ、タローは今幸せかな?」
「そうじゃない?あの時拾ってなかったら死んでたし」
「……そっか」
「良かった」




