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-アカデミーで振り回されました-

今日も読んでくださってありがとうございます。

頑張ります。

カーリス様は一言で言うと我が儘ゲス坊っちゃんだった。

いつも周りに取り巻き(取り巻きも皆我が儘ゲス坊っちゃんだった)を侍らせ、ご出席なさる授業を選り好みしている為余り成績は宜しくない様子。

にも関わらずご自身が皇太子となりいずれは王様となることを寸分も疑わない自信家。

ある時ご本人自ら自慢するように語っておられたのは


「王は自ら何かを成すのではないんだよ。成すのは部下だからね。王に必要なのはカリスマ性なのさ。だから私こそ王になるべき者なんだよアンナ嬢。」


またある時は


「本当は私程の人間はアカデミーなど通わなくとも良いのだけど将来私に仕える者たちを見定めるのも大事な仕事だからね。王になるのも大変なんだよアンナ嬢。」


とのたまっていた。

(王様が居ない所では喋り方まで偉そうになっていて《誰これ!》と内心叫んでしまった)


取り巻き達は流石カーリス様です!

と称賛し、自分達がカーリスが王になった暁には側近として名を馳せるのだと疑ってもいない様子。

一見すると凄い事を言っているようだが、自信家の塊の坊っちゃんが勉強をしないための言い訳をしているのに過ぎないと気付くに時間はかからなかったし、それを見抜けない取り巻きも救えないな……なんて冷静に思った。


そんなカーリス様達は当然のごとくアカデミーでは浮いた存在となっていて(本人達は尊敬の念から距離を置かれていると勘違いして喜んでいる)そんなカーリス様から逃げられない私は友達を作るどころかご令嬢との接点も作れず、挙げ句の果てには授業に出席する事すらままならなくなってしまった。




「カーリス様、私はこの世界についてまだまだ勉強不足にございます。そろそろ授業を受けたいのですが…」


「アンナ嬢、何を言うんだい。私の側に居れば国の事など直ぐに分かる。何せ王なのだから。いつも言っているだろう?聖女である貴女に勉強など不要だと。学びが必要なのは仕える者だ。上に立つものはどっしりと構えておらねばならないのだよ。」


「そうですよ、アンナ嬢。カーリス様の言う通りです。貴女はカーリス様の側に居られれば良いのです。」


「そうだよー。アンナちゃんは祈っていれば良いんだから難しい事考えないのー。」


今日も授業に出られないかカーリス様に聞いてみるが直ぐ様カーリス様と取り巻きその1(宰相様の所の三男坊)とその2(教会の副司祭様の長男坊)に却下されてしまう。


「でも、王様より折角学びの場を頂けたと言うのに…」


「アンナ嬢、君は勘違いをしている様だから言っておくけどね、この私が君の案内役に付いているんだ。私の言う通りにしていれば何の心配も無いんだよ。そもそも学ぶ為というのは建前であって貴女がアカデミーに来た本当の意味は私達と共に有意義な時を過ごす事なのだから何の問題も無い。」


(そんなわけあるかーーーーー!!!!!)


「で、でも、私、魔法を使ってみたいのです。私がいた世界には魔法がありませんでしたのでこの世界で使えるのであれば是非学んでみたいと……」


「はぁー。アンナ嬢、何度言えばわかるのかな?君の事は私に任されているんだよ。そもそも君の後ろ楯は誰だか忘れたのかい?王家だよ。即ち私だ。あんまり私の機嫌を損なわない方が良いんじゃないかい?後ろ楯を喪ってしまったら君はこの世界で生きていけるのかな?試してみても良いんだよ?」


「っっ……、申し、訳、ありません。」


「うんうん、そうだよ。最初からそう素直になっていれぱ良いんだよ。良い子だね、アンナ嬢。ほら、良い子にはお菓子をあげよう。ティータイムの時間だよ。」


普段の言動はアホ丸出しのクセにこういう脅し事に関しては凄く頭が回る。きっとこのような手を何度も使って今のポジションを獲得したのだろう。

確かに私は王家の後ろ楯が無くなって街に放り出されたら直ぐに死ぬ自信がある。

私がいくら聖女でこの国を護っていたとしてもそれは王家がきちんと私の事を認めてくれているからに他ならない。

一言「あの人聖女じゃなかったわ」と言われた瞬間、形に見えない祈りを()()に出来る力をカーリス(この人)はもっているのだ。


ああ、嫌になる。


私はこの先ずっとカーリス(この人)の言いなりになって生きていかねばならないのか。

このゲスの塊のような人が本当に王になってしまうのか。

(甘い汁を吸いたい貴族と形だけを望む王、利害が一致してしまえばカーリス(この人)も人気票を集められる気がするし…)

本当は早くカーリス(この人)から逃げないと自分で自分のクビを絞めている状態なのは分かっている。


《聖女が気に入っている王子》


その影響は計り知れなく、カーリスを皇太子にする重要なピースとなっているのは分かっている。

結局私達は両刃の剣なのである。

でも私がそのカードを切れないのはカーリスが他にどんな手を持っているかが読めないから。

下手したら唯々自滅して終わる可能性があるカードを私は切れないでいる。



「おい、聖女。サロンへ行くぞ。着いてこい。」


カーリスの取り巻きその3(第二騎士団副師団長の次男坊)に促され、俯いたまま歩き出す。

丁度授業の休み時間に当たったのかそれなりに人通りがある廊下をカーリス達に囲まれて進む。

(まるで囚人みたい……)


いつもなら遠巻きに見られるのが嫌でずっと俯いていたが、今日はどうでも良くなってふと周りを見渡した。 

その時一際凛とした姿勢で真っ直ぐこちらを向いているご令嬢と目が合う。

(良いな……あの人綺麗で堂堂として…こんな私とは大違い。)



あぁ


お願い……誰でも良いから


『た す け て』



気が付いたらご令嬢に向かって口パクで助けを求めていた。

ご令嬢はびっくりしたように目を見開き、何かを呟いた後さっと踵を返して去っていってしまう。


ふっ…


そうよね、こんな私に助けを求められても困るだけよね。

もうどうでも良いや…

日に日に強くなるカーリス達の圧力に心が折れかけていた私はまた俯きながらサロンへと向かうのであった。



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