-親の心子知らず パパ達の苦悩-
今回はちょっと短目です。
王都にあるとある貴族御用達商店の一室。
貴族御用達なだけあって広々として落ち着いた空間
……であるはずたが、そこにはおどろおどろしい空気が立ち込めていた。
「一体どこで育て方を間違ってしまったのか。」
シルバーフレームの眼鏡に美しいブルーグレーの瞳を持つ男性は、その美しさには相応しくない大きな隈を携え、猫背になってため息を吐いている。
「まさかカーリス殿下のあれに感化されてしまったと言うことでしょうか?いや、でもあれ対策の為に我が子達は魔法耐性を上げさせているはずですし……」
そう独り言のように発言した司祭の格好の男も覇気がなく、ローブの裾を力無く握りしめている。
「それは無い筈だ。あれを発動させないために殿下をあえて自由にさせて魔力値をセーブしてるのだから。定期的に魔力値測定もしている。」
立派な口髭を携えた白髪の初老騎士も司祭の格好をした男に続いて口を開いた。
ここに集ったのはカーリスの取り巻きである、サイラス,コニック,ガリオンの父親たちである。
聖女様の取り巻きに成り果て、婚約者を蔑ろにし、挙げ句の果てに王宮舞踏会のエスコート拒否。
この愚行に関する苦情を受け、このまま行くと婚約破棄の申し出になりかねない状況に火急の対応に追われているところであった。
「ではやはり我が子達の暴走だと言うことですね。ああ、情けない。まさか王宮舞踏会のエスコートまで拒否するとは…。この婚約を逃したらもう貰い先など無いと言うのに。早急に対処しなければ。」
「そう、ですね。まずは先方へ先立っての謝罪をした後に各々のバカ息子の処遇について認めていただかねば。……うちのサイラスは一旦我が義理姉夫婦の家に行儀見習いとして引き取ってもらおうかと考えています。」
「ああ、義理姉夫婦と言えばシュタール地域の……。彼処は牧畜が盛んですから働き手には事欠きませんね。シャーリー·アルデミダ嬢もアルデミダ公爵にも御納得頂けましょう。」
「ガリオンは騎士見習いから外す事にした。護衛先で現をぬかすなど言語道断!今後はその有り余った体力を活かせるユザリア領の新鉱山に行かせる事にした。彼処の若領主は話が判る。二つ返事で身元引き取りを買って出てくれたわい。」
「なんと、あの新鉱山にですか。労働条件は良いものの過酷さで有名な所ではないですか。ミューター殿も思いきられましたね。」
「それぐらいせねばメイルーシェ嬢とシャリオンの奴は納得するまい。あの娘はああ見えて強かな良い娘だ。このまま婚約破棄されるのは惜しい事だから何としても食い止めなければなるまい。して、シーラー司祭よ。コニックの奴はどうするのだ?」
「コニックは警吏隊に入隊させる事にしました。あの子の不出来な能力は元より望まれていましたので。今までは本人がごねていたので断っていましたがここは一つ鍛えて戴こうかと。まぁどちらにせよ配属は尋問係の回復役でしょうから体力は使わないかもしれませんが。恐がりのコニックには良いお灸になると思っております。」
「そうか。泣き虫の坊主には一番の罰かもしれぬな。」
「これでリリー嬢が御納得して下されば良いのですが……」
各々の処遇を話し合い、今後の流れを確認している3人。
この3人はまだ知らなかった。
息子達が聖女に対して虐待行為を行っていることを…
婚約破棄で済む問題ではなくなっていることを……
「はあ、本当に、親の心子知らずですなぁ。辛いものです。」
そう言ったのは誰だったか………
「お話中の所申し訳ありません。コールマン伯爵と陛下が緊急にお呼びです。急ぎ皆様コールマン伯爵邸にお越しになるようにと内密にご連絡がございました。」
本当の親の心子知らずを知るまであと……………
パパさん達は良い人達なんです…