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-絶望と光明 2-

ブックマーク、評価下さった方々本当にありがとうございます。


「初めまして聖女様。私アカデミーの教会にお仕えしております司祭のユート・アルミダと申します。宜しくお願い申し上げます。」


初めてアカデミーの教会で祈りを捧げる日、私に挨拶をしてくださったのは司祭にしては若い、碧い瞳とプラチナの髪を持った美青年だった。


「初めまして、アンナ・キツキと申します。本日より週に3日お世話になります。」


「アルミダ司祭、アンナ嬢にくれぐれも失礼の無いように頼みますよ。アンナ嬢も負担が増えるかと思いますがお務め宜しくお願いしますね。それでは30分程したらまた迎えにあがりますね。」


思ってもいないことを良くあんなにもスラスラ言えるものだわ。


外面の良さMaxのカーリスにうんざりし、一礼してさっさと教会へ行こうとするとユート司祭が引き留めた。


「申し訳ありません、カーリス様。ここアカデミーの教会は王宮の祭壇程神に声を届ける環境が整っておりません。ですので祈りを捧げて頂く場合は時間が30分ではなく1時間となります。お迎えは1時間を過ぎてからにして頂きます様宜しくお願い申し上げます。」


「……そのようなことは聞いていませんでしたが?」


内心怒りを抑えているのだろう。

少し引きつった様な顔でカーリスが司祭様に向いた。


「申し訳ございません。王様にはご説明させて頂いておりましたが実は聖女様に関する文献が出て参りまして、王宮以外の教会で祈りを捧げて頂く場合は30分では足りないと記してあったのです。聖女様におかれましては授業等もあられる中で申し訳ありませんが祈りが最優先とのことでお許しが出ました。」


「そうですか、次回からはその様な大切なことは私にもしっかりと話を通すように。不敬ですよ。今回は許しますが次は無いと思いなさい。………ではアンナ嬢、1時間後に参ります。」


アニメだったらこめかみに怒りマークがピキピキと浮かんでるんだろうな…という笑顔を浮かべてカーリス達は今度こそ去っていった。

少し爽快…

なんて考えていると


「どっちが不敬だよ、バーカ。」


「えっ?」


今、バーカと聞こえましたが……?


「おや、聞こえてしまいましたか?ふふっ、内緒ですよ。それでは聖女様、教会に入りましょう。お茶を準備しております。」


「お茶、ですか?えと、あの、」


それよりさっきのは何ですか………?


「ふふっ、まあ、まずは入りましょう。会わせたい方がいるのです。」


「は、はい。」


さっきとのギャップとお茶発言に驚きつつ司祭様について教会に入ると、そこには10日程前に廊下で出会ったあの凛としたご令嬢と他に3人のご令嬢が立っていた。

するといきなり4人のご令嬢が最上級礼をとりながら話しかけてきた。


「聖女様、ご挨拶させていただくのは初めてでごさいますわね。私はエリーシア・コールマンと申します。こちらはシャーリー・アルデミア、リリー・カックス、メイルーシェ・シャリオン、皆聖女様と同じ2学年ですわ。」


「「「宜しくお願い致します。」」」


「よ、宜しくお願い致します。」


杏菜も急いで見よう見まねで礼をする。


「聖女様、私どもにその様な礼はしなくて結構ですわ。ここに居る誰よりも聖女様は尊いお方ですもの。」


「そ、そんなことありません。私なんて…ただ祈るだけしか出来ない。」


「……それをカーリス様から言われたのですか?」


…カーリスというか、取り巻きと言うか、

今日も

『貴女は祈るだけで王家の保護を受けられるのです。光栄に思いなさい。』

とか

『いーよねー。祈るだけで後はなにもしなくていいんだよー?』

とか

『ふん、お前のような祈るだけでカーリス様のお側にいれるヤツを護らねばならぬとは…』

とか

散々取り巻きトリオに言われてきた。

因みにカーリスは私がそう言われているのを満足気に見た後に


『ほら、アンナ嬢の事をそんな風に言ってはいけないよ。そんなに正論を突き付けたら何も言えなくなってしまうじゃないか。上に立つものは正論ばかりでなく余裕も持たなきゃいけないよ。でもアンナ嬢はもっと私達に感謝しなければならないね。ほら、『本日も祈るしか脳のない私を護って下さりありがとうございます。』って言ってごらん?』


と意味の分からないことを言ってきた。

意味が分からないのだが、この頃の私はカーリス達にモラハラ&暴力を受けすぎて感覚が麻痺しているようで、そのセリフを言って殴られないなら…と素直に復唱した気がする。


そんなことをボーッと回想していると、沈黙を肯定ととったエリーシア様は


「なんて事でしょう。聖女様、カーリス様達に代わり深く謝罪致しますわ。本当に聖女様が私に助けを求めて下さって良かった。もう大丈夫ですからね、私どもが必ず聖女様をお助け致します。」


と仰った。




助ける。いま、エリーシアはたすけると言ったのか。




「………たすける?…私、を?たすけてくれるのですか?」


「勿論でございます。」


「ほん、と、に……?」


「はい、私達の全力をもってお救い致しますわ。」


「寧ろお伺いするのが遅くなり、本当に申し訳ありません。」


「ああ、こんなにおやつれになって、お痛わしい。聖女様のお心に気付けなかった私どもをお許し下さいませ。」


後ろに控えていたシャーリー達も側にきて声をかけてくれる。



「あ、あぁ、……わた、し、辛いの。」


「ええ。よくぞ今日まで耐えて下さいました。」


「もう殴られたく、ない。」


「勿論ですわ。」


「からだ、痛い、の。」


「後でアルミダ司祭に回復魔法をかけて頂きましょう。コニック様の何倍も凄い回復魔法ですのよ。」


「怒られるのも、嫌、なの。」


「聖女様は何も悪くありませんわ。」


「じゅぎょう、うけ、たい。」


「私も一緒に聖女様とお勉強したいですわ。」


「まほ、ならって、みた、い。」


「聖女様は魔力が沢山あるように見受けられますからきっと素晴らしい魔法が使えるようになりますわ。」


「お友達、欲しかった。」


「私どもも聖女様と是非お話してみたかったんですの。今度お茶会に招待させて下さいませ。私どもから言うのは恐れ多い話ではありますがお友達になって欲しいですわ。」


ポロポロ涙を流しながら今までの気持ちがどんどんと溢れていく。

エリーシア様達は涙声で拙い私の言葉を一つ一つ拾って全てに優しく応えてくれた。


「もう、我慢、しな、く、て、いい、の?」


「「「「勿論ですわ!」」」」



「あ、ぁ、あああああーーーーーーー!」




子どもの癇癪みたいに泣き崩れる私をエリーシア様達は取り囲むようにして支え、落ち着くまでずっと優しい言葉をかけ続けてくれた。







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