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序奏 変わらぬ日々と変わるキッカケ 3


「それで今に至るって事か?なんだよこれ今流行りの異世界転生ってやつか?こんなの現実にあんのかよ…」


これまでの事を思い返して、先程見つけた洞窟の入り口で一人呟くと深いため息をつきながらこれからどうするかと考え直した。


「よくあるのはステータス確認だけど、そういうのを頭で思っても出てくるわけじゃない。かといって凄い特殊能力がついたわけでもなさそうだし。」


俺自身ネットで小説などを読むのは好きだし、生徒とのコミュニケーションを取る一環で色々聞いてはいたが、急に訳もわからん森に投げ出され、周りに人影もなく、女神様のお告げみたいな物も無いんじゃこれからどうしたらいいのかもわからない八方塞がりな状況で打つ手がない。


「まずは人、出来れば山賊とか野蛮や奴等じゃなくて話が通じる様な奴に会わねえとな」


と思ってすぐに行動に出ようと洞窟を出ようと立ち上がると、目の前には大柄な男達が何人も立っていた。

腰にはそれぞれ剣や斧を下げており革製の鎧をつけ片手に松明を持っていて何人かは袋を背負っており獣の臭いがした。

そして先頭に立っていた一際大柄な男がこちらに近寄り話しかけてきた。


「お前、なんだ?見たところ現地の奴っぽくはないがボロボロだがその服は高価そうな生地だし上流階級の人間か?」


よかった、どうやらこの世界では日本語が通じる様だ。 なんて思っていると後ろの奴らは袋を投げ捨て腰に下げた武器を抜きこちらへ向けていた。


「グランの兄貴、こいつ怪しすぎますぜ。上流階級そうな服の癖に周りに付き人すらいねぇ!もしかしたら俺らを誘い出す餌かもしれないっす!さっさとやっちまった方がいいんじゃないっすか!」


「いや、餌だとして放置するんなら俺らの穴倉に置いておいてどーすんだよ。こいつは多分、『異界の民』って奴じゃないか?小さい頃何度も母ちゃんに話しされてた特徴にも似てらぁ」


と子分らしき奴らがヒソヒソと話していると、最初に話しかけてきた男は大きく足音を立てながら近寄ってきて。

「今からお前を奴隷商に引き渡す。上流階級だろうが『異界の民』だろうが高値で売れるなら何でもいい。ただ、お前の運が無かったって事だ」


そう言って俺の顔を松明で照らしながらその男は俺の事を肩で担ぎ上げて森の中に進んでいった。



しばらく森の中を歩き続けていると空は薄暗くなっており暗い森の中で大男が急に立ち止まると大木の影に隠れて担いでいた俺を下ろした。


「奴隷商の奴まだ来てねえのか、仕方ねえとりあえずここで待つか。お前も座れ、逃げようとしたらわかってるな?」


相手から向けられた言葉と剣に怯えながら俺は近くの切り株に腰をかけた。相棒のケースは子分が抱えて持っており俺の手に渡してくれない所を見ると武器だと思われている様だ。


「しかし災難だなお前も、そんな生傷だらけで森に捨てられてあれよあれよと言う間に山賊に捕まって奴隷一直線でよ。」

「ど、同情するんなら奴隷に売らないで街に送って欲しいんだけど…」

「それとこれとは話が別だ、俺らだって生きる為の金がいる。この森じゃ作物は育たず、木も材木にすら使えない様な森だ。それに子分の奴らも養っていかなきゃならねぇ、諦めてくれ」


割と重そうな事情を聞かされたが奴隷にはなりたくない。何とか助けを呼べないかと思っていると子分の一人がケースを抱えて近寄ってきた。

どうやら開けて中を確認したいが鍵が開けられないらしく開けさせようと思ったそうだ。

流石にナイフを突きつけられて抵抗するわけにもいかないので開けると普段通りのサックスを取り出して見せた。


「お前それはなんだ?そんな曲がった金属で何が出来るんだ?」


先程、グランの兄貴と呼ばれていた奴も興味があるらしく、剣を向けられたまま問いかけてきた所で、馬の嘶く声が聞こえた。


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