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第十三章 〜命の懸け方〜




 まだ薄暗い朝、樹楊は勢い良く起き上がった。身体中は汗でびっしょり、呼吸は荒い。


「な、何だってんだ、今の夢は」


 額の汗を拭い、呼吸を整える。夢だと解っていても、妙に生々しくて現実感があった。

 それもこれも、未だに鼻の奥で残香となっているゼクトの香りの所為に違いない。

 そうでなければ困る。


 夢の中に出てきたゼクトはとにかく妖艶で、男心を鷲掴みにするような色香を放っていた。加えて全裸で誘うような目付き。夢の中でとは言え、樹楊は「いただきまっす」とばかりにゼクトを抱き締めた。そして耳元で囁かれる。


「好きにしていいよ」と。

 そこで目が覚めたのだが、とんでもない悪夢だと思った。


 女の子は好きだし、ゼクトも可愛いと思う。だけど無差別に手を出すほど節操がないわけではないと、自負してもいる。それだけに、あんな夢は悪夢だと決めつけたのだ。


 本当に何つー夢を。


 自分が情けなくなる。

 現実の自分は見境なしに手を出さないというのに。

 と、下腹部の違和感に気付き、まさかと思いながらも布団を捲った。

 すると、ありったけの青春を集約している自分の分身は、見境なく手を伸ばしていた。


「た、楽しそうだなお前は」


 頭を抱えて長嘆。

 戒めというモノが、今日初めて欲しいと思った。

 だが男として仕方ない事と、あっさり妥協するとシャワーを浴びるべく、バスルームへ向かう。二度寝するには心地悪いし、眠気もない。


 素早くシャワーを浴び終えると、今度は早朝の散歩に出掛ける事にした。

 四期の朝はとてつもなく寒く、雪が降ってきている。山を見れば、その頭は白髪に変わっており、空を見れば灰色の幕で覆われているようだった。普段ならこんな朝に出掛けたいと思う事はないのだが今日だけは特別で、火照った身体と頭を冷やすには絶好の機会とも言える。


 首に巻いたマフラーで口を隠すように埋め、朝独特の活気を見せているだろう朝市へと向かう樹楊。自宅からは少しばかり遠いが、早朝ともあって外に出ている人々は少なく歩きやすい。朝市では新鮮な野菜やら行商人が持参してきた香辛料や毛皮など、多種多様な品々が販売されていた。その一角から、周りの活気に負ける事無く声を張り上げている女の子が居る事に気付いた樹楊は、まさかと思いながらも口元を緩めて近付く。。


「獲れたてのお魚だよーっ。美味しい魚がいっぱいだからどうぞ見てってくださーいっ」


 それはやっぱりニコだった。

 それでも信じられなかった樹楊は目を擦るが、魚売りの女の子はやっぱりニコだ。

 それが解ると、途端に楽しくなってくる。


「ニコ、何でこんなところに居るんだよ」

「はぇ?」

 

 ニコは間の抜けたような声を上げながら振り向いてきた。片手を上げるだけの挨拶をすると、ニコは笑顔になる。その笑顔はこの四期には見られない暖かい太陽のようなモノで、見ているだけで安らぐ。そう思っているのは自分だけじゃないはず。


「キョーちーんっ。久しぶりっ」


 大声を上げながら首に腕を巻き付けてくると、きゃーきゃー言いながら足をバタバタさせるニコ。しかしここは市場だ。騒ぐ場所じゃないと、樹楊はニコを降ろすが代わりに頭を撫でてやる。


「本当に何でスクライドに居るんだ?」

「えっへへへ。実はね、最近販売の許可を貰ったのだ。朝市限定だけどねっ」


 胸を張るニコの手は、赤くなり荒れている。

 所々に切り傷があって、痛々しかった。

 その手を両手で包んでやり、息を吹きかけてやると、ニコは赤面する。


「大丈夫だよーっ。もう慣れっこさっ」

「いいだろ、別に。俺がこうしたいんだ。お前は黙ってろ」


 この手が大好きだ。出来る事なら治してやりたいが、そんな事はしてやれない。だからせめて、こうやって一時でも温めてあげたいと思っただけ。

 そんな場違いな事をしていると、朝市に来ていた客に声を掛けられる。


「あら、キョウさん。どうしたんですか、こんな朝早くから珍しい」


 その問いに答えようとするも、次々に声を掛けられて誰に何て返せばいいのか分からなくなった。樹楊は民間人と仲が良く、兵士としては異例な存在だ。民間人の間では、兵士らしくないと言われているが、その言葉に悪意など無く、逆に好意が込められている。

 その光景を見ていたニコは、ぼけーっといていた。まさか、樹楊に人気があるとは思っていなかったのだろう。


 樹楊はその場から逃げるべく、ぼーっと突っ立っているニコを前に持ってくと、自分の知り合いだと皆に教えてやる。

 マスコット的な愛嬌を持つ小さなニコを見た皆は、目を輝かせて「どこの子?」だとか「何を売ってるの?」だとか、矢継ぎ早の質問攻めをし始めた。それと同時に、ニコが持ってきた魚が飛ぶように売れ始める。

 その隙に、とばかりに逃げた樹楊。


「キョーちん、ありがとーっ」という声に振り向くが、その声の主の姿は、当たり前のように見えない。埋もれているのだろう。

 どこに行っても小さな奴だ。


 樹楊はニコの幸運を願いながら、帰路を巡る。『早起きは三文の得』とは、確か自分と同じ人種が唱えた言葉。それも古代に。三文とは何なのかよく解らないが、とにかく得をしたような気もしている。自然と零れる笑みを浮かべながら歩いていると、目の前に野良猫が立ち塞がった。


 赤褐色で、やけに毛並みがいい。

 確かこの猫は、先日レストランに入ってきて追い出された野良猫だったような気がする。

 品もあるし、大人しそうだ。樹楊がしゃがみ込んで手を伸ばすと、前足を乗せてきた。そして肉球を押しつけてくる。


 野良猫は「ナー」と鳴いて目を細めるが、樹楊の好みは肉球などではなく、尖るその耳だった事は言うまでもない。素早く両耳を摘まむと、うっとりしながら感嘆する。


 このぐにぐにの感触が堪らないのだ。そしてサラサラな毛。これは特上だ。

 樹楊に耳を摘ままれた野良猫は長い尾を立て、身震いをしながら毛を逆立てる。


「ふにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


 前足をバタバタさせるも、力が入らないのか叩かれても痛くない。

 どんな事をされても手を放す気がないと悟ったのか、野良猫は目を潤ませて見つめてくる。

 それを見た樹楊。何かを感じたようだ。


「お前、まさかとは思うけど……ミネニャ?」


 すると、野良猫は情けない声で「うにゃ」と鳴く。しかし、これだけでは確定出来ない。


「チョコが好きなら二回鳴け」

「うにゃっうにゃっ」


 二度鳴いた。

 しかし樹楊は耳を摘まんだまま。

 野良猫は潤んだ目を向けたままだ。


「キラキから来たんなら、ワンと鳴け」

「うに、にゃ!?」


 どうやら言葉をちゃんと理解しているらしい。それに赤褐色の毛並み。そして耳を摘まんだ時の、この反応。間違いないだろう。ミネニャだ。

 獣人目の中には、獣形態になる事も出来る種族がいるとは知っていたが、メノウがその種族だとは思ってもいなかった。樹楊が手を放すと、ミネニャは両耳を前足で押えて身震いする。そうとう寒気が走っていたらしい。


「お前、何でこんな所にいるんだ?」

 ミネニャはヒゲを動かすと、煌めいた目を向けてきた。


「にゃおっ」

「い、いや。にゃお、じゃなくてさ」


 当然猫の言葉が解るわけがない。額を指で弾くと、その指に噛みついてくる。

 そして何かを訴えるように鳴いてくるのだが、何を言いたいのか解らないままだ。

 樹楊は何か事情があると察し「取り敢えず、着いて来い」


 するとミネニャは何度か頷き、頭の上に乗ってきた。前足を額の前に放りだしてきて、無気力に顎を乗せてくる。まるで毛皮の敷物みたいになりながら「うにゃ〜」と、気の抜けた鳴き声。どうやら自分で歩く気にはなれないらしい。

 まぁ、疲れたのだろうと妥協する樹楊だが、その見た目はあまりにも奇怪だった。

  やる気のない猫を頭に乗せて、何事もなく歩く樹楊を見た民間人は一瞬驚くが、すぐに笑いへと変える。気兼ねなく笑うのは、その対象が樹楊だからなのだろう。


 樹楊がそうやってフンフンしていると、緊急の召集が掛かった。いつものようにダルそうに通信機に話し掛けるも、その内容を聞いた樹楊は血相を変えて城に向かう。

 息を切らしながら登場した樹楊を見たスクライド兵の面々は呆気に取られた顔をした。

 普段であれば、召集を掛けても最後に登場するのが樹楊なのだ。その樹楊が息を切らしてまで来た。それだけで目を疑いたくもなるのだろう。


「ふにゃあぁぁぁ」

 

 いや、目を疑いたくなるのは、血相を変えてまで走ってきたのに何故猫を頭に乗せているのか、なのだろう。先に待っていたミゼリアは、いつもの樹楊のやる気のなさが乗り移ったような猫を見ると、顔を手で覆いながら嘆息。ミゼリアは、重そうな足を忙しく動かしながら樹楊の前に立った。そして、軽く握った拳の中に咳払いする。


「樹楊。お前がこんなに早く来るのは意外だが、その猫はもっと――」

 

 樹楊はミゼリアの言葉を遮るように肩を掴むと、眉を下げながらも声を張った。

「ミゼリン、アギがどうしたんだよっ」


 その必死の面持ちに、ミゼリアは言葉を失うが、友を思う樹楊を見ると優しい顔になる。

 そして肩の手を柔らかく払うと、微笑んだ。


「大丈夫だ。死んではいない」


 その言葉は、今一番聞きたかった言葉だけに、身体の強張りを和らげてくれた。

 防衛戦に出ているアギが敗戦を目前にしていると聞いた時は、世界が暗転したほどだ。


「だが、それも時間の問題だ。今、アギ小隊長は部隊を全て失い、残るはアギ小隊長が率いる本隊のみだ。指揮官だったトロア上将軍は既に討たれたとの報告を得ている。そして通信が取れたのはつい先程までだ。恐らく、通信士もやられたのだろう。アギ小隊長と通信する術は残されてはいない」


 ミゼリアの厳しい言葉に、再度世界が暗くなっていくが、まだ生きている。

 しかしミゼリアと同じ、軍人魂を持つアギの事だ。生きて汚名を残すより、死して勇士を掲げるに違いない。


「ミゼリン、アギは何処に居るんっすか?」

「アギ将軍は北西のラクアット街に居る。それと、私はミゼリア――」


 樹楊はそれだけ聞くと会議室を飛び出した。

 ラクアット街は既に潰れた街だ。ネルボルグよりも小さな街だから見付けやすい。

 それに悠長に軍議など行っている場合でもない。こうしている間にアギが死ぬ確率は高まっていく一方なのだ。


「こらぁ! 戻って来い! 単独行動は許されてないんだぞ!」


 ミゼリアの怒鳴り声が背を襲うがそんなのには構っていられない。自分が行かなきゃアギは死ぬ。城を出た樹楊は真っ直ぐに自宅へと向かい、軍用バイクに跨った。最近メンテナンスを怠っていたから心配だったが、相棒はすぐに応えてくれて安心した。

 剣を収納に納め早速出発という時にゼクトが現れた。あの不敵な笑みで、前に立ち塞がっている。


「そんなに急いでどうしたの?」

「いいから、退けっ。邪魔なんだよ」


 ゼクトは鼻で笑うと、靴底を鳴らしながら近付いてくる。そしてハンドルに手を乗せると、首を斜にしてきた。


「退いて欲しかったら蓮ちゃんに近付かないって約束して。そうすれば退けてあげる」


 気持ちに余裕がない樹楊は、カッとして胸倉を掴んで引き寄せた。しかしゼクトは動じず、悪意に染まった瞳を向けてきているだけ。


「テメェ、いい加減にしろよ?」


 鼻頭が触れ合いそうなほどの近距離。

 帽子のツバに隠れていたゼクトの瞳が、妖しく輝いた。

 そして昨夜を彷彿させてくるように首筋に唇を近付けてくる。


「おにいさん、昨日私の夢見たでしょ?」

「な、何でそれをっ」


 馬鹿正直に答えた後でハッとした時には遅く、ゼクトは乾いた笑い声を上げる。

 涙を人差し指の背で拭い、実に愉快そうに訊いてくる。


「あっはは。本当に見たんだ? で? おにいさんは夢の中の私に何をしたの? それとも私が何かしてあげた?」


 樹楊は今朝の夢を思い出すと、柄にもなく赤面し始める。まともにゼクトの顔を見れない事が、少しばかり悔しくもあった。


「るせぇっ。今はそれどころじゃねぇんだよ。早く退いてくれっ」

 ゼクトは「ふーん」と興味津々に顔を近付けてくると、バイクの後ろに跨ってきた。


「暇だから私も着いてく」

「ばっ、今から向かうのは戦場なんだぞ」

「それなら私の舞台じゃない」


 それもそうか、と樹楊は納得してしまった。

 が、納得している場合でもないし、ゼクトを追い払う時間も惜しい。

 樹楊はバイクのアクセルを開けると、ウイリー気味に跳び出した。


「お前、武器はあんのか?」

「当り前でしょ? いつでも折りたたんで携帯してる。って言うか、頭の上の猫なんなの? すっごい睨んできてるんだけど」


 すっかり忘れていた。

 あまりにもミラクルフィットしてた所為で、違和感もなかったのだ。

 ミネニャは喉を鳴らしながらゼクトを威嚇していた。引っ掻いてやれと願うが、ミネニャは頭から降りて来る。そして今度は懐に入ってきて前足を胸元から放りだす。


「にゃっ」

「にゃ、じゃねーよ」


 何とも持ち運びが便利な戦闘種族だ。



 ◆



 ラクアット街の、とある廃ビルの中でアギは戦況の悪化に苦しめられていた。

 クルードの兵は手強い上に慎重。


 じりじりと追い詰められる事二日。

 仲間の通信士は通信ポイントから帰っては来ない。恐らく敵の刃に倒れたのだろう。

 上将軍は防衛戦が始まると、半日もしない内に首を取られてしまい、士気も乱れに乱れた。


 敵も既に残党狩りのつもりでいるのが腹立だしいのだが、仕方がないと言えよう。

 自分が率いる部隊以外は、指揮官を失った時点で烏合の衆と化していたのだ。

 尻尾を巻いて逃げる者もいたが、クルードの皆殺しという軍法の通り、生きて帰れる者などいなかった。


「アギ様、どうされますか?」

 残った兵の中で一番若い部下がおろおろしながら話し掛けてきた。


 アギは安心させようと優しい言葉を掛けようとしたが、すぐに見抜かれる嘘はつけそうにもなかった。


「ネルト、君はまだ若い」

 

 アギはネルトの頭を撫でる。

 金色の前髪が目に入りそうになったネルトは目を伏せている。


「私が囮になろう。その隙にスクライドへ逃げるんだ。君はここで死ぬべきではない」

「ア、アギ様……」


 ネルトは鼻頭を赤くし、唇を震わせた。

 この顔を見ると、スクライドでぶらぶらしているだろう友の顔が浮かんでくる。


 あいつも幼い時は泣き虫だった。

 同じく幼き頃のミゼリアにいじめられてよく泣いていたものだ。仕返しに行くがいつも返り討ちに合い、目を擦りながら自分の元へきたのが、酷く懐かしく思える。昔の思い出が、やけに鮮明に浮かんでくるのは、死期が近いからなのだろうか。

 ……きっとそうなのだろう。


 あの二人を思い出すだけで、こんなにも暖かい気持ちになれるのだ。

 アギは暖かい笑みを顔に浮かべて含み笑いをする。


「アギ様、何か楽しい事でも?」

 ネルトがおろおろしながら尋ねてくる。

 頭がイカレたかと思われただろうか。


「あぁ、すまない。何でもないんだ」

 そう言いながらも、口の端には笑みが残っている。


 アギは残っている兵を呼んだ。

 自分を含めて五人。ずっと一緒に闘ってきた仲間達だ。

 全員の顔には不安と、アギへの絶対の信頼を浮かべている。

 それを見ると、アギは嬉しく思った。

 こんな戦況になったのは自分が浅はかで弱かった所為なのに、それでも着いてきてくれていると。アギは早々に討たれた上将軍の事を愚かだと口にしなかったし、思ってもいない。

 それは自分に責任があると思っていた。


 もし樹楊であれば、

「アイツ、馬っ鹿じゃねーの? 初っ端でやられる上将軍があるかっ。なぁアギ?」


 と、二度見したくなる言葉をさらりと言っただろう。しかし、あの兵らしからぬ発言はいつも自分を救ってくれた。

 戦中だと言うのに、持ち場を離れて心配しに来てくれたりとか、囮になってくれたりとか。時には敵兵と口喧嘩していた時もあった。 大半の者は樹楊を嫌うが、アギとこの部下達は樹楊が好きなのだ。それは勿論、過去に何度も樹楊が助けに来てくれた事を含んでいる。


 アギは、もう見られぬ友の顔を思い浮かべると表情を引き締める。


「もう皆も解っているとは思うが、この戦は負けだ」


 この言葉を口にしても、尚も落ちた表情を見せない部下を誇りに思いながら続ける。


「だが、お前達を死なせるわけにはいかない。この戦は私の弱さが招いたもの。だから私が囮になる。その隙に逃げるんだ」


 アギの本心だった。

 皆には死んでほしくはない。

 この敗戦の悔しさを心に、腕を磨いて強くなってほしいと切に願った。


 しかし、了解の言葉が返ってこない。

 普段であれば命令すればすぐさま頷いてくれたのに、誰一人として首を縦に振ろうとはしてくれなかった。全員武器を握り締め、強い視線を送ってくる。


「アギ様、アナタがここを死に場所と選ぶのであれば、俺の死に場所もここなんです」


 一人の兵が言うと、全員それに頷く。気弱なネルトでさえも迷わず頷いた。

 アギは部下から絶対の信頼を受けている。その絆は鉄よりも硬く、強い。その証拠が今、言葉となって表に出てきたのだ。


「しかし、一人でも多く生き延びた方がいいだろうっ? 私に名誉挽回のチャンスをくれないか。このままでは恥さらしのままなんだ」


 アギが少しだけ声を張るが明らかに動揺し、一人ずつ顔を見た。

 ネルトは言う。

 その声音、まるで許しの言葉を述べる神父のよう。


「僕達はアギ様と一心同体の槍です。アギ様という刃を失くした柄が、どうして役立ちましょうか」


 へへっと鼻を擦るネルトの背を不精髭が目立つ兵が「良く言った!」と叩く。


「お前たち……」

 アギの目頭に、戦友の暖かさが集約されて雫となって現れた。しかしアギはそれを地に落とさず、自らの手に染み込ませる。


「みんなっ」


 アギは自らを奮い立たせるように声を張る。

 戦死の顔をしている全員の眼を受け止め、槍の柄を強く握った。手放さぬように。


「その命、私に捧げてくれ! 一欠片も残さずに天へと導こう!」

「おお!」


 部下達は武器を天に掲げながら深く叫んだ。


 アギ達は廃ビルから出ると、すぐさま目の前の敵兵に向って突撃をする。

 目視、十人強。


「私に続け! 己が牙、今こそ突き立てろ!」


 オォォォォォォォォォ! 


 空気を震わさんばかりの雄叫びを上げながら突撃するアギ達に瞳に、最早未来は映っていなかった。退却など微塵にも感じさせぬ津波の如く猛攻は、怯むクルード兵をたちまち呑み込む。猛々しく燃えるこの気持ちに理由など無い。


「我はスクライド王国第三番隊小隊長、アラサード・ギギト! 腕に自信がある者は挑んでくるがいい!」


 戦の鬼と化したアギの槍は兇刃の舞を踊る。立ち塞がろうものなら即座に斬り捨てられ、相次いで血の吹雪が舞った。


「僕は弱くない!」

 弱虫ネルトも、ショートソードを巧みに使って目の前の敵を何とか斬り伏せている。

 しかし、アギ達の優勢は続く事はなかった。次々に現れるクルード兵に押され始め、遂には囲まれてしまう。向こうには指揮官がいて、何通りか生まれる手段の中から適当な一手を喰らわせられる。

 

 アギ達は誰一人として死んではいないが、それでも限界は見えていた。

 肩で息を切らし、傷だらけの身体を両足で支える。しかし、眼光は失われてはいない。最後まで抵抗する気なのだろう。


「先に逝くぜ?」


 不精髭の男がそう呟き、剣を下段に構えた。

 腰も落とし、獣のような目を正面の兵に向ける。

 その不精髭の男が擦り足で地面を鳴らした時、遠くからバイクの音が聞こえた。

 それも、こちらに近付いてきている。


「機兵隊も来たのか。そろそろ幕切れかよ」


 誰かが呟いたがアギはそう思わなかった。このエンジン音、聞き覚えがある。

 独自の改造をし、乾いた音が印象的な音。

 それは――。


「キョウさんだぁ!」


 ネルトが、プレゼントを貰った子供のような笑みで叫ぶ。すると、全員が音のする方を見る。近付いてくるバイク。それにはクルード兵も視線を奪われていた。


「アギー!」


 それは正しく、一番大切な友の樹楊。

 しかし、嬉しくは思えるはずもない。


「キョウ! 何故ここに来たのだっ。俺達はもう負けたんだぞ!」

「見りゃ解るっつーの! っと、おりゃ!」


 樹楊はバイクごと宙に跳び、アギ達の前に着地した。後ろには赤麗らしき人物も乗っている。深く帽子を被っているこの子は確か、ゼクトといったか。

 いつも棒付きの飴を舐めているから目に付いていた。


「逃げるぞっ、アギ!」

「なっ、俺はここを死に場所と決めたのだ! この敗戦は俺の失態が招いたもの! 恥を晒してまで帰れるかっ」


 樹楊は溜め息を落とすと、バイクに跨ったままアギの胸倉を掴んで引き寄せた。眉間にシワを寄せて、怒り狂った狼のような目で睨む。


「テメェの美学なんざどうでもいい。ここで死んで何になるっ。恥さらそうが何だろうが生きろ!」


「し、しかし」

「しかしじゃねぇ! 今は乱世だ、クルードと喧嘩してんだ。喧嘩なんざ逃げて当たり前なんだよ。最後に拳握り締めて吠えた方が勝者なんだ。テメェの死に方は無駄死にっつーんだよ! 命を懸けンなら勝ち星が見えた時に懸けりゃいいんだよ!」


 アギを睨みつける樹楊に、動揺していたクルード兵だったが指揮官の命を受けると、すぐに統率を整えて攻撃の準備に入ってきた。するとゼクトが呆れたように割って入ってくる。


「どうでもいいけどさ、向こうはやる気みたいよ? 逃げるならさっさと逃げようよ」


 アギはゼクトを見ると、部下達の顔をそれぞれ見た。どれもこれも自分の指示を待っている。 最後に樹楊。向けられた笑顔の中には、遠き日の樹楊とは違う強い目があった。

 そして不敵に笑う。これを見れば、死ぬなんて思えなかった。


 樹楊の言葉は心臓の深くまで沁み渡り、兵というもの戦というもの、そして勝利とは何かを適切に教えてくれたような気がした。自分の持っている信念が根本的に覆される気もしたが、悪くない気分でもある。


「アギ、お前の命令を待ってんぞ?」

「あぁ。解ってる」


「帰ったら酒奢れよな」

「それも解ってるさ」


 アギは樹楊に手を離してもらうと声を張る。その声音に曇りはない。


「皆、何が何でも生還するぞ! この際、恥など知ったものか! 生きるんだ! そして強くなり、汚名を返上しようじゃないか!」


 部下達は「おぉ!」と力強く吠える。アギは小さな声で「だろ?」と、樹楊に笑い掛けた。


「ふん、最初からそうしろっての。面倒な奴だな、お前は」


 そう吐き捨てるも、樹楊は嬉しそうだった。

 その後ろに乗っていたゼクトはやれやれといった感じでバイクを降りると、武器を構える。弓の形態だ。


「私が突破口開くから、合図したら行きなさい。転んでも知らないからね」


 口の中で転がしていた飴を噛み砕くと、プラスチックの棒を吐き出すゼクト。

 ツバの奥から覗く瞳は既に獲物を突き刺していた。

 構えも取っていなかったゼクトに油断をしていたクルード兵は、ゼクトが放った矢に射抜かれていた。弓を手にしてから構え、放つ速さは電光石火。隣にいた樹楊でさえも射抜いた事を確信するまでにタイムラグがあったほどだ。


 ゼクトはバイクを踏み台に跳び上がると、上から何本もの矢を浴びせた。

 雨あられと降る矢は、無差別に襲っているかのようだが、全て的確に打ち抜かれている。一人に一矢。それも確実に命を奪っている。


「一度退くんだ! 矢の攻撃範囲から逃げろ!」


 敵の指揮官が叫ぶと、ゼクトも叫ぶ。


「おにいさん!」

「おお! アギ行くぞ!」


 反撃の策も無く一度退いた兵は、得てして後手に回ってしまう。そしてそこに一点集中して突撃すると、それはいとも簡単に崩れるものだ。樹楊はその兵の薄い場所を瞬時で見極め、バイクで突っ込んだ。それに続くアギ達。幾重にも列をなし、それでいて統率が執れていれば、いくらバイクでも突破するには困難を極める。


 しかし亀裂が入った隊列など、脆いものだった。


 樹楊の巧みなバイク捌きに翻弄され、続くアギの突撃。更に追い打ちをかけるような隊員の猛攻はあっさりと敵兵の壁を突き破った。後方から援護射撃するゼクトのお陰もあるだろう。

 樹楊は突破した後、アギ達を先に行かせ、自らはバイクで敵の追っ手を遮る。


「早く行け! そろそろ増援も来るはずだ!」

「すまない! お前も気をつけろ!」


 アギは部隊を率いて、出来る限りの力で敗走を続けた。最後に振り返って見た友の姿は、らしくない兵などではないと思ったが、いや、やっぱり褒めらる兵などではない。


 敵地に単独で来るのだから。



 ◆



 アギ達を無事に逃がすが出来たゼクトは、敵のど真ん中で飴を舐め始めた。前後左右敵だらけ。まるで蟻の餌にでもなった気分だった。


「ゼクト、生きて帰れると思うなよ」

 敵の指揮官が怒りを露わにして睨みつけてきた。手入れをしていなさそうな、汚らしい顎鬚がやけに目に付く。


 プライドを傷付けられたのだろう。

 それならばもっと頭を働かせてよね、とゼクトは嘆息。

 しかし、のんびりと溜め息を吐いている場合でもない。一連の騒ぎを聞き付けたクルード兵の残りが全てこの場に集まったのである。スクライドとは違い、鉄の鎧を纏っている為、その迫力は雲泥の差だ。最も当人達は動き辛いだろうが、視覚的には効果があるのだろう。


 その中には知っている顔もちらほら見かけた。

 クルード兵も、ゼクトだと知ると一層気を引き締めた。その中の一人の兵が、兜を取ってゼクトに声を掛ける。


「ゼクトさん、降参して下さい。私はアナタを殺したくはありません。アナタであればまたクルードに戻れるかもしれないです」


 声音は少女のもの。

 ゼクトはその声を聞くと、過去の記憶を蘇らせる。クルードの兵として闘っていた記憶を。


「あぁ、あんたは私の部下だったコね? 見習いは卒業したんだ?」

「はい」


 その兵はゼクトがクルード兵の中隊長を担っていた頃、剣術を教えていて、部下だった女の子だ。昔の面影が残るその顔は、懐かしさを感じる。


「そっか。今となっては一人の兵士として国の為に闘っているのね?」

「はい。私はまた、ゼクトさんと共に闘いたいと思っています」

「そう。照れるね、そんなに慕ってくれると。じゃあ、あんたは幸せかもね」


 かつての部下だった少女が「え?」と首を傾げると、ゼクトの口の端が釣りあがった。

 少女が驚愕の音を上げさせる暇など与えず、ゼクトは懐に飛び込んでいた。

 そして二つに分解した大鋏の長剣を振り被る。


「あんたが慕う私に殺されるんだから」


 少女は何も答える事が出来ぬまま、その場に崩れ落ちた。

 すると、鉄がぶつかり合う音が幾重にも重なって響き始める。

 クルード兵が一斉に攻撃を仕掛けてきたのだ。しかし、ゼクトは自慢の跳躍力を生かして宙に跳ぶ。くるっと後方に回転すると、一人の兵の肩に着地し眼下の兜へ力任せに剣を突き立てた。


 頭を串刺しにされた兵は細かく震え、剣を抜かれた途端に大量の血を鎧の隙間からゴポゴポと噴き出す。ゼクトはその兵が倒れても尚、その上に立っており、顔に付いた返り血を悦に入った表情で拭う。


 その姿は夜叉。

 飴を口の中で転がすと、同時に棒が動いた。

 ゼクトはクスッと笑い、四方から迫り来る斬撃を交差させた剣で防ぎ、目の前の兵の身体を駆けあがる。そしてまた上へと跳躍。


 素早く弓型に武器形態を変えると、五本の矢を同時に放つ。

 着地する頃には双剣に戻し、兇刃な乱舞を披露した。その一方的な攻撃は、敵兵を次々にあの世へと誘い、足をすくませる。しかし旧ネルボルグで相手した兵よりも強い。一振りで仕留める事が出来た者も居たが、大半は二度三度攻撃を仕掛けなければ仕留められない。


 次第に堪る疲労に比例して呼吸も乱れてくる。自慢の跳躍力も高さが出なくなっていた。

 それでも跳躍をした時。

 一本の槍が空気を切り裂くように飛んでくる。誰かが予測して投げてきたのだろう。


「ん、っく」


 ゼクトは身体を捻る事で避けるが、バランスを大きく崩して肩から落ちた。しかし武器は手放さない。どうにかこの場を切り抜けようと起き上がろうとしたが、剣を首に当てられて動きを封じられてしまった。


 情けない。

 こんな弱っちい兵ごときにチェックメイトをかけられるなんて。

 慣れない事はするもんじゃないな、と思うと鼻から笑いが込み上げてきた。

 自分の部隊を持つ。その夢半ばで倒れるのかと思うと、何だかやり切れなくなった。

 ゼクトの内に秘める思いなど余所に、剣を首に当てられたまま真正面から別の剣が振りかぶられる。


 このまま頭が真っ二つ。

 ぱかっ、どろっ……。最悪な末路だ。鼻でも笑えやしない。

 ゼクトは目を伏せる。


 空気の悲鳴が大きくなってくるのがよく聞こえた。それは自分と剣との距離が縮まってくる音。その剣の音を最後に聞いたのは耳元だった。次いでザグッと地に刺さる音。

 何事かと思い、目を開ければ呆けた顔をしている自分を映している剣腹が見えた。


 剣は地に刺さっている。

 まさか動かない標的を前に目測を誤り、手元を狂わせたわけじゃないだろう。

 それならば何故殺さない? と思う暇もなくクルード兵の兜が目の前に落ちてくる。その中には頭が入っていた。その兜の持ち主は、首なしの状態で突っ立ったまま。しかし、その頭を追うように崩れ落ちてきた。


「何やってんだよ! さっさと逃げろ!」


 上から浴びせられる怒号は樹楊のものだった。その樹楊はゼクトを囲む三人の兵の首を刎ねた後で、焦りまくった面持ちで睨んできている。

 ゼクトは樹楊に担がれると、我を取り戻した。手足をバタつかせて暴れる。


「降ろっ、離しなさいよっ、ばか!」

「うっせぇな! 大人しくしてろ!」


 樹楊はゼクトを担いだまま疾駆し、敵兵の上に駆け上がる。そして突き出ているクルード兵の頭を踏み台にするかのように走り出した。樹楊にとっては足場の悪い岩場程度にしか感じていないのだろう。下から襲ってくる剣を、ゼクトが弾く事で防ぎ、樹楊はとにかく列の最後尾を目指してとにかく走る。そして大きく跳び、着地すると一目散に逃げた。そしてバイクに跨るとゼクトを後ろに降ろす。


「逃げるぞ!」

「う、うん」


 この時、樹楊の胸元から顔を出している猫が舌打ちしたのはきっと偶然だろう。

 クルード兵がゼクトに剣を振り被るよりも早くバイクは走り出す。目標を失ったクルード兵の剣は地に深々と刺さり、引き抜くには手間取りそうだ。


 クルードの指揮官が激昂の叫びが聞こえたが、何を言っているのか解らない。彼は、もう少し冷静になる事を覚えた方がいいようだ。ゼクトは肩の痛みに耐えながら、樹楊の腰に腕を回している。そこでやっと命が救われた事を認識した。


 まさか助けに来るとは思ってもいなかった。あれほど馬鹿にしたというのに。


「何でおにいさんは助けにきたの?」

「あん? お前だって俺の事助けに来てくれたろ? 二回も」


 樹楊は振り返りもせず、面倒臭そうに言う。


 確かに二度助けたが、あれは任務だから仕方なくであって、本来であれば助けに行きたくもなかった。スクライドの誰が死のうと関係のない事だったから。


「そう……。なら感謝はしないよ。助けてくれて当り前だしね」

「お前の口から感謝の言葉を聞くくらいならミゼリンの説教を聞いてた方が何倍もマシだ」


 ゼクトは樹楊の背に額を預ける。

「もし、私がまた死にそうになったら助けにくるの?」


 樹楊の背に預けた額に、微かだが鼓動が伝わってくる。じんわりと暖かくなっていき、ゼクトは目を伏せた。


 独自の改造をされたバイクは、独特な乾いた音を立てながら疾駆する。普通のバイクよりもうるさいが、それは機械の音でなはく、生き物の声のように聞こえた。主人と同じで、やる気のない声。少なくとも、ゼクトにはそう聞こえている。


 樹楊は「そうだな」と呟き、間を取る。


 前方にはスクライドの増援部隊に保護されたアギの部隊が居た。

 その中から、歓声が涌き出す。弱虫ネルトが一番声を張っていて、その眼から涙を流していた。


「まぁ、あと一回くらいは助けてやる」


 樹楊は笑みを溢しながら、仕方なくといった感じで吐き捨てた。

 弱いくせに、大口を叩く奴だ。


「いらないよ、アンタの助けなんかっ」

「ってぇな。頭突きすんなっ」


 憎たらしい背中に頭突きを喰らわせたゼクトの顔は僅かに綻んでいる。樹楊がぶつぶつ文句を言っているが、聞く気になどなれやしない。


 アギ達の元に辿り着いたゼクトは、飴を口に放って空を仰いだ。

 そよ風がほほに当たり、冷たく広がっていくが、悪い気分ではなかった。

 内ポケットに入っている惨美香を取り出し、遠くへ放る。ガラスが砕け散った音に、何人かは反応するがゼクトは知らぬ顔でバイクから降りる。


「お前、肩怪我してんだろ? 衛生兵も居るから手当てしてもらえよ」


 ゼクトは気遣う樹楊を一睨みし、鬱陶しそうに目を伏せた。


「男に肌を触られるのは嫌なの」

「は? でもお前、俺に――」


 樹楊はゼクトの悪戯な笑みを見ると言葉を押さえた。ゼクトは肩を押さえながらニヤニヤし、樹楊の赤面する顔を覗き込む。ゼクトに胸を押し当てられる樹楊は罰が悪そうに視線をそらした。


「おにいさん。やっぱり私の身体、気になってるんじゃないの?」


 樹楊は何も答えてくれず、恥ずかしそうに身体を押してきた。

 この時、か弱い女の子みたいにへにゃっと崩れ落ちて、涙を浮かべた上目使いでもしてやろうとも思った。でも、それは今度、別の機会にでも取っておく事にする。


「おにいさんってば、本当にヘタレね」

「ほっとけ」


 蓮がこの男に熱を上げる理由はまだ解らないし、自分が好きになれる男でもない。

 だが、からかい甲斐がある奴だと、ゼクトは思った。




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