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長生き

作者: 加東春

ある日、若者は夢を見た。

夢の中で若者の目の前に老人が現れた。神様か仙人かはわからないが、荘厳な姿をしていた。

老人は神々しく若者に話しかけた。

「若者よ、お前のの人生はこれからも長く続く。お前はどのような人生を望むだろうか。話してみるがよい。」

若者は謹んで答えた。

「私は何か大義を成し遂げようとするような人間ではありません。強いて望むならば長く生きたいのです。」

「殊勝な心がけだ。」

老人は若者の謙虚な姿勢に感心した。若者は話を続けた。

「私の生きている時代は決して生きやすい時代とはいえません。物騒な犯罪や事故は絶えないし、自然災害も年々被害を大きくしています。それだけではなく、長時間労働や人間関係のトラブルで寿命の前に自ら命を絶つ人もいるのです。私が望むのは寿命まで生きること、それに尽きます。」

老人は若者の望みを快く受け入れた。

「承知したぞ若者よ。我の力で必ずやお前が寿命まで生を全うできるよう取り計ろう。」

老人が若者にそう告げるや否や、若者は夢から覚めた。しかし、夢の中の老人は確かに望みを聞き入れてくれるだろう。そんな根拠のない確信があった。


若者の望みは叶った。若者が身を置いたところは、犯罪も事故も自然災害も到底起こりえない場所だった。

そこでは栄養を考慮した食事も出されるし、生活も規則正しく健康的で、命に関わる病気は起こらなかった。仕事も残業などはなく、人間関係のトラブルも起きなかった。老人の計らいにより若者は寿命まで長く長く生きることができたのだった。刑務所という場所で。


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